平成23年度、2011年の政府予算案が閣議決定された。民主党政権になって初の本格的な予算案なのだが、色々なところで批判が出ている。大きく集約すると、支持されておらず効果が限定的な民主党のマニフェストのためのバラ撒き的な歳出と、財政再建とが矛盾していて、体を成していないことにある。
【財務省】
平成23年度予算政府案
http://www.mof.go.jp/seifuan23/yosan.htm
【財務省】
平成23年度財政投融資計画
http://www.mof.go.jp/seifuan23/zaitou.htm
まず予算の大枠を見ると、経緯の回復より、2010年度当初予算の税収37.4兆円から40.9兆円へと3.5兆円の歳入増を見込む一方で、埋蔵金と呼ばれる将来の積立金も含まれた例外措置であるその他税収という良くわからないポケットからの歳入が2010年度の10.6兆円から7.2兆円へと3.4兆円減る。これによって、税収増がほぼ打ち消される。さらに、公債金は中期財政フレームに明言された「平成22年度予算の水準(約44兆円)を上回らないものとするよう、全力をあげる」という公約の下、2010年度の44.3兆円とほぼ同等(細かく見ると50億円減額)の44.3兆円となった。これによって、予算の歳入規模が横ばいに固定された。
対して、歳出は約1.4兆円の自然増が避けられない社会保障関係費や、債務償還費用の増大などによって国債費が9千億増加しており、これに子ども手当てや農業個別所得保障など、マニフェスト達成のための歳出が並ぶ。これによってしわ寄せが来たのが、公共事業関係費などであり、また、当初からいきなり予備費を減額するなど、あの手この手を使った予算案となっている。
億円 2010年度 2011年度
当初予算 補正後 当初予算
税収 373,960 396,430 409,270
その他収入 106,002 127,824 71,866
公債金 443,030 443,030 442,980
歳入合計 922,992 967,284 924,116
公債依存度 48.0 45.8 47.9
国債費 206,491 202,360 215,491
うち利払費 98,087 99,588
地方交付税交付金等 174,777 187,903 167,845
一般歳出 528,224 566,839 529,180
うち社会保障関係費 272,686 286,452 287,079
予備費 3,500 3,000 3,500
決算調整繰戻 10,000 7,182 8,100
歳出合計 922,992 967,284 924,116
今回の菅政権の目玉は「元気な日本復活特別枠」の2.1兆円の設定であるが、この予算の組替えについては
①経済予備費の枠による調整等▲0.2兆円、②要求後の歳出削減等(事業仕分けの反映等)▲1.0兆円、③要求時点での歳出削減▲2.5兆円の合計3.7兆円の組替えに対し、(1)マニフェスト施策財源見合い検討事項(子ども手当て・求職者支援制度)+0.2兆円強、(2)その他(国民生活の安定・安全・人材育成・新しい公共)+1.2兆円、(3)新成長戦略・マニフェスト施策+0.9兆円、(4)社会保障の自然増等+1.3兆円となっている。
2010年冬に行われた事業仕分けが結局②の1兆円の削減のうちの3千億円しか反映されていない。それ以外の歳出削減で、例えば③などで2.5兆円の削減が記述されているなど、それではなぜ事業仕分けをあれだけ公衆の面前で大々的にやったのかが理解できない。もともと、民主党政権は、政権交代によって予算の無駄があちらこちらに隠れていて、それを組替えれば消費税の増税も必要ないし、マニフェストに必要な予算も出てくると言っていたのではないのか。それが、旧来通りの頭ごなしの削減で予算をひねり出し、さらにはその他税収という正当でない予算にたよりまくっているという体たらくであり、約束破りも良いところだ。2010年度も2011年度も、外為特会からの繰入金は2.85兆円、2.93兆円と、本来は円高による評価減がでている中で、税外収入に組み込んでいる。財投積立金の取り崩しも同じだ。
中期財政フレームについて確認しておくと、
①国債発行額の抑制
・平成23 年度の新規国債発行額について、平成22 年度予算の水準(約44 兆円)を上回らないものとするよう、全力をあげる。
・それ以降の新規国債発行額についても、着実に縮減させることを目指し、抑制に全力をあげる。
②歳入面での取組
・個人所得課税、法人課税、消費課税、資産課税等にわたる税制の抜本的な改革を行うため、早急に具体的内容を決定することとする。財政健全化目標の達成に向けて、必要な歳入を確保していく。
③歳出面での取組(平成23~25年度)
・平成23 年度から平成25年度において、「基礎的財政収支対象経費」(国の一般会計歳出のうち国債費等を除いたもの)について、少なくとも前年度当初予算の同経費の規模(歳出の大枠)を実質的に上回らないこととし、できる限り抑制に努めることとする。
・地方の一般財源の総額については、上記期間中実質的に22年度と同水準を確保する。
・歳出増につながる施策を新たに実施又は拡充しようとする場合には、当年度当初予算の「基礎的財政収支対象経費」の規模が上記の「歳出の大枠」の範囲内となるよう、恒久的な更なる歳出削減により、これに要する財源を賄うこととする。
とあるが、新規国債発行額の着実な縮減など、この状況ではまずありえない。景気回復による税収増は、社会保障や利払費、民主党マニフェストに消えてしまう。②の歳入面の取り組みで、国民に増税を強いることができるかどうかという状況にまでやってきているのは否めない。
日本の債務残高
《ニュース備忘録》
【ロイター】
税制抜本改革、年明けに2─3年展望した方向性示したい=菅首相
2010年 12月 24日 22:50 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18783220101224
【ロイター】
ロシア中銀が政策金利を7.75%に据え置き、翌日物預金金利は2.75%に引き上げ
2010年 12月 24日 21:55 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-18783020101224
【ロイター】
金融庁、発表後に空売りした上での新株の取得を禁止
2010年 12月 24日 19:19 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18781220101224
【ロイター】
国債発行44兆2980億円で「国際公約」は順守=11年度予算案
2010年 12月 24日 19:13 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18781020101224
【ロイター】
政府が為替介入枠を5兆円拡大、為券発行限度額を150兆円に
2010年 12月 24日 18:59 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18778920101224
【ロイター】
北京市、渋滞対策で2011年の新車登録枠を制限へ
2010年 12月 24日 11:30 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18769620101224
【ロイター】
中国のレアアース輸出制限でWTO提訴も辞さず=米通商代表部
2010年 12月 24日 08:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18766220101223
【ロイター】
ハンガリーの長期格付けを「BBBマイナス」へ引き下げ=フィッチ
2010年 12月 24日 07:01 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18764120101223
【ロイター】
ポルトガルの長期格付けを1段階引き下げ=フィッチ
2010年 12月 24日 06:20 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18763120101223
【ロイター】
アイルランド政府、アライド・アイリッシュ銀に37億ユーロ注入へ
2010年 12月 24日 05:23 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-18762520101223
【ロイター】
ハンガリー議会、2011年予算案を承認
2010年 12月 24日 01:57 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-18760820101223
0 件のコメント:
コメントを投稿