2010年11月29日月曜日

(11月24日-2)アイルランド4ヵ年計画

アイルランド政府が財政4ヵ年計画を発表した。EU、IMFなどに対して金融支援を求め、その財政再建計画とも言えるものだ。中身は140ページに及ぶ分厚い冊子に書かれており、全てに目を通すことは難しい。が、説明には3分の2を歳出削減、3分の1を増税によりまかなうとの指針が示されている。そもそも、アイルランドは南欧のような放漫財政が原因ではなく、銀行部門の過剰融資が政府負担に跳ね返り、その銀行救済が財政赤字を急激に膨らませた原因と見なされてきた。

【アイルランド政府】
Published on Wednesday 24th November 2010
“Blueprint for return to sustainable growth”
http://www.merrionstreet.ie/index.php/2010/11/blueprint-for-return-to-sustainable-growth/?cat=3

送信者 備忘録とかそういうの
The need for the plan is abundantly clear. The Irish Government will spend €18.5 billion more this year than it will receive in taxes and that gap must be closed. It is unsustainable that Ireland would continue to borrow €2 for every €5 that it spends.(計画が必要なのは非常に明確だ。アイルランド政府は今年185億ユーロ以上、歳出が歳入を上回っており、その差は縮めなければならない。アイルランドが5ユーロ消費する際に2ユーロが借入でまかなわれている状況は支えきれない。)

Implementation of the plan will reduce Ireland’s deficit to 3% of Gross Domestic Product by the end of the year 2014. The achievement of that goal is critical for the proper functioning of the economy in the Euro system.(この計画を実行すればアイルランドの財政赤字対GDP比を2014年までに3%に抑えることができる。この目標を達成することは、ユーロシステムの経済において適切な機能を保つために決定的である。)

The Government has already made clear that an “adjustment” of €15 billion will have to be made over the next four years. The plan confirms that €10 billion will be saved by way of cuts in spending and €5 billion by way of tax increases.(政府は既に今後4年間に15億ユーロの"修正"を行わなければならないということを明確にしている。その計画は10億ユーロが歳出削減によって満たされ、5億ユーロが増税となる。)

このアイルランドの財政4ヵ年計画を見ると、歳入歳出から最終的に計算された国庫バランスと政府の財政収支とに大きな乖離があり、イマイチ良くわからない。(2010年のアンダーライイング政府バランスは‐185億ユーロ、対GDP比-11.7%とあるので、単発の金融支援を除くとこの金額が政府の財政赤字を考える上でのスタートラインになっているのだろう。)そして、多くのマスコミが批判していたのが、2011年以降の経済成長シナリ

オである。このような楽観的なシナリオを前提に財政再建が進むかと言えば、疑問は大きい。

アイルランドの財政4ヵ年計画
10億ユーロ   2010   2011   2012  2013   2014
 総歳出     61.2   59.7   59.7   59.4   59.1
 歳出受取   13.8   12.7   13.0   13.4   13.9
純歳出      47.4   47.0   46.7   46.0   45.2
 税収       31.5   33.4   36.3   39.2   42.2
 その他収入   2.7   2.0   1.1   0.9    0.9
純歳入      34.2   35.4   37.5   40.1   43.1
財政収支    -13.2  -11.6   -9.2   -5.9   -2.1
 純投資支出   7.1   8.8   8.6   9.0   8.5
 投資収入    1.6   2.0   1.6   1.8   2.1
投資収支     -5.5   -6.9  -7.0   -7.2   -6.5
国庫バランス  -18.8   -18.4  -16.2  -13.1  -8.5
政府財政収支 -49.9   -14.7  -11.7  -9.6   -5.0
 対GDP比   -31.7   -9.1  -7.0   -5.5   -2.8

経済見通し
実質GDP 前年比  0.3    1.8   3.3   3.0    2.8
名目GDP 前年比 -1.5    2.5   4.3   4.3    4.5
10億ユーロ    157.3  161.2  168.1  175.4  183.5
失業率 %     13.5   13.3  12.0  11.0   9.8

これに先立ち、アイルランド政府は「財政4ヵ年計画の策定」「12月7日に来年度予算の提示」「予算成立」「EUやIMFとの金融支援交渉」があるため、現在政権に止まっているのであり、来年早々にも総選挙を行うと宣言している。財政危機に見舞われた国は往々にして政権が弱体化し、政治経済が不安定になる。来年もこの問題は引き続き注意が必要だ。

【Irish Government】
Published on Monday 22nd November 2010
Election in New Year when the budget is implemented
http://www.merrionstreet.ie/index.php/2010/11/election-in-new-year-when-the-budget-is-implemented/?cat=3


【産経新聞】
アイルランド救済、首相が来年1月の解散・総選挙表明
2010.11.23 21:25
http://sankei.jp.msn.com/world/europe/101123/erp1011232126008-n1.htm

【ロンドン=木村正人】欧州連合(EU)などに支援を要請したアイルランドのカウエン首相は22日、   来年1月に救済条件となる緊縮予算案を成立させた後、解散・総選挙を実施すると表明した。しかし、下院の与野党の差はわずか3議席で、予算案が成立するかどうかは微妙な情勢だ。信用不安の伝染を恐れるEUは「欧州金融安定化基金」の常設化を急ぐ方針だ。首相は24日に今後4年間の財政赤字削減策を発表するが、英国に支配された歴史を持つアイルランドではEUや国際通貨基金(IMF)の監督を受けることへの反発は強く、政府の決定に抗議する活動家と警官隊の衝突騒ぎまで起きた。

 同国は2008年に国防上の中立政策や中絶問題をめぐる主権制限を恐れ、EUの新基本条約、リスボン条約の批准を国民投票でいったんは否決したことがある。25日に行われる下院補選で与野党の差が1議席に縮まる可能性があり、予算案成立は微妙な情勢だ。

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