2010年11月4日木曜日

(10月23日)通貨戦争中のG20財務相中央銀行総裁会議

G20財務相中央銀行総裁会議が10月22~23日の日程で韓国の慶州で開かれた。ブラジルのマンテガ財務相が「我々は通貨戦争の真っただ中にいる」と形容した為替市場におけるドル安と新興国、円、資源国の通貨高の軋轢の中、為替市場についての議論に焦点があたったと考えられる。

このG20の前段として、10月8~9日にワシントンで開かれたIMFと世銀の年次総会に合わせ、8日のG7財務大臣・中央銀行総裁会議において、日本が自国の経済状況と為替介入についての説明を試みたが、賛成を得ることができなかった。この時野田財務大臣は、「通貨安競争を互いにやるということは世界経済にとってマイナスというのが歴史の教訓」としたものの、「為替の過度な変動と無秩序な動きは経済・金融の安定に悪影響を及ぼす」とし「看過できないときは断固たる措置を取ると」と強調したようだ。実情は、この時以来、日本の為替介入がやりずらくなる雰囲気がかもし出されている。ただし、ブラジルや韓国、中国は、引き続き為替相場に対して通貨当局が関与し続けている。後日談であるが、この時、経常収支に対する数値目標を検討することが英国から提案されたようだ。

【読売新聞】
G20焦点の経常収支目標、2週間前に英が提案
2010年10月27日07時13分 読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20101026-OYT1T01173.htm
野田氏によると、8日にワシントンで開かれたG7で、英国のオズボーン財務相が「何かの目標を設けて議論した方が良い」と提案した。各国は持ち帰って具体策を検討することになり、米国のガイトナー財務長官がG20開幕前日の21日に、対GDP比率を用いる案を各国に書簡で提示した。経常収支の赤字または黒字を2015年までに国内総生産(GDP)の4%以内に抑えるという具体的な内容は、G20議長国の韓国が会議当日、米韓の共同提案として初めて示したという。

そして、10月23日のG20では、議長国の韓国と米国が世界の不均衡是正に向け、経常収支をGDPの4%以内に抑えるとの数値目標の導入が提案されたようだ。しかし、ユーロ安によって貿易収支が拡大しているドイツや、一切の数値目標を拒絶する中国の動きによって、合意文書からきれいに切り落とされた。

そして、発表された議長声明のポイントを抜き出すと以下の通り。

【財務省】
20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)
[2010年10月23日 於:韓国・慶州]
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/g20_221023.htm

「物価の安定を達成し、それによって回復に貢献する適切な金融政策を継続する。」

「根底にある経済のファンダメンタルズを反映し、より市場で決定される為替レートシステムに移行し、通貨の競争的な切り下げを回避する。準備通貨を持つ国々を含む先進国は、為替レートの過度の変動や無秩序な動きを監視する。これらの行動は、いくつかの新興国が直面している資本移動の過度な変動のリスクを軽減させる助けとなろう。」

「対外的な持続可能性を促進するための多角的協調を強化し、過度の不均衡を削減し経常収支を持続可能な水準で維持するのに資する、あらゆる政策を追求する。今後合意される参考となるガイドラインに照らして評価される、継続した大規模な不均衡は、大規模な一次産品生産者を含む、各国・地域の状況を考慮する必要性を認識しつつ、相互評価プロセス(MAP)の一部として、その性質や調整の障害となっている原因を評価されうる。これらのコミットメントの達成に向けた我々の努力を支援するため、我々は、対外的な持続可能性に向けた進捗と、財政、金融、金融セクター、構造、為替レート、その他の政策の整合性について、MAPの一部として、評価を提供するようIMFに求める。」

この中でも目立つように、金融政策に対する期待が引き続き高いことがうかがわれる。更に、これも想定どおりだが、「より市場で決定される為替レートシステム」ということで、人民元などを想定しつつ、自由な為替相場を求めるとの文言も盛り込まれた。また、「準備通貨を持つ国々を含む先進国」ということで米国を意識しつつ、「為替レートの過度の変動や無秩序な動きを監視する」として、過度のドル安に対する対処を暗に求めていることも透けて見える。他方、経常収支の数値目標の問題については、「今後合意される参考となるガイドライン」として、引き続き議論の課題になっていることが表明された。

今回のG20は、予想通り答えのまとまらない会議になった(以前、フランスのサルコジ大統領がG7から議論の中心をG20移そうと切り出し、その流れができたときから、主張の強い新興国はかえってまとまりを無くすということは予見できていたのだが)。今回の発表は世界的な資本フローと、それに巻き込まれている国際政治の流れの中の一端というポジションであろう。

【ロイター】
WTO、米国の追加関税適用めぐり中国の主張の大半退ける
2010年 10月 23日 08:26 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-17801120101022

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