2010年11月8日月曜日

(11月2日-3)オバマの中間選挙大敗北

米国で中間選挙が実施された。オバマ大統領就任後約2年が経過しようとするなかで、オバマ大統領に対する政治運営について、国民の中間審判が下る日であった。オバマ大統領は就任直後にリーマンショックを象徴とする金融危機の事後処理に明け暮れ、景気対策を連発し、就任2年目にしてようやくその目標であった医療保険改革法案を成立させると言う、米国の歴史に大きな足跡を残す成果を達成した。しかし、国民皆保険を目指す同法案は将来の莫大な支出を伴うものであり、景気悪化が進む中で財政赤字の拡大が更に加速する要因にもなっている。財政赤字の拡大は、アフガニスタンやイラク戦争にまい進したブッシュ大統領が残した将来負担の拘束による部分も少なくないが、国民はそんなことは知ったことではない。

オバマ大統領になってからも様々な経済対策が大きな費用を投じて実施されてきたが、金融危機によって失われた雇用は殆ど回復していない。グリーン・ニューディールなどの選択投資分野への資金投入も、資本集約型の産業であるり、労働集約型の産業で無いがために、雇用の大きな増加は殆ど見込めない。

医療保険改革法案と金融規制改革法案の2大成果を引っさげて選挙戦に突入したものの、保守層からの小さな政府を望む声に押され、オバマ大統領率いる民主党は大敗北を喫した。

【Politico 2010】
http://www.politico.com/2010/
上院全議席100、過半数議席51。下院全議席435、過半数議席218。
         選挙前議席    選挙後議席
民主党 上院   59議席  ⇒   53議席  (-6議席)
      下院   256議席  ⇒  196議席  (-60議席)
共和党 上院   41議席  ⇒   47議席  (+6議席)
      下院   179議席  ⇒  239議席  (+60議席)

今回、オバマ大統領を苦しめた選挙民の離反は、保守派の集まりである「Tea Party」が大きな鍵を握っていたと言える。ティーパーティ(Tax Enough Alreadyの頭文字をモジった)の先頭で保守旋風を巻き起こしたのが、前回の大統領選挙で副大統領候補となったサラ・ペイリンである。ペイリン女史は保守層の象徴となっており、2012年の大統領選挙に立候補するのではと言う見方もある。

サラ・ペイリン
【News Week】
ティーパーティーの正体
2010年10月13日(水)12時06分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/2010/10/post-1696.php

【毎日新聞】
米中間選挙:茶会候補、各州で勝利 「小さな政府論」で勢い
2010年11月4日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20101104ddm007030139000c.html

選挙結果は、上院では民主党が過半数を維持したが、全議席改選となる下院では共和党が大きく躍進し、ねじれ国会が生じることとなった。この選挙結果を受けて、オバマ大統領が共和党との協調を模索するのか、それとも左旋回を強め、強硬路線に進むのか、非常に注目される。政治エネルギーとは敵対的な対立軸を作り、摩擦熱を上げることで求心力となる浮力を得ることができる。その対象が中国なのか、ウォール街なのか、テロなのかは良くわからないが、今後2年間のオバマ大統領の政治姿勢を決定付けるものである。

【ウォールストリート・ジャーナル】
難航必至の政権運営―オバマvsねじれ議会
2010年 11月 3日  17:50 JST
http://jp.wsj.com/US/Politics/node_143617/?tid=election
「2日の投票は、2008年にオバマ当選を支えた浮動票が一気に反対票に回ったことを示すものとなった。再選を目指すオバマ大統領は、共和党との妥協を図るか、逆に、左旋回で、支持を失ったリベラル派の信頼を取り戻す必要がある。このところの大統領は、双方の機嫌を取ろうとしていた感があるが、今後は明確な方向性を示さなければならない。

実際、民主、共和両党が譲歩できる余地は残っている。財政支出の削減、ブッシュ政権の減税延長、インフラ投資、国際貿易などの分野がその例だ。オバマ大統領は今回の選挙戦で、企業が雇用を再開できる環境を整える必要性を繰り返し訴えたが、この点についても、両党間に温度差はない。 民主党内部では、多くの政策ストラテジストが大統領に協調路線を求めている。だが、リベラル派は共和党との妥協に慎重で、共和党がオバマ政権の医療保険改革や金融規制強化を骨抜きにしようとする事態を警戒している。」

オバマ大統領は、中間選挙の敗戦の弁を述べ、経済問題が敗北の一番の原因であることを挙げた。一方で、今後の議会運営をどうするかということについて、共和党との合意を模索している初期段階と言える。


President Barack Obama holds a news conference in the East Room of the White House, November 3, 2010. (Official White House Photo by Pete Souza)

【White House Blog】
President Obama’s Press Conference: "Let's Find Those Areas Where We Can Agree"
Posted by Jesse Lee on November 03, 2010 at 05:12 PM EST
http://www.whitehouse.gov/blog/2010/11/03/president-obama-s-press-conference-lets-find-those-areas-where-we-can-agree


【朝日新聞】
オバマ大統領「責任は私にある」 米中間選挙大敗で
2010年11月4日11時10分
http://www.asahi.com/international/update/1104/TKY201011040082.html

今回中間選挙で当選した議員は、来年の議会からの登院となり、残りのクリスマスまでは落選議員を含む選挙前の議会勢力での会議が続き、いわゆる「レームダックセッション」となる。

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