10月28日は日本銀行の金融政策が発表される定例日であった。この中では、先日発表された5兆円の資産買入基金の詳細が発表されている。これに、従来から発表されている固定金利方式の共通担保資金供給オペレーションの30兆円の合計35兆円の基金をバランスシートに計上する。ここでも、趣旨として、この金融緩和を推進するために、「長めの市場金利の低下」と、「各種リスクプレミアムの縮小」を促すということを明示しており、金利低下と株高を意図していることが示されている。
2010年10月28日
日本銀行
当面の金融政策運営について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101028.pdf
国庫短期証券 2.0兆円
長期国債 1.5兆円
CP等 0.5兆円
社債等 0.5兆円
ETF(指数連動型上場投資信託) 0.45兆円
J-REIT(不動産投資信託) 0.05兆円
1.趣旨
短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するため、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促すこととし、臨時措置として、多様な資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うための基金をバランスシート上に創設する。
買入対象資産については、
1.買入対象
(1)コマーシャル・ペーパー(CP)はa-2格相当以上、資産担保コマーシャル・ペーパー(ABCP)および不動産投資法人コマーシャル・ペーパーはa-1格相当のもので、既発行かつ信用力その他に問題のないもの。
(2)社債はBBB格相当以上、不動産投資法人債はAA格相当以上のもので、既発行、残存期間1年~2年かつ信用力その他に問題のないもの。
との記述がある。CPについてはあまり興味はないし、社債についてはほぼ機関投資家の市場となっているため、あまり関係ない。今回特に注目されたのは、金融政策の日程の変更であり、FOMCの結果が発表される11月3日(日本時間11月4日早朝)を意識していることは明らかである。
3.次回金融政策決定会合の開催予定日の変更
次回金融政策決定会合の開催予定日については、指数連動型上場投資信託(ETF)および不動産投資信託(J-REIT)の買入れを早期に開始できるよう基本要領の審議・決定等を行うため、11 月15 日および16 日から、11 月4日および5日に変更することとした。
記者会見における質問でも「、別途、円高に関連して、以前8 月10 日にはFOMC等が円高の材料になったような経緯もある中、今回、そうした内外のイベントのスケジュールも念頭に入ってのことでしょうか。」と問われている。白川総裁は「ご質問について、結論から申し上げれば、そうしたスケジュールを意識したということではありません。ETF、J-REITの買入れにあたっては、そのための基本要領を金融政策決定会合で決定する必要がありますが、当初予定されていた決定会合ではなく、より早めることによって、これを少しでも早く実現したいということです。いずれにせよ、この目的はもっぱらETF、J-REITの買入れをできるだけ早く実現したいということです。」と回答しているが、勘繰るのを止めろとは言えないだろう。
更にポイントなのは、10月時点の経済物価見通しである。消費者物価の修正幅は限定的であったが、実質GDPと国内企業物価は軒並み下方修正となった。前回の金融政策発表において、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続すると表明し、その物価安定の理解について大勢は1%程度が中心であるが、今回の経済・物価情勢の展望をみると、2012年度にいたっても、消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比+0.2~+0.8%、中央値が+0.6%と、物価が1%に近づくには相当な時間がかかることが示唆される。ゼロ金利の長期化は、言わずもがなであるが、まだまだ続く。
見通し 実質GDP 国内企業物価指数 消費者物価指数(除く生鮮食品)
今回10月見通し
2010年度 2.0 ~ 2.3 0.7 ~ 0.9 -0.5 ~ -0.3
2011年度 1.5 ~ 1.9 0.4 ~ 0.7 0.0 ~ 0.3
2012年度 2.0 ~ 2.4 0.3 ~ 0.8 0.2 ~ 0.8
前回7月時点の見通し
2010年度 2.5 ~ 2.7 1.2 ~ 1.3 -0.5 ~ -0.2
2011年度 1.8 ~ 2.1 0.5 ~ 0.9 0.0 ~ 0.2
修正幅
2010年度 -0.5 ~ -0.4 -0.5 ~ -0.4 0.0 ~ -0.1
2011年度 -0.3 ~ -0.2 -0.1 ~ -0.2 0.0 ~ 0.1
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