2010年11月13日土曜日

(11月3日-2)米四半期入札スケジュール

11月3日に米国財務省が四半期入札スケジュールを発表した。その背景にあるプライマリー・ディーラー会議では、財政の前提などが議論されており、2011年度の財政赤字は中央値は1兆2140億ドル、市場からの資金調達の予想額が1兆260億ドル~1兆4000億ドルとなっている。2012年度になると、若干その調達額は少なくなると見込んでいるようだ。

【US Treasury】
November 3, 2010
TG-940
Treasury Assistant Secretary for Financial Markets Mary Miller
November 2010 Quarterly Refunding Statement
http://www.ustreas.gov/press/releases/tg940.htm

【US Treasury】
November 3, 2010
TG-941
Report to the Secretary of the Treasury from the Treasury Borrowing Advisory Committee of the Securities Industry and Financial Markets Association
November 2, 2010
http://www.ustreas.gov/press/releases/tg941.htm

          プライマリー    連邦議会    行政管理
          ディーラー    予算事務局     予算局
予想時点    2010年10月    2010年8月    2010年7月
財政赤字見通し
2011年度  1兆2140億ドル   1兆660億ドル   1兆4160億ドル
レンジ   1.075~1.350兆ドル
2012年度   1兆230億ドル    6650億ドル    9110億ドル
レンジ    0.80~1.35兆ドル
2013年度    9060億ドル    5250億ドル    7360億ドル
レンジ    0.60~1.30兆ドル
市場調達額予想レンジ
2011年度  1.026~1.400兆ドル
2012年度  0.80~1.400兆ドル

その結果としての、四半期の資金調達予定額は以下の通り。10-12月期の入札額については、前回8月に発表したときよりも短期債券による資金調達を減らし、残存1年超の利付国債の増加により、当初よりも資金調達が長期化されている。借入の長期化は、資金ファイナンスをする立場からは保守的な行動と言える。昨今の金利低下や、FRBの国債購入などの政策を見越しての行動とも言える。具体的には、10-12月期の利付国債は、8月時点でネット3489億ドルの調達予想であったが、これを300億ドル上回る3789億ドルの調達計画に変更されている。一方、2011年1-3月期は3253億ドルと、10-12月よりも減額され、その分短期証券の発行が増えるようだ。

(10億ドル)               発行額    償還額   ネット調達額

8月4日発表(前回)
2010年10-12月期資金調達額
4週、3・6・12ヶ月もの短期証券  1,204.0    1,172.0     32.0
キャッシュ・マネジメント・ビル    385.0     385.0      0.0
利付国債                491.0     142.1     348.9
純資金調達額                              380.9

11月3日発表(今回)
2010年10-12月期資金調達額
4週、3・6・12ヶ月もの短期証券  1,113.0    1,134.0    -21.0
キャッシュ・マネジメント・ビル    378.0     373.0     5.0
利付国債                521.0     142.1     378.9
純資金調達額                             362.9
2011年1-3月期資金調達額
4週、3・6・12ヶ月もの短期証券  1,337.0    1,237.0    100.0
キャッシュ・マネジメント・ビル    341.0     335.0     6.0
利付国債               520.0     194.7     325.3
純資金調達額                             431.3


この国債発行計画について、総発行額(償還額を考慮しない分)を見ると、10-12月期は前回予想よりも7年以下の中短期の利付国債の発行に厚みが増したようだ。他方、来年1-3月期については物価連動債(TIPS)の発行額がやや多めに増額される見通しとなっている。その背景には、先月10月25日に実施された5年物の物価連動債の入札で、史上初のマイナス利回りとなるなど、物価連動債に対する需要がある程度大きいということが見込まれているためであろう。実質金利がマイナスになるということは、金融が通常以上に緩和されている常態か、景気後退局面(スタグフレーションを含む)が想定されているかどちらかになるのだが、必ずしも『実質成長率(期待成長率、潜在成長率)=実質金利』ではないと言うことを考えると、それだけ市場が金融緩和を織り込んでいると解釈するのが正解なのかもしれない。

総発行額 億ドル
   7-9月期   10-12月期   10-12月期   1-3月期
           前回予想   今回見込み   今回予想
2年  1,080     960       1,050      1,000
3年  1,020     930        960       930
5年  1,080     990       1,050      1,020
7年   840     760        870       840
10年  660     660        660       660
30年  420     420        420       420
TIPS  290     190        200       330
合計 5,390    4,910       5,210      5,200


【米国債市況】30年債上昇、5年物TIPSの落札利回りがマイナスに(10月25日)
2010年 10月 26日 8:09 JST
http://jp.wsj.com/Finance-Markets/Foreign-Currency-Markets/node_139481
25日の米国債市場では、財務省が実施した物価連動国債(TIPS)の入札で落札利回りが史上初のマイナスとなり、長期債価格が上昇した。財務省がこの日実施した5年物TIPS100億ドルのリオープン(追加発行)入札では、落札利回りがマイナス0.550%となった。

【Treasury Direct】
For Immediate Release CONTACT: Office of Financing
October 25, 2010
TREASURY AUCTION RESULTS
http://www.treasurydirect.gov/instit/annceresult/press/preanre/2010/R_20101025_3.pdf

Interest Rate      0-1/2%
High Yield1      -0.550%
Median Yield4    -0.635%
Low Yield5      -0.750%

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