2010年6月28日月曜日

(6月24日)豪州ギラード新首相誕生


豪州で政変があった。それまで労働党党首であったケビン・ラッド首相は、2007年11月の総選挙で政権交代を実現した主役であったが、排出権取引制度の導入を議会に諮っていたものの野党が過半数を占める上院で2回も否決され、この議論を3年間延期する方針を4月下旬に明らかにしていた。その結果、指導力に問題があるのではとの見方から支持率にかげりが見え始める。そして、今年の5月2日に資源超過利潤税の導入を発表した。この税制は、新規の資源開発だけでなく、既存の生産に関しても40%の課税を賦課するというものだ。この税制については、資源超過利潤税を徴収した後、更に普通に法人税が課されると言う格好であったため、利益の半分以上を政府が接収することになるという、資源開発会社にとっては非常に厳しい税制である。ラッド首相は、この資源超過利潤税を財政健全化の原資に、また、年金の拡充や法人税減税の財源にしようとしたようだ。税制の詳細は下記金属資源情報センターのレポートが詳しいが、当然ながら資源開発会社は大々的なネガティブキャンペーンを張った。

【ロイター】
ラッド豪首相、排出権取引制度の導入を2013年以降に先送り
2010年 04月 27日 17:40 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-15031220100427

【金属資源情報センター】
成22年 5月 11日 2010年20号
豪州の税制改革(速報)
-連邦政府の方針、及び鉱業分野への潜在的影響-
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/10_20.html

ラッド首相は妥協を図る素振りは見せるものの、根回しの無いまま表に出た資源超過利潤税や、これまで独善的とも見られる(実際は記事に書いてあるのを読んでいるだけなので、本当にそうかどうかは分からないが)政策運営もあり、支持率も低下してきていたことから、労働党内の有力議員がこのままでは選挙に負けてしまうとの危機感を持った。そして、彼らは政党の有力な支持母体である労組の支持も取り付け、国民に人気があるギラード副首相に党首選への出馬を要請し、ギラード副首相はは6月23日夜、選挙の実施をラッド首相に直接要求した。スワン財務大臣も、ギラード副首相側に立った。ラッド首相はカナダのG20に向けて出発しなければならない時間であったが、これをキャンセル。一度は受けて立つ姿勢をみせたが、支持基盤の労働組合や有力政治家がギラード氏支持へと雪崩を打ったため、翌6月24日の議員総会で辞任を表明し、党首選を経ずにギラード氏の新党首就任が決まった。ラッド氏は労働党の緊急連邦議員総会後の記者会見で、「党の勝利に全力を尽くし、善政を進めてきた」と辞任の無念さを涙ながらに語ったそうだ。

【産経新聞】
窮地の豪ラッド政権 初めて支持率逆転 (1/2ページ)
2010.6.10 20:11
http://sankei.jp.msn.com/world/asia/100610/asi1006102013004-n1.htm

【ロイター】
豪政府、資源超過利潤税の一部変更を検討へ
2010年 06月 16日 16:36 JST
http://www.jogmec.go.jp/mric_web/current/10_20.html

【読売新聞】
女性首相選挙の顔に、豪労働党支持急落で危機感
2010年6月25日02時01分
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100625-OYT1T00098.htm?from=nwla

ギラード市は豪州初の首相である。経歴は、以下の毎日新聞の記事を見ると良い。ギラード新首相の政策方針などは、現時点でよく分からないが、今後のギラード新首相の政策運営、特に資源超過利潤税の落としどころをどうするかが注目だ。


ギラード新首相
(http://www.theaustralian.com.au/politics/this-is-utilitarian-old-school-politics/story-e6frgczf-1225884036898)

【毎日新聞】
2010年6月25日 東京朝刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20100625ddm007030170000c.html

キーパーソン:ジュリア・ギラード氏=オーストラリア初の女性首相

 ◇教育、労使改革で実績--ジュリア・ギラード氏(48)

 「オーストラリアの大地と国民のため、全力を尽くすことを心から誓います」。初の女性首相として、就任式で高らかに宣言した。

 61年、英国の貧しい家庭に生まれ、間もなく気管支肺炎を患う。4歳の時に両親、姉と豪州南部アデレードに移住。

 「経済的理由に加え、医者から温暖な地での生活をすすめられたことも理由だったのでは」と回想する。

 メルボルン大学法学部に進学し、学生運動に参加。卒業後は弁護士になった。98年に連邦下院議員に初当選して政界入りを果たし、06年に労働党の副党首に就任した。

 07年の前回総選挙ではラッド氏を支えて政権交代を実現。副首相に加え、教育相、雇用・職場関係相を兼務し、教育や労使制度改革などで実績を上げた。

 政治家としての特徴は歯切れの良い語り口。国会答弁にも定評がある。ユーモアのセンスも持ち、その美しい容姿も相まって、国民の人気は高い。

 読書家で知識人だった父は、娘たちに偉大な政治家たちの演説を繰り返し聞かせた。

 「お気に入りは米国のケネディ元大統領とマーティン・ルーサー・キング牧師。父から知的探究心を学んだ」

 未婚で子供はなく、美容師のパートナーがいる。【ジャカルタ佐藤賢二郎】


《ニュース備忘録》


【ロイター】
ヘッジファンド規制強化、欧州議会とEUの協議が物別れに
2010年 06月 24日 22:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15987320100624

【ロイター】
人民元は続伸、中銀の圧力弱まり変動幅拡大
2010年 06月 24日 22:36 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15987220100624

【ロイター】
仏労組、年金改革などに抗議し24日に全国規模のスト実施
2010年 06月 24日 21:26 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15986620100624

【ロイター】
人民元、年内に対米ドルで約3%上昇も=人民銀金融政策委
2010年 06月 24日 17:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15984620100624

【ロイター】
豪で初の女性首相にギラード氏就任、資源税見直しも
2010年 06月 24日 15:49 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15982520100624

【ロイター】
オバマ米大統領の支持率、就任以来最低の45%に
2010年 06月 24日 13:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15979420100624

【ロイター】
参院選スタート、菅首相は日本財政の危機を訴え
2010年 06月 24日 12:38 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15978320100624

【ロイター】
米FOMCが景気判断引き下げ、長期の低金利維持を再表明
2010年 06月 24日 07:19 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15968520100623

【ロイター】
景気の現状に甘えるべきでない=G20声明草案
2010年 06月 24日 01:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15966420100623

(6月23日)FOMC景気判断を慎重化

米国で金融政策が発表された。全文は以下の通り。特に大きな変更点は無いと思うのだが、この日の後のニュースでは景気見通しがやや慎重になったと言う解説が成されている。確かに、1段落目は一番最後の部分に「although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time(しかしながら、景気回復の速度は当面緩やかなものになる可能性が高い)」というコメントが加えられていたりする。この日の株式市場の下落、リスク回避志向の強まり、ひいてはドル円相場が1ドル=90円台割れになった要因を後ろから後押しする材料になったのであろう。当面、このFRBの景気認識が一歩後退した、それが低金利の長期化が強まるのではと言う連想ゲームが、円高の材料となりうるであろう。

【FRB】
Release Date: June 23, 2010
For immediate release
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20100623a.htm

【ブルームバーグ】
FOMC声明:金融は「主に国外要因」で成長支援弱まる
2010/06/24 03:56 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=ah01RRbnmGrU

Information received since the Federal Open Market Committee met in April suggests that the economic recovery is proceeding and that the labor market is improving gradually. Household spending is increasing but remains constrained by high unemployment, modest income growth, lower housing wealth, and tight credit. Business spending on equipment and software has risen significantly; however, investment in nonresidential structures continues to be weak and employers remain reluctant to add to payrolls. Housing starts remain at a depressed level. Financial conditions have become less supportive of economic growth on balance, largely reflecting developments abroad. Bank lending has continued to contract in recent months. Nonetheless, the Committee anticipates a gradual return to higher levels of resource utilization in a context of price stability, although the pace of economic recovery is likely to be moderate for a time. (4月の前回会合以降に入手した情報から、景気回復は進行中で、労働市場は徐々に改善しつつあることがうかがわれる。家計支出は伸びつつあるが、高い失業と所得の伸び悩み、住宅資産の減少、厳格な信用条件によって依然抑制されている。企業による機器やソフトウエアへの投資は著しく増加した。しかし非住居用建造物への投資は引き続き弱く、雇用主は雇用拡大に依然として消極的だ。住宅着工は依然として抑制された水準にある。金融の状況は総じて経済成長を支える方向性を弱めており、これは主に国外の展開を反映している。銀行融資はこの数カ月、縮小を続けている。経済の回復ペースは当面、緩やかなものになる可能性が高いものの、物価安定という流れの中でより高いレベルでの資源活用へ徐々に復帰すると委員会は予想する。 )

Prices of energy and other commodities have declined somewhat in recent months, and underlying inflation has trended lower. With substantial resource slack continuing to restrain cost pressures and longer-term inflation expectations stable, inflation is likely to be subdued for some time. (エネルギーなどの商品価格はこの数カ月で幾分か下落し、基調的なインフレは下降トレンドにある。著しい資源のたるみ(スラック)が引き続き価格圧力を抑え、長期的なインフレ期待は安定しており、インフレは当面、抑制された状態が続く可能性が高い。 )

The Committee will maintain the target range for the federal funds rate at 0 to 1/4 percent and continues to anticipate that economic conditions, including low rates of resource utilization, subdued inflation trends, and stable inflation expectations, are likely to warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period. (委員会はフェデラルファンド(FF)金利誘導目標を0%から0.25%のレンジで据え置き、低レベルでの資源活用とインフレ抑制トレンド、安定したインフレ期待を含む経済状況が長期にわたって、FF金利の異例な低水準を正当化する可能性が高いと引き続き想定している。 )

The Committee will continue to monitor the economic outlook and financial developments and will employ its policy tools as necessary to promote economic recovery and price stability. (委員会は今後も、経済見通しと金融市場の状況の変化に合わせ、景気回復と物価安定を促進するため必要に応じて政策手段を導入する意向だ。)

Voting for the FOMC monetary policy action were: Ben S. Bernanke, Chairman; William C. Dudley, Vice Chairman; James Bullard; Elizabeth A. Duke; Donald L. Kohn; Sandra Pianalto; Eric S. Rosengren; Daniel K. Tarullo; and Kevin M. Warsh. Voting against the policy action was Thomas M. Hoenig, who believed that continuing to express the expectation of exceptionally low levels of the federal funds rate for an extended period was no longer warranted because it could lead to a build-up of future imbalances and increase risks to longer-run macroeconomic and financial stability, while limiting the Committee’s flexibility to begin raising rates modestly. (このFOMCの金融政策に対し、バーナンキ議長、ダドリー副議長、ブラード総裁、デューク理事、コーンFRB副議長、ピアナルト総裁、ローゼングレン総裁、タルーロ理事、ウォーシュ理事が賛成した。一方、ホーニグ総裁はFF金利誘導目標を異例の低水準に長期にわたって設定する可能性を引き続き示すのは、将来の不均衡を積み上げることにつながり、長期運営に基づくマクロ経済と金融の安定へのリスクを高める恐れがあると同時に、委員会にとっては緩やかな利上げを開始する柔軟性が抑制されるとして、もはや正当化されないと述べ、今回の決定には反対票を投じた。)


《ニュース備忘録》

【ロイター】
中国農業銀の香港IPO、11社に54.5億ドル割当=関係筋
2010年 06月 23日 23:30 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15965720100623

【ロイター】
ギリシャ、債務再編なしに危機乗り切ること可能=財務相
2010年 06月 23日 19:35 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15964620100623

【ロイター】
ホンダの中国工場で操業停止が拡大、ニッパツのストで部品不足
2010年 06月 23日 19:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15964420100623

【ロイター】
露ガスプロム、ベラルーシ向けガス供給の削減幅を60%に引き上げ
2010年 06月 23日 16:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15961620100623

【ロイター】
英政府の財政緊縮策、景気回復に水を差す可能性
2010年 06月 23日 14:17 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15957320100623

【ロイター】
日本の財政運営戦略、格付け支援要因=フィッチ
2010年 06月 23日 13:21 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15956420100623

【ロイター】
英米首脳、G20会合で財政健全化に向け取り組む方針
2010年 06月 23日 12:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15955120100623

【ロイター】
米財務長官とサマーズ氏が、G20の過度の赤字削減に警鐘
2010年 06月 23日 10:54 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15952620100623

【ロイター】
英・仏・独、G20会合を前に銀行課税導入案を発表
2010年 06月 23日 08:09 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15950320100622

【ロイター】
英政府が緊急予算案発表、VAT20%への引き上げなどが柱
2010年 06月 23日 06:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15947320100622

【ロイター】
5月米中古住宅販売、予想外に減少
2010年 06月 23日 03:56 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15947820100622

(6月22日-2)財政運営戦略

6月22日に政府は財政運営戦略を閣議決定した。

【国家戦略室】
財政運営戦略
http://www.npu.go.jp/policy/policy01/index.html#g

この中で、財政健全化目標については以下のような目標を立てている。その中で、「国債発行額の抑制財政健全化目標を確実に達成するとともに、財政健全化への積極的な姿勢を市場に向けて発信し、市場の信認を確保する観点から、平成23 年度の新規国債発行額について、平成22 年度予算の水準(約44 兆円)を上回らないものとするよう、全力をあげる。」と、来年度の予算編成における借金の上限を明記した。ただし、末尾には『・・・とするよう、全力をあげる。』とのなぞの文言が挿入されている。

(1)収支(フロー)目標

残高目標を達成するために、以下のとおり、収支の改善を図ることとする。

① 国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)について、遅くとも2015 年度までにその赤字の対GDP比を2010 年度の水準から半減し、遅くとも2020 年度までに黒字化することを目標とする。

② 国の基礎的財政収支についても、遅くとも2015 年度までにその赤字の対GDP比を2010 年度の水準から半減し、遅くとも2020 年度までに黒字化することを目標とする。

③ 2021 年度以降も下記(2)の残高目標にかかる達成状況を踏まえつつ、財政健全化努力を継続する。

(2)残高(ストック)目標

2021 年度以降において、国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させる。

国と地方のプライマリーバランスの改善時期を2015年までに半減、2020年までに黒字化と明記しているが、このころには総理大臣は変わっているだろう。国と地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させるのが2021年度以降としているが、今から10年後はどうなっているか良くわからない。

閣議決定の対象ではないが、同日に内閣府が発表した「経済財政の中長期試算」では、以下のようなシナリオが描かれている。潜在成長率は2020年に2.3%まで上昇。実質成長率とほぼ一致する。一方で、名目成長率はデフレを脱却したと仮定されることから、2020年は3.6%成長。ちなみに、消費者物価指数は2011年度に前年比±0%になるとの設定である。これは、先週18日に発表された新成長戦略でも2011年に消費者物価指数を2011年度中にはプラストの目標を掲げている。他方、財政再建を進めると言っているわけだから、おのずとデフレ脱却は日銀の金融政策に頼らざるを得ない。

成長戦略シナリオ
         09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 15年度 20年度 23年度
潜在成長率     0.6    0.7    0.8    1.0    1.2    1.7    2.3    2.4
実質成長率    -2.0    2.6    2.0    2.6    2.4    2.1    2.3    2.4
名目成長率    -3.7    1.6    1.7    2.9    3.0    3.4    3.6    3.6
消費者物価    -1.7   -0.4    0.0    1.0    1.4    1.9    1.9    1.8
失業率       5.2    4.8    4.4    4.2    3.9    3.4    3.1    3.0
長期金利      1.3    1.6    1.7    2.2    2.4    3.1    4.6    5.1

基礎的財政収支 -38.5  -30.8 -27.0   -23.9  -19.9  -15.0   -13.7   -11.7
財政収支     -48.6   -42.0 -38.2   -36.0  -33.5  -33.4   -50.0   -62.1
公債残高     782.2   827.1 868.9  908.7  947.0 1,024.7 1,270.7 1,463.8
対GDP比
基礎的財政収支  -8.1   -6.4   -5.5   -4.7   -3.8    -2.7   -2.1   -1.6
財政収支     -10.2   -8.7   -7.8   -7.1   -6.4    -6.0   -7.6   -8.4
公債残高     164.3  171.1 176.7 179.7  181.7  184.3  192.2  199.0

国の一般会計
一般歳出     102.6   92.3   92.9   94.5   97.0   106.2   137.6   160.7
基礎的財政収支対象経費
           83.3   70.9   70.9   70.9   70.9    73.9   84.0    90.7
国債費       19.3   20.6   22.0   23.5   26.0    32.3   53.6    70.0
税収等       49.1   48.0   43.7   47.5   51.1    57.2   67.7    75.3
税収        36.9   37.4   39.6   42.9   46.5    52.5   62.6    69.9
その他収入    12.2   10.6    4.1    4.5    4.6    4.7    5.1    5.4
歳出と税収等との差額
           53.5   44.3   49.2   47.0   45.9   49.0   69.9    85.4

その他、長期金利が2012年度には2.2%となっているが、消費者物価指数が1%のプラスの伸びとなっていることが前提とは言え、なかなかそこまでの金利上昇は難しいのではないかと、今の時点では思ってしまう。基礎的財政収支の赤字も2010年度が30.8兆円、2011年度が27.0兆円、ここに国債費などの利払や債務償還費用を除いた財政収支は2010年度が42.0兆円の赤字、2011年度が38.2兆円の赤字。公債残高は2015年度には1000兆円を超え、2023年度には対GDP比で200%に接近する。
緩やかな氷山衝突前のタイタニック号のようだが、氷山までの距離は度の程度か、経験則が無いので難しい。

(6月22日)英国緊急予算

英国が6月22日に緊急予算を発表した。5月6日に実施された総選挙によって5月11日に保守党政権が誕生し、6月14日に予算見通しを発表。そこから間をおかずに緊急予算の発表となった。その内容は財政健全化に向けた姿勢を鮮明にしている。報道等によれば、付加価値税(VAT)の税率が2011年1月に現行の17.5%から20.0%に引き上げられ、銀行への特別税(現時点では、バランスシートに対して0.07%という報道がある)、キャピタルゲイン税を現行の18%から28%に引き上げることを盛り込んでいる。

一方で、法人税を現在の28%から11年に1%引き下げて27%とし、2014年には24%に引き下げるとしている。また、所得税の課税最低限度を引き上げ、約100万人が課税対象外になるといった減税措置も同時に発表している。

日本では付加価値税の増税と法人税減税が大きく取り上げられており、菅政権の緊縮財政方針を援護射撃するような報道が成されている。

【英国財務省】
2010 Budget
http://www.hm-treasury.gov.uk/2010_june_budget.htm
        08年度  09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度 15年度
10億£     実績   見込み  見通し
歳入       533.8  514.6  548   584    622   662   700    737
歳出       564.7  600.6  637   651    665   679   693    711
減価償却     18.7   19.7    21   22    22    23   24    25
財政収支    -49.7   -105.6  -110  -88    -65   -40   -17    0
純投資額     46.4    49.0   39   27    24    20    21    21
純財政赤字    96.1   154.7  149   116    89    60    37    20
純債務残高   616.9  771.5  932  1,059  1,162  1,235  1,284  1,316
名目GDP   1,434.0 1,408.0 1,474  1,539  1,620  1,710  1,803  1,902
対名目GDP比
歳入        37.2    36.5   37.2   37.9    38.4   38.7   38.8   38.7
歳出        39.4    42.7   43.2   42.3    41.0   39.7   38.4  37.4
減価償却      1.3    1.4    1.4    1.4    1.4    1.3    1.3   1.3
財政収支     -3.5    -7.5   -7.5   -5.7    -4.0   -2.3   -0.9    0.0
純投資額      3.2    3.5    2.6    1.8     1.5    1.2    1.2    1.1
純財政赤字    6.7    11.0   10.1   7.5     5.5    3.5   2.1    1.1
純債務残高   43.0    54.8   63.2   68.8   71.7   72.2   71.2   69.2
安定成長協定ベース
財政赤字     6.8    11.3    10.1   7.6     5.6   3.6    2.2    1.2
債務残高    55.8    71.2    78.9   83.6    85.5   84.9   83.1  80.4
6月14日発表時点
安定成長協定ベース
財政赤字    6.8    11.5    10.5   8.3    6.6    5.1    4.0
債務残高   55.8    71.2    79.0   84.7   87.5   88.4   88.2

安定成長協定ベースの財政赤字は、2010年度は10.1%と、6月14日の見通しの10.5%から0.4%下がるに止まるが、財政赤字は改善が進み、2014年度時点では前回は4.0%の赤字を見込んでいたものを、2.2%の赤字に止まるとの予想に修正している。また、債務残高についても、そのピークは2013年度の88.4%としていたものを、ピークを1年前倒しして2012年度の85.5%としている。

しかし、財政収支の改善が歳出、歳入のどちら側からもたらされるのかと言うことを、先日14日の予算見通しからの比較で見てみると以下の通りとなる。つまり、歳入額の変化よりも歳出額の変化の方が、英国の財政赤字縮小の寄与が大きい。2011年度は財政収支の90億ポンドの改善を見込んでいるが、そのうち歳入増は20億ポンドで、歳出減は70億ポンドとなっている。後年に至るとより歳出削減の効果を大きく見積もっており、2014年度の310億ポンドの財政収支改善は、30億ポンドが歳入増によるもの、残りの280億ポンドが歳出減によるものとなっている。この先の英国財政を見ていく上では、度の程度歳出カットにメスが入るかがポイントと言えよう。

10億£   10年度  11年度  12年度  13年度  14年度
見通し
今回歳入額  548    584    622    662    700
前回歳入額   546    582    620    659    697
歳入修正額    2     2     2     3     3
今回歳出額   637    651    665    679    693
前回歳出額   640    658    678    699    721
歳出修正額    -3     -7    -13    -20    -28
歳出入修正(財政収支改善)
           5     9     15     23     31
改善寄与割合(%)
歳入      40.0    22.2    13.3    13.0    9.7
歳出     60.0    77.8    86.7    87.0   90.3

増税による歳入増を国民に求めることは、政治的にハードルが高い。一方、歳出削減で費用を捻出できると言う見通しを語ることは、場合によっては夢を語ることと同じで、その場をしのぐ方法としては容易な手段である。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
英・仏・独、協調して銀行への課税導入へ=ドイツ財務省
2010年 06月 22日 23:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15945220100622

【ロイター】
中国、鉄鋼製品などの輸出への税金払い戻し制度撤廃へ
2010年 06月 22日 23:45 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15945520100622

【ロイター】
スペイン、今後数カ月の国債入札に問題なし=財務省高官
2010年 06月 22日 23:37 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-15945820100622

【ロイター】
人民元が0.23%下落して終了、前日の上げを半分を失う
2010年 06月 22日 19:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15943020100622

【ロイター】
人民元改革、「管理可能で緩やか」であるべき=中国外務省
2010年 06月 22日 17:08 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15939120100622

【ロイター】
目標達成へ道筋なき財政運営戦略、試金石の11年度予算編成
2010年 06月 22日 11:21 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15931020100622

【ロイター】
スイス中銀、現時点で為替介入の必要ない=副総裁
2010年 06月 22日 07:15 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-15925220100621

【ロイター】
人民元弾力性強化、中国とパートナーの利益=ECB総裁
2010年 06月 22日 04:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15923820100621
「中国当局が公表した決定は、中国自身の国益にもなり、かつ中国のパートナーの国益にもなるため、良い決定だったと考える」「正しい方向性を示している」「物価が安定し、より長期的なインフレ期待がしっかりと抑制されているとの見通しから、理事会は金融政策のスタンスと主要政策金利の水準は適切であるとみなしている」

【ロイター】
人民元弾力性強化、米中関係改善に寄与=米駐中国大使
2010年 06月 22日 02:00 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15922520100621
米国のハンツマン駐中国大使は「米中関係の交渉から、障害が1つ取り除かれた」と述べた。

【ロイター】
一部G20、人民元弾力化の詳細求める構え=加財務相
2010年 06月 22日 01:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15922820100621
カナダのフレアティ財務相は21日、「一部諸国は一段の詳細を希望するだろう。工程表のようなものを望む声も上がるかもしれない」と語った。

(6月21日)スペイン混乱

週明け21日は週末の人民元の柔軟化に市場の耳目が集まった。だけど、それを繰り返して書いても仕方ないので、昨今のスペイン問題についてちょっと振り返ってみる。

スペインについてはPIIGSの呼び声どおり、南欧の財政悪化国の一つとして取り上げられ、その行方に懸念が付きまとっていた。そして、スペインへの注目度が高まったのは、5月22日にスペイン中央銀行が45行ある“カハ”と呼ばれる貯蓄銀行のうちの一つであるカハスールを管理下においたというニュースが報じられてからだと記憶している(日本の場合だからかもしれないが)。同時に、財政の問題も抱えているスペインは、5月27日に公務員給与の5%削減などを盛り込んだ財政緊縮法案を賛成169対反対168のわずか1票差で下院で可決した。特に、地方政党のカタルーニャ同盟の議員10名はスペインがギリシャのような状態に陥ることを望まないとしながらも同法案を批判した上で棄権するなど、非常にきわどい成立であったことが伺える。スペインのサパテロ首相の指導力が揺らいでいることは、今後注意が必要だ。そして、5月28日にFitchがスペインの格下げを発表し、ソブリンと金融機関の信用問題に追い討ちをかけた。

【ロイター】
スペイン下院が財政緊縮法案を僅差で可決、政権不安高まる
2010年 05月 28日 08:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15547820100527

特に、スペインでは硬直的な労働市場が景気循環の中で柔軟な経済の動きを妨げているという批判がこれまでにも強かった。簡単に言うと、正規社員の優遇が大きく、解雇などが難しいと言う事情がある(ようだ)。IMFも5月24日のスペインに対するコンサルテーション・レポートで、スペインは労働市場改革が必要だということをはっきりと記述している。そこで、長年にわたり労働市場改革の必要性が叫ばれ、労使間での交渉が続いていた。本来は、この労働市場改革は政府、労組、企業の3社の合意が5月末に得られるはずであったが、結局は合意に至ることは無かった。結果、スペイン政府は労働市場改革に向けた強硬姿勢を強め始め、対して主要労組が6月8日に大規模ストライキを起こすに至った。

【IMF】
Spain?2010 Article IV Consultation
Concluding Statement of the Mission
Madrid, May 24, 2010
http://www.imf.org/external/np/ms/2010/052410.htm

【ロイター】
労働市場改革、合意に関わらず実施=スペイン経済・財務相
2010年 06月 1日 08:35 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-15599920100531

【朝日新聞】
スペインの主要労組、大規模スト 財政緊縮策に抗議
2010年6月8日22時50分
http://www.asahi.com/international/update/0608/TKY201006080479.html

【ブルームバーグ】
スペイン労使協議が決裂-首相は政令で労働改革を断行へ(Update1)
2010/06/11 09:22 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=a_oSorPzZ9Ds

そして、スペイン政府は6月16日に労働市場改革法案を閣議決定し、22日には法案が可決したようだ。この様な政府の動きに対して、労組は反発を強めており、6月15日には9月29日にゼネストを起こすことを決定した。この様なスペイン国内の動きに対し、オバマ大統領はスペイン政府を支援するためスペインのサパテロ首相と6月21日に電話会談を行い、サパテロ首相を支持する表明を行っている。こういった、労使紛争については政治基盤の弱体化を招く危険性があり、それが結局はスペイン政府の様々な意思決定を阻害することになるため、注意が必要である。

【ブルームバーグ】
スペイン政府、労働関連改革法案を承認-今後議会で審議へ
2010/06/17 09:17 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=ajsjQD8jdnrM
コルバチョ労働・移民相は16日の記者会見で労働関連改革法案について、雇用主が支払う解雇補償金を従来の勤続年数1年当たり45日分ではなく33日分にする雇用契約を認めることで、解雇コストが低減されると説明した。

【ブルームバーグ】
スペイン2大労組:初のゼネストを9月実施へ-労働法改正に抗議
2010/06/16 08:04 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920008&sid=aKcDreKijzi8

【ロイター】
オバマ米大統領、スペイン首相との電話会議で緊縮財政措置に支持示す
2010年 06月 22日 04:04 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnJT872335320100621

他方、スペインの金融機関の中には市場で資金調達ができなくなっているとの報道も出ている。特に、中小金融機関は国際市場からの資金調達が困難になっているという話は6月上旬から話題に上っており、その問題が更にあからさまとなったのが、6月14日にスペインの大手金融機関バンコ・ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア(BBVA)のフランシスコ・ゴンサレス会長が「国際資本市場から締め出されるスペインの企業と金融機関が大半となっている」と語ったことによる。

【ロイター】
スペインの銀行、欧州銀行間市場での資金調達が困難に=現地紙
2010年 06月 9日 16:00 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK871149320100609
スペインのある貯蓄銀行の幹部は同紙に対し、「スペインの大手銀行だけはなんとか資金を調達できている。ただ、ドイツなど海外の国債を担保としており、スペインの国債は担保として受け入れられていない」と語った。

【ブルームバーグ】
スペインの企業と銀行、国際資本市場から締め出し状態-BBVA会長
2010/06/14 22:52 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aYPiKNwASsA0

こうなると、スペインの信用リスクは金融機関だけではなく、財政にも矛先が向かうことになり、市場は観測報道に敏感になった。6月11日にはドイツ版のFTから、スペインからの支援要請に対してEUが準備を進めているというニュースが舞い込み、スペインはこれを即座に否定にかかっている。更に、6月16日にはスペイン地元紙のエコノミスタが国際機関が総額2500億ユーロの支援枠設定を取りまとめているとの報道がなされ、サパテロ首相はこれを否定している。加えて、ギリシャが債務危機に陥った要因は、国債の償還原資が枯渇したことによるものから、スペインの国債大量償還が予定されている7月に同じことが起きるのではないかと言う疑念が高まっている。ただ、こちらも6月17日時点で、経済省関係者がファイナンスに問題は無いとの見解を示している。

【ロイター】
EU、スペインからの支援要請に備え準備=FTドイツ版
2010年 06月 11日 16:14 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK871581520100611

【ロイター】
スペイン、EUに支援要請していない=経済省
2010年 06月 11日 17:18 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK871593920100611

【ブルームバーグ】
IMFなど、スペインに2500億ユーロの融資枠を計画-エコノミスタ
2010/06/16 15:59 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aHl5QC16Gw04

【ロイター】
スペイン首相、IMFへの支援要請の憶測否定
2010年 06月 18日 06:47 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15875520100617

【ロイター】
スペイン、7月の債券償還のため新たに資金調達する必要はない=経済省関係者
2010年 06月 18日 09:17 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK872011520100618

この様に、雇用問題、金融問題、財政問題の3重苦と疑念を抱える中で、スペインに対する不透明感を一掃する手段として、金融機関のストレステストの結果を公表しようと言う機運が高まっている。ストレステストにより金融機関の健全性が確認されれば、信用リスク問題は低下するし、公的資金注入費用が軽減されるのであれば、その分財政への負担懸念も払拭される。そこで、スペインは市場の疑念を払拭すべく「個別行」ベースのストレステストの結果を公表しろと息巻いている。これに対して、他の国でストレステストが公表された場合、問題行の発見から思わぬ市場不安が発生してしまうのではないかという懸念から、消極的な声が聞こえた。特に、ドイツなどはそうでないかと言われている。ただ、ここまで声が高まっておきながら何もしないと言うことは、返って不安を煽る可能性があるとのことから、6月17日に欧州銀行監督委員会The Committee of European Banking Supervisors (CEBS)がストレステストを実施し公表するとの文章を発表した。これは、同日開催された欧州首脳会議で、主要25行の個別行のデータを7月末までに公表することが決まったことによる。報道によれば、スペインはこれとは別に、中小金融機関も含めて公表することを検討しているようだ。

【ロイター】
スペイン、欧州委に銀行ストレステストの結果公表求める=現地紙
2010年 06月 15日 20:14 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnTK867500220100615

【CEBS】
18 June 2010
CEBS’S PRESS RELEASE ON STATE OF PLAY WITH THE 2010 EU-WIDE STRESS TESTING EXERCISE
http://www.c-ebs.org/documents/News---Communications/2010/PR_2010stresstesting.aspx
The European Council decided at its meeting on 17 June 2010 to publicly disclose the results of the ongoing stress tests by banking supervisors.

【毎日新聞】
EU首脳会議:健全性審査、主要25行の結果公表へ--来月末までに
2010年6月18日 東京夕刊
http://mainichi.jp/select/world/news/20100618dde007020002000c.html
スペインを取り巻く環境は簡単ではない。その中で、狭い道ながら財政再建を行い、信用不安を抑え、雇用問題を解決させて、市場の疑念を着実に減じていけるかどうか。今後1ヶ月間、ストレステストの結果公表まで、当面目が離せない。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ロシアがベラルーシ向けガス供給を15%削減、追加削減も
2010年 06月 21日 21:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15921820100621

【ロイター】
人民元が1ドル6.7976元で終了、05年切り上げ以降の最高値
2010年 06月 21日 21:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15921320100621
1ドル=6.7976元で終わった。先週末18日終値の6.8262元からは0.42%の上昇となる。

【ロイター】
消費税引き上げ早くて2─3年後、複数税率や還付も検討=首相
2010年 06月 21日 18:59 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15920620100621
「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現する」「参院選終了後に議論を本格的にスタートさせる」「公約と受けとめてもらっていい」

【ロイター】
新政権は中長期の財政再建にコミット=財務省国債企画課長
2010年 06月 21日 18:17 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15919820100621

【ロイター】
インタビュー:財政改革計画なければ日本に格下げ圧力=フィッチ
2010年 06月 21日 17:36 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15918220100621
「日本の格付けにとってマイナスとなるのは、日本が年末までに信頼できる財政改革プランを打ち出すことができなかった場合だ」

【ロイター】
ギリシャの銀行、債務危機発生当初に十分な資本あった─中銀総裁=米紙
2010年 06月 21日 17:32 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15918120100621
ギリシャ中央銀行のプロボポラス総裁は、「危機の初めにわれわれの銀行システムは、衝撃を和らげる100億ユーロをかなり上回る規模の資本バッファーがあった。ストレステストやシミュレーションの結果、銀行システム全体の資本基盤が目減りしても、このバッファーがそれをカバーする十分な規模であることが示された」、「ユーロシステムは債券を的確に購入している。なぜなら、デフォルトの可能性があるとは考えていないからだ」と語った。

【ロイター】
金現物が過去最高値、1オンス1262.75ドルに
2010年 06月 21日 17:11 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15917220100621

【ロイター】
フランス、財政赤字削減のため新たな歳出削減策を計画=大統領側近
2010年 06月 21日 16:39 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15915720100621

【ロイター】
ドイツ産業連盟、2010年の輸出見通しは+8%に=独紙
2010年 06月 21日 12:42 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15909120100621

【ロイター】
欧州はユーロ圏諸国の破たんを容認しない=ECB総裁
2010年 06月 21日 12:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15906820100621
総裁は、ギリシャ、スペイン、ポルトガルが債務を返済できなくなる可能性を否定し「われわれは、そのような事態が起きることを容認しない。われわれは、マーストリヒト条約以前の状態に戻るためにこの条約を生み出したのではない」と述べた。

【ロイター】
中国は人民元問題で「後退」、強力な法律必要=米上院議員
2010年 06月 21日 08:08 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15902320100620

【ロイター】
情報BOX:中国の為替制度の概要
2010年 06月 21日 06:24 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15901120100620

(6月19日)人民元柔軟化再開!!?

6月19日土曜日に、中国人民銀行が人民元相場の柔軟化を発表した。5月24~25日の米中戦略対話、6月4~5日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議を経ても、中国政府当局は人民元の上昇を容認してこなかった。その結果米国議会を中心に対中強硬派が台頭し始め、中国に対する外圧は徐々に高まっていった。

この前の6月16日に米下院歳入委員会のレビン委員長(民主党)は、中国の貿易・産業政策に関する公聴会の冒頭で米国の「忍耐は限界に達した」と発言し、「中国が行動せず、米政府がそれに対し迅速に対応しなければ、米議会が行動する」と述べた。対中強硬派と見られている民主党のシューマー議員は、9日の米中経済安全保障再考委員会で、中国の違法な為替と貿易慣行について、米財務省が是正を求めないことには、控えめに言っても失望している」と語り、報復関税を含む対中制裁法案の採決を提案していた。中国政府としては、これ以上の政治対立が起きないようにと配慮した結果であると言えよう。

18日の上海外国為替市場の人民元相場は、1ドル=8.8262元であったが、週明けの21日は0.42%の上昇となる6.7976元で引けた。しかし翌日の22日には6.8136元へと0.23%下落し、失望を買った。人民元相場の柔軟化開始はここからスタートするのだが、今後どれだけのペースで人民元の上昇が容認されてゆくかが注目だ。

【中国人民銀行】
Further Reform the RMB Exchange Rate Regime and Enhance the RMB Exchange Rate Flexibility
Submit Date:2010-6-19 19:00:00
http://www.pbc.gov.cn/english/detail.asp?col=6400&id=1488

【ロイター】
中国人民銀行の元相場柔軟化に関する声明全文
2010年 06月 21日 05:51 JST
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnTK867587420100620

Further Reform the RMB Exchange Rate Regime and Enhance the RMB Exchange Rate Flexibility「人民元相場メカニズムのさらなる改革と人民元相場の柔軟性強化」

In view of the recent economic situation and financial market developments at home and abroad, and the balance of payments (BOP) situation in China, the People´s Bank of China has decided to proceed further with reform of the RMB exchange rate regime and to enhance the RMB exchange rate flexibility. 人民銀行は、最近の国内外の経済状況および金融市場の動向、中国の国際収支の状況を踏まえ、人民元相場メカニズムの改革をさらに進め、人民元相場の柔軟性を強化することを決定した。

Starting from July 21, 2005, China has moved into a managed floating exchange rate regime based on market supply and demand with reference to a basket of currencies. Since then, the reform of the RMB exchange rate regime has been making steady progress, producing the anticipated results and playing a positive role.  中国は、2005年7月21日から市場の需給に基づき、通貨バスケットを参考にした管理フロート制に移行した。以来、人民元相場メカニズムは着実に前進し、想定した結果を生み、前向きな役割を果たしてきた。

When the current round of international financial crisis was at its worst, the exchange rate of a number of sovereign currencies to the U.S. dollar depreciated by varying margins. The stability of the RMB exchange rate has played an important role in mitigating the crisis´ impact, contributing significantly to Asian and global recovery, and demonstrating China´s efforts in promoting global rebalancing.  今般の国際金融危機が最悪期にあった時、多くの国の通貨の対ドル相場はさまざまな幅で下落した。人民元相場の安定性は、危機の影響を緩和する上で重要な役割を果たし、アジアおよび世界の経済回復に多大な貢献をし、世界的リバランスの促進に向けた中国の取り組みを示した。

The global economy is gradually recovering. The recovery and upturn of the Chinese economy has become more solid with the enhanced economic stability. It is desirable to proceed further with reform of the RMB exchange rate regime and increase the RMB exchange rate flexibility.  世界経済は徐々に回復している。中国経済の回復と拡大はより強固となり、安定性が増した。人民元相場メカニズムの改革をさらに進め、人民元相場の柔軟性を強化することが望ましい。

In further proceeding with reform of the RMB exchange rate regime, continued emphasis would be placed to reflecting market supply and demand with reference to a basket of currencies. The exchange rate floating bands will remain the same as previously announced in the inter-bank foreign exchange market.  人民元相場メカニズムの改革をさらに進めるにあたっては、引き続き市場の需給を反映し、通貨バスケットを参考とする。為替相場の許容変動幅は、銀行間為替市場で以前に発表した水準と変わらない。

China´s external trade is steadily becoming more balanced. The ratio of current account surplus to GDP, after a notable reduction in 2009, has been declining since the beginning of 2010. With the BOP account moving closer to equilibrium, the basis for large-scale appreciation of the RMB exchange rate does not exist. The People´s Bank of China will further enable market to play a fundamental role in resource allocation, promote a more balanced BOP account, maintain the RMB exchange rate basically stable at an adaptive and equilibrium level, and achieve the macroeconomic and financial stability in China. 中国の対外貿易は着実に均衡に向かっている。経常黒字の国内総生産(GDP)に対する比率は、2009年に大幅に低下した後、2010年初めから低下し続けている。国際収支は均衡に近づいており、人民元相場の大幅な上昇の根拠は存在しない。人民銀行は今後も、市場が資源の配分で基本的な役割を果たすことができるようにし、より均衡のとれた国際収支を促進する。人民元相場を適応できる均衡した水準で基本的安定を維持し、中国のマクロ経済および金融の安定の達成を図る。

一つ、ポイントを挙げるならば、2008年7月のリーマンショック前に、柔軟化を続けていた人民元相場は、何のアナウンスメントも無く再び事実上の固定相場に戻ったのだが、今回は発表文章の中で管理フロート制に移行したと宣言していることで、事実上固定相場だったことを認めたことなのだが、重箱の隅を突いても余り意味は無いか。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
G20各国が赤字を半減させることを望む=カナダ首相
2010年 06月 19日 04:53 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15896420100618

【ロイター】
銀行のストレステスト、ソブリン債への圧力等を想定=関係筋
2010年 06月 19日 02:13 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15895520100618
ストレステストは欧州銀行監督委員会(CEBS)の下で各国の監督機関が実施する。ストレステストについては14日の7カ国(G7)財務相会議が発端という。

【ロイター】
スペイン、第3四半期にシ団通じ10年債を発行
2010年 06月 19日 01:41 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15895120100618

【ロイター】
スペインの緊縮財政措置、正しい方向を向いている=IMF
2010年 06月 19日 01:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15895720100618

【ロイター】
オバマ米大統領、G20首脳に金融改革と財政強化求める
2010年 06月 19日 01:34 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15894720100618
オバマ大統領は「力強く均衡の取れた世界経済を支えるために、柔軟な為替レートが示すシグナルが必要だ」と指摘。中国人民銀行の張濤・国際局長は、人民元政策は中国の国家としての決定であると発言。朱光耀・財政次官も、人民元は世界ではなく中国が検討すべき問題であるとの見解を示している。

2010年6月20日日曜日

(6月18日)新成長戦略とマニフェスト

菅政権が新成長戦略を取りまとめ、閣議決定を行った。PDF92ページ物の成長戦略は、自民党政権の時の骨太の方針の様に、電話帳かと思うくらい分厚い。一度、誰かまじめにこういったものに盛り込まれた内容がどれくらい達成できているかを検証してみたらどうだろうか。どれが新しいもので、どれがこれまでに何度も出てきた戦略かどうか、素人では全く分からない。

【首相官邸】
「新成長戦略」について
平成22年6月18日
閣議決定
http://www.kantei.go.jp/jp/sinseichousenryaku/sinseichou01.pdf

「新成長戦略」を別紙のとおり定める。

【内閣府】
「新成長戦略」参考資料(平成22年6月18日)
http://www5.cao.go.jp/keizai2/2010/20100618_shinseityousenryaku_sankou.pdf

その1日前の6月17日に、民主党はマニフェストを発表した。

【民主党】
2010/06/17
【ビデオ配信】民主党マニフェスト発表会見
http://www.dpj.or.jp/news/?num=18390

民主党の政権政策Manifesto2010
http://www.dpj.or.jp/special/manifesto2010/index.html#text

◆民主党の政権政策Manifesto2010について
菅直人代表が6月17日に発表した「民主党の政権政策Manifesto2010」は、党が目指す政策をまとめた政権政策集です。

斜め読みしてみると、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の3つをリンクさせて好循環のニッポンをつくりだすような図柄が見える。様々な記事を見ると、菅首相は前財務大臣時代、2月のG7でギリシャ問題が話し合われたことをきっかけに財政健全化に舵を切ったといわれている。

【時事通信】
非小沢VS親小沢の様相=菅首相の消費税発言が波紋
2010/06/18-23:09
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&rel=j7&k=2010061801056
首相が日本の財政状況に危機感を強めたのは、財務相当時の今年2月、カナダで開かれた先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)への出席が契機とされる。会議ではギリシャの財政危機問題が取り上げられ、「首相は相当な危機感を抱き、消費税について熱心に考えだした」という。首相が将来の税率を「20%前後」と周辺に話したこともあったとされる。

その結果、菅首相はマニフェストにも記されていない消費税率について「自民党が提案している10%を一つの参考にさせていただく」と唐突に発言し、「後出しじゃんけんの抱きつき作戦ではないか」といった批判が巻き起こったり、財政健全化と経済成長が結びつくのかとか、ばら撒き部分はそのままで増税かといった声も挙がっている。

これまでの菅首相の発言や行動を見ていると、鳩山前首相は理想主義者であったが、菅首相は現実主義者との色合いが濃い。そういう意味では、無茶なことはせずに、民意や人の意見に耳を傾けながら政策を実行していくだろうとの見方もできる。ただし、それは裏返していけば、官僚機構の進言に取り込まれるリスクもはらんでいて、これまでの政権となんら変わりないことしかできないという可能性もある。

【時事通信】
菅外交、サミットで始動へ=「現実主義」アピール
2010/06/19-18:51
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2010061900305

様々な難問を抱えたままの菅政権であるが、国会も延長せずに新首相誕生のご祝儀相場のまま参議院選挙に突っ込む戦略を採用した結果、現時点で菅首相の方針は、このマニフェストからくらいしか読み解くことはできず、その実行力についてはまだまだ未知数であって、判断材料に乏しい。今後を見守る必要があるだろう。

民主党のマニフェストから幾つか数値目標を列記しておくと、

●2020年度までの平均で名目成長率3%超、実質成長率2%超の経済成長。
●2011年度以降、3年単位で予算の大枠を定める「中期財政フレーム」に沿って財政を運営。
●新たな政策の財源は、既存予算の削減または収入増によって捻出することを原則。
●2011年度の国債発行額は、2010年度発行額を上回らないように全力をあげる。
●2015年度までに基礎的財政収支の赤字(対GDP比)を、2010年度の2分の1以下に。
●2020年度までに基礎的財政収支の黒字化を達成。
●2021年度以降において、長期債務残高の対GDP比を安定的に低下。
●国家公務員の総人件費を2割削減。
●参議院の定数を40程度削減。
●衆議院は比例定数を80削減。

個人的には、2年以上先のことは結局みんな忘れてしまうし、その時の状況を理由にドンドン変更されてしまうので、意味が無い気がする。旗を掲げることは良いことですが。

一応、自民党のマニフェストも。

【自民党】
自民党政策集
J-ファイル2010(マニフェスト)
http://www.jimin.jp/jimin/kouyaku/22_sensan/pdf/j_file2010.pdf

《ニュース備忘録》

【ロイター】
ムーディーズ、英BPの格付けを「A2」に引き下げ
2010年 06月 18日 21:52 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15894620100618

【ロイター】
消費税10%の根拠は高齢者福祉費用まかなうため=菅首相
2010年 06月 18日 21:47 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15894520100618

【ロイター】
中国経済は過熱傾向、バブル懸念高まっている=日銀総裁
2010年 06月 18日 17:30 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15891620100618

【ロイター】
基調判断を3カ月ぶり上方修正、「着実に持ち直し」=月例経済報告
2010年 06月 18日 14:54 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15886320100618

【ロイター】
中国の経済規模、2020年に米国抜く=人民銀金融政策委
2010年 06月 18日 14:04 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15885520100618

【ロイター】
EU、ストレステスト結果公表や財政政策の協調で合意
2010年 06月 18日 08:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15876720100617

【ロイター】
英BPが最大100億ドルの起債検討、来週にも=報道
2010年 06月 18日 06:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15875620100617

【ロイター】
ストレステスト、25行の結果を個別に公表へ=EU筋
2010年 06月 18日 05:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15874820100617
欧州連合(EU)が7月に公表する銀行のストレステスト(健全性審査)の結果は、最大手25行については個別行ベースで実施する。複数のEU筋が17日、明らかにした。

(6月17日-2)トルコ中銀

トルコ中銀が政策金利を発表した。前回の政策金利発表から、政策金利を1週間もののレポレートに置き換えているが、特にサプライズは無かった。

DECISION OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE
Meeting Date: June 17, 2010
http://www.tcmb.gov.tr/yeni/announce/2010/ANO2010-18.pdf

The Monetary Policy Committee (the Committee) has decided to keep one-week repo auction rate (the policy rate) and overnight rates unchanged as follows:(金融政策委員会は政策金利である1週間もののレポレートと、翌日物の金利を以下の様に据え置くことを決定した。)

a) One-week repo rate (the policy rate) at 7 percent,(政策金利である1週間もののレポレートを7%)

b) Overnight Interest Rates: Borrowing rate at 6.50 percent, lending rate at 9 percent,(翌日物の金利で、借入金利を6.5%、貸出金利を9%)

c) Late Liquidity Window Interest Rates (between 4:00 p.m. – 5:00 p.m.):Borrowing rate at 2.50 percent, lending rate at 12 percent,(午後4時~5時の間に実行される終盤流動性ウィンドウの金利について、借入金利は2.5%、貸出金利は12%)

d) The interest rate on overnight and one-week maturity borrowing facilities provided for primary dealers via repo transactions at 8 percent.(翌日物及び1週間物のレポを通じたプライマリーディーラーに対する貸出しファシリティによる金利は8%)

the Committee reiterated that it may be necessary to maintain policy rates at current levels for some time, and to keep them at low levels for a long period.(政策委員会は、政策金利を現在の水準を暫くの間維持し、それらを低水準に長期間継続する必要があるということを繰り返す。)

It should be emphasized that any new data or information related to the inflation outlook may lead the Committee to revise its stance.(また、インフレ見通しに関連した新たなデータや情報がある場合、政策委員会はその態度を修正することになることを強調する。)

(6月17日)スイス出口に0.01歩前進!?

スイス中銀が政策金利を発表した。政策金利についてはサプライズは無し。ただし、将来については多少の金融政策変更に含みを持たせている。為替介入については、前回までは「It will act decisively to prevent an excessive appreciation of the Swiss franc against the euro.(スイスフランがユーロに対して過度に上昇することを防ぐために、断固たる行動をするだろう。)」という対ユーロでの為替介入実施を明文化していたが、今回はこの文言が取り除かれた。また、将来の政策金利については、物価見通しに沿って考えれば、2012年にはインフレターゲットの2%を上回る可能性が生じるので、ここまでは現状の超低金利政策を続けることは妥当ではないと言うことを匂わせている。ただし、何時利上げを開始するかについては、まだまだ先の話であって、2010年中はそもそも無いと見受けられる。欧州財政危機による周辺国からの悪影響の余波を考えれば、スイス国立銀行はまだまだ緩和的な金融政策を採り続けなければならないだろう。

http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20100617_1/source/pre_20100617_1.en.pdf
Monetary policy assessment of 17 June 2010
Swiss National Bank maintains its expansionary monetary policy

The Swiss National Bank (SNB) is maintaining its expansionary monetary policy. Consequently, it is leaving the target range for the three-month Libor unchanged at 0.00–0.75% and intends to hold the Libor in the lower part of the target range, at around 0.25%.(スイス国立銀行は拡張的な金融政策を継続する。その結果、3ヶ月物のロンドン銀行間金利を0~0.75%とし、その金利を0.25%周辺の低位部分に維持することを意図するよう据え置くことになる。)

At the same time, uncertainty has increased since the last monetary policy assessment. The latest tensions on the financial markets, particularly with regard to the public finances of some individual countries, have increased the downside risks. Should these downside risks materialise and, via an appreciation of the Swiss franc, lead to a renewed threat of deflation, the SNB would take all the measures necessary to ensure price stability.(同時に、不確実性は前回の金融政策判断から増加した。幾つかの個別国の公的部門における資金繰りを原因とした足もとの金融市場の緊張は、悪化リスクとして増大している。これらの悪化リスク材料やスイスフランの上昇を通じた新たなデフレ懸念の中、スイス国立銀行は物価安定を確かなものとするため、必要と思われる全ての手段を採る。)

The SNB’s conditional inflation forecast for 2010 and 2011 has increased slightly since March. It remains unchanged for 2012. Assuming an unchanged three-month Libor of 0.25%, average inflation for 2010 is expected to amount to 0.9%, for 2011 to 1.0% and for 2012 to 2.2%. This forecast shows that short-term price stability is guaranteed. It also shows that the current expansionary monetary policy cannot be maintained over the entire forecast horizon without compromising medium and long-term price stability. The forecast is still associated with very considerable uncertainties.(スイス国立銀行の2010年、2011年の物価見通しは3月から若干上方修正した。2012年は変更は無い。3ヶ月ロンドン銀行間金利が0.25%で変化がないと仮定すると、2010年の平均的な物価上昇率は+0.9%、2011年は+1.0%、そして2012年は+2.2%と予想される。この見通しは、短期における物価の安定性が保証されることを意味する。また、この見通しは、中長期的な物価の安定について妥協をすること無しに、見通しの最終期間まで現在の拡張的な金融政策を維持することはできないということも示している。この見通しは非常に大きな不確実性を伴っている。)

《ニュース備忘録》

【ロイター】
スイス中銀が金利据え置き、景気改善見通し示す
2010年 06月 17日 22:37 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15872220100617
据え置き発表直後の電話会見では、スイスフランの対ユーロの過度の上昇に断固たる対応をとるとの従来の方針を示さなかった。その後、フラン高がデフレにつながるリスクがあれば、あらゆる措置を講じるとの方針を示した。

【ブルームバーグ】
スイス中銀:通貨高抑制姿勢を緩和-政策金利は据え置き (Update1)
2010/06/17 19:51 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aoY8BWcWnXIc
ヒルデブラント総裁は、物価安定をめぐり「妥協せずに、現行の緩和的な金融政策を予想し得る期間すべてにわたり維持することはできない」と言明。ヨルダン副総裁は、スイスの市中銀行は「利上げに備える必要がある」と述べた。

【ロイター】
消費税引き上げ実施、早くても2012年秋=民主政調会長
2010年 06月 17日 18:30 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15869920100617

【ロイター】
G20での名指しは自滅行為=中国政府高官
2010年 06月 17日 16:57 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15867620100617

【ロイター】
1年物オペ満期でECB出口戦略は中断、資金供給は維持へ
2010年 06月 17日 15:08 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15864520100617

【ロイター】
米財務省、核問題で対イラン追加制裁を発表
2010年 06月 17日 10:08 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15857820100617

【ロイター】
議会は規制改革で大きく前進=バーナンキ米FRB議長
2010年 06月 17日 09:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15856820100617

【ロイター】
米ファニーメイとフレディマック、上場廃止へ
2010年 06月 17日 02:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15853520100616

(6月16日)欧州財務相理事会「Public Finances in EMU」

欧州財務相理事会が、欧州圏の財政についてまとめた「Public Finances in EMU」を発表した。このレポートは開くと非常に分厚い冊子になっていて、全てを読み込むには時間がかかるのでパス。その中で、欧州財政に関する見通しの表が掲載されていた。ただし、この見通しの数字は、5月5日に発表された「欧州経済見通し2010春」に記されていたものである。この所、何回も欧州の問題を取り上げてきているので、財政赤字の対GDP比や総債務残高の対GDP比は見飽きてきたが、とりあえず記録に残すと言うことで。

【ECOFIN】
2010 Report on Public Finances in EMU: debt crisis highlights need for fiscal consolidation and stronger surveillance
16/06/2010
http://ec.europa.eu/economy_finance/articles/eu_economic_situation/2010-06-16-public_finances_2010_en.htm

【ECOFIN】
European Economic Forecast - spring 2010
05/05/2010
http://ec.europa.eu/economy_finance/eu/forecasts/2010_spring_forecast_en.htm

送信者 備忘録とかそういうの



《ニュース備忘録》

【ロイター】
域内銀行、8000億ユーロの借り換え必要に=ECB専務理事
2010年 06月 16日 22:03 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15852120100616

【ロイター】
参院選は6月24日公示、7月11日投開票へ=官房長官
2010年 06月 16日 21:48 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15852020100616

【ロイター】
インタビュー:中国・アジアでの高級鋼需要は堅調=JFEスチール 
2010年 06月 16日 19:26 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15850720100616
「中国、アジアで在庫がたまったり、鋼材需要が減少するという兆候は全く見られない。需要は非常に強い」

【ロイター】
ロシアの財政、投資支出削減と増税で改善が可能=財務相
2010年 06月 16日 19:12 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15850420100616

【ロイター】
豪政府、資源超過利潤税の一部変更を検討へ
2010年 06月 16日 16:48 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15847820100616

【ロイター】
EU・IMFなど、スペインに2500億ユーロの融資枠検討=報道
2010年 06月 16日 15:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15846820100616

【ロイター】
米金融規制改革法案、格付けの中央機関設立条項を廃止
2010年 06月 16日 14:10 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15844420100616

【ロイター】
欧州問題は世界経済の下方リスク認識させる=豪財務相
2010年 06月 16日 13:39 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15844120100616

【ロイター】
ギリシャ、予算削減・改革目標達成は順調に進ちょく中=パパンドレウ首相
2010年 06月 16日 05:16 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15835920100615

【ロイター】
IMF専務理事、18日にサパテロ首相と会談=報道官
2010年 06月 16日 05:07 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15836120100615

【ロイター】
スペイン・ポルトガルの財政緊縮計画は十分に積極的=欧州委
2010年 06月 16日 01:28 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15835620100615

(6月15日)日銀成長基盤強化の資金供給?

日本銀行が金融政策を発表した。政策金利については0.1%で変化は無く、全くのサプライズ無しだし、誰も気にしても居ないだろう。

当面の金融政策運営について
(現状維持、成長基盤強化を支援するための資金供給の導入、12時56分公表)
2010年6月15日
日本銀行
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100615.pdf
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致(注))。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。

同時に決定されたのが、成長基盤強化を支援するための資金供給の導入である。ポイントは金額の上限が3兆円であること、貸付機関は原則1年であるが、借換えは3回まで可能なので、実質的には最長4年、受付期間は2012年3月末まで。金利は政策金利での貸付なのだが、良くわからないのが後取りの方法ということである。これは、後で調べてみようと思うが、政策金利の0.1%で1年以内の期限での貸付になると言うことは、低金利による長期間の貸出しとなり、イールドカーブを更に寝かせることになる。加えて、証券貸借等のオペではなく、貸付という形にしていることより、日銀が時価変動などによって評価損を計上するリスクが限定的になるということも言える。

最終的には、果たしてこの資金供給手段が、実体経済に意味があるものになるかどうかということなのだが、あまり大きな期待はできないかもしれない。

2 0 1 0 年6 月1 5 日
日本銀行「成長基盤強化を支援するための資金供給基本要領」の制定等についてhttp://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/mok1006b.pdf

1.趣旨

この基本要領は、物価の安定を図ることを通じて国民経済の健全な発展に資する観点から、金融調節の円滑を確保しつつ、わが国経済の成長基盤強化に向けた民間金融機関の取り組みを支援するために行う資金供給に関する基本的事項を定めるものとする。

5.貸付期間

特に必要と認められることから1年以内の期間とする。

6.貸付利率および利息の徴収

(1)貸付利率は、貸付実行日における誘導目標金利(本行が金融市場調節方針において誘導目標として定める無担保コールレート(オーバーナイト物)の水準をいう。)とする。

(2)利息の徴収は、(1)の定めにより決定された貸付利率によって、貸付実行日の翌日から返済期日までの日数に応じて、後取りの方法により行う。

7.貸付実行日および借り換え

(1)貸付実行日は、別に定める日とする。 ただし、平成24年6月30日以降、(2)に定める借り換えを除く貸付実行は行わない。

(2)貸付先が希望する場合には、9.に定める貸付限度額の範囲内で満期日における借り換えを認める。ただし、借り換えの回数の上限は、3回とする。

8.貸付金額
貸付金額は、貸付先の希望する額とする。ただし、その金額は、9.に定める貸付限度額および当該貸付先が差入れている共通担保の担保余裕額相当額を超えることはできない。

9.貸付限度額等

(1)貸付総額の上限は、3兆円とする。

(2)貸付先毎の貸付額の上限は、1,500億円とする。

(3)貸付実行日毎の貸付総額の上限は、借り換えにかかるものを除き、1兆円とする。

(4)貸付実行日毎の貸付先毎の貸付限度額は、各貸付先から提示を受けた11.に定める成長基盤強化に向けた取り組み方針に基づいて貸付先が行う期間1年以上の融資または投資についての、別に定める一定期間の新規実行額相当額とする。ただし、貸付先が借り換えを希望する場合には、当初貸付実行時の貸付限度額算出の根拠となった融資または投資の残高のうち1年以上の残存期間を有
するものの金額と、当初貸付金額を比較して、いずれか小さい方の金額の範囲内でこれに応じる。

10.貸付受付期限

9.(4)に定める貸付限度額算出の根拠となる一定期間は、平成24年3月31日以前に限る。


《ニュース備忘録》

【ブルームバーグ】
スペイン銀行救済基金、与信枠獲得目指し銀行との交渉を検討-関係者
2010/06/15 23:36 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=jp09_newsarchive&sid=a.Pr6HTfc4xY

【ロイター】
ユーロ圏からの排除を制裁としてEUは検討せず=独政府当局者
2010年 06月 15日 22:34 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15833920100615

【ロイター】
スペイン、欧州委に銀行ストレステストの結果公表求める=現地紙
2010年 06月 15日 22:22 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15834120100615

【ロイター】
英BPを「AA」から「BBB」に格下げ=フィッチ
2010年 06月 15日 21:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15833520100615

【ロイター】
ギリシャ国債が主要グローバル指数から相次ぎ除外、資金流出に懸念
2010年 06月 15日 20:01 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15833420100615

【ロイター】
スペインの短期債入札で金利が急上昇、格付けを懸念
2010年 06月 15日 19:18 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15832920100615

【ロイター】
米外交問題評議会、オバマ政権の対北朝鮮政策を「弱腰」と批判
2010年 06月 15日 18:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15831720100615

【ロイター】
「ポスト胡錦濤」有力候補、中国の習副主席がアジア訪問
2010年 06月 15日 15:24 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15828020100615

【ロイター】
国連安保理、韓国哨戒艦沈没事件に「深刻な懸念」
2010年 06月 15日 14:21 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15826820100615

【ロイター】
金利据え置きを全員一致で決定、成長基盤強化の概要発表=日銀
2010年 06月 15日 14:07 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15826220100615

【ロイター】
新成長戦略に法人税引き下げ構想、実施時期の明示も指示
2010年 06月 15日 11:21 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15823020100615

【ロイター】
ギリシャ格付け、当面ジャンク等級に引き下げせず=フィッチ
2010年 06月 15日 11:10 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15821520100615

【ロイター】
スペインの一部銀行は信用収縮に直面=政府当局者
2010年 06月 15日 10:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15821720100615

【ロイター】
ギリシャをジャンク級に格下げ、支援策リスクで=ムーディーズ
2010年 06月 15日 06:47 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15818620100614
米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは14日、ギリシャの国債の格付けを「A3」から4ノッチ引き下げ、投機的(ジャンク)等級となる「Ba1」とした。見通しは安定的。

【ロイター】
スペインへの流動性の滞りは問題、政府として対処=財務省高官
2010年 06月 15日 05:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15817220100614

【ロイター】
スペインは債務借り換えに問題ない=財務省高官
2010年 06月 15日 00:52 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15816320100614

2010年6月15日火曜日

(6月14日)英Pre-Budget予想

英国の予算責任局が予算前の財政見通しを発表した。2010年度の財政赤字対GDP比は、マーストリヒト条約ベースで10.5%。その後、財政赤字は徐々に縮小してゆくことを見込んでいる。同じく債務残高の対GDP比はこれから徐々に増加してゆくが、2013年度の88.4%をピークに上昇に歯止めがかかるようだ。2008年度の55.8%の財務残高から約32%の増加となる。

【データの大元の予算責任局のページ】
Office for Budget Responsibility
http://www.hm-treasury.gov.uk/data_obr_index.htm

【予算前予想のPDF】
The first pre-Budget forecast was published by the Office for Budget Responsibility on Monday 14 June 2010
Pre-Budget forecast
June 2010
http://budgetresponsibility.independent.gov.uk/d/pre_budget_forecast_140610.pdf

昨年5月にS&Pが英国をネガティブウォッチにしたときは、一般政府の純債務残高が2013年に対GDP比で100%近くに上る可能性を指摘してワーニングを発したのだが、この予算前(pre-Budget)予想を見ると、上記の様に2013年の88.4%が上限と、100%には達しなくて済むような見通しとなっている。

         08年度 09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 14年度
実質GDP     -1.4   -3.7    2.1    2.6    2.9    2.7    2.6
名目GDP      1.1   -1.8     4.9   4.2    5.4    5.5    5.4
対名目GDP比
歳入        37.2   36.6    37.0   37.8   38.3   38.5   38.7
歳出        44.0    47.7    47.5   46.1   44.8   43.5   42.6
財政収支     -6.7   -11.1   -10.5   -8.3   -6.6   -5.0   -3.9
公的部門純現金必要額  
           4.2    8.8    10.6   9.0    6.9    5.6    4.0
マーストリヒト条約ベース
財政赤字      6.8    11.5    10.5  8.3    6.6    5.1    4.0
債務残高     55.8    71.2    79.0   84.7   87.5   88.4   88.2
10億ポンド
歳入       534.0   515.3  546.0 582.0 620.0 659.0 697.0
歳出       564.5   602.1  640.0 658.0 678.0 699.0 721.0
減価償却     18.7    19.6   21.0   22.0   22.0   23.0   24.0
財政収支    -49.3  -106.4 -114.0 -98.0 -80.0  -63.0  -48.0
純投資額     47.2   49.7   41.0  29.0   26.0   22.0   23.0
純財政収支  -96.5  -156.1 -155.0 -127.0 -106.0 -85.0  -71.0
純債務残高   617    772    936   1,076  1,196 1,294  1,376
(上記関係は、歳入-歳出-減価償却=財政収支、財政収支-純投資額=純財政収支)
3月25日発表時見通しからの改善額(10億ポンド)
財政収支    -0.4   10.2   10.0    4.0    4.0    4.0    3.0
純財政収支   -0.4   10.4    8.0    4.0    4.0    4.0    3.0
純債務残高   0.0   -4.6  -16.0   -19.0 -22.0   -26.0 -30.0
(財政収支、純財政収支のプラスの数字は収支改善、純債務残高のマイナスの数字は債務残高減少で改善)

お隣の欧州大陸は南欧を中心に問題が深刻化しつつあるが、英国だけがその影響を受けずに要られることも無いと思うので、この財政健全化スケジュールがそのまま通ると思う人が多いかどうかはまだ疑問である。引き続き、財政の動向は注意が必要だ。

《ニュース備忘録》

【ロイター】
デフレ下のデフレ政策だった小泉改革に逆戻りしない=首相
2010年 06月 14日 19:53 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15814320100614

【ロイター】
スペインが欧州に支援を要請する兆候ない=独政府筋
2010年 06月 14日 19:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15814220100614

【ロイター】
英予算責任局、経済・公的財政見通しを公表
2010年 06月 14日 19:13 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15813320100614

【ロイター】
中国国務院、地方政府が保証する債務の急増について警告
2010年 06月 14日 16:45 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15809820100614

【ロイター】
焦点:「バーゼルIII」、基本部分に変更はない見込み
2010年 06月 14日 15:56 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15808120100614

【ロイター】
ユーロの強さがユーロ圏財政問題を覆い隠した─EU大統領=報道
2010年 06月 14日 15:52 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15809020100614

【ロイター】
欧州首脳会議、危機封じ込めで結束示せるかがカギ
2010年 06月 14日 13:41 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15805720100614

【ロイター】
欧州委は監督機関の権限拡大する方針=EU筋
2010年 06月 14日 11:30 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15802820100614

【ロイター】
日本の小惑星探査機「はやぶさ」が地球に帰還
2010年 06月 14日 09:59 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15801220100614

【ロイター】
韓国が外貨取引規制、急激な資金移動の抑制目指す
2010年 06月 14日 08:19 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15799320100613

2010年6月13日日曜日

(6月11日)金融規制の金融経済への影響!?

6月10日のことになるが、国際金融協会(IIF)が銀行の資本・流動性規制による金融機関や経済への影響度についての試算を発表した。国際金融協会(IIF)は、世界70カ国超375社以上の金融機関で構成され、ドイツ銀行のヨゼフ・アッカーマン最高経営責任者(CEO)が会長を務めるロビーング機関でもある。

Global Financial Industry Leaders Support Constructive Dialogue to Secure Financial Sector Stability and Economic Growth
IIF calls on Group of 20 Summit and International Regulatory Authorities to achieve a global consensus on core capital and liquidity elements of reform
Vienna, June 10, 2010
http://www.iif.com/press/press+151.php

この試算では求められるレバレッジ比率やTier1比率がいくつを前提にしているかと言う数値が明確に記されていない(161ページの資料をめくっていったら、どこかに書いてあるかもしれない)ので、なんとも言えないし、金融機関側の団体であるからあまりに厳しい資本規制の導入は混乱を招く可能性が高いと言うスタンスで望んでいることが予想されるが、IIFの考える前提を基に試算すると、経済への影響は以下の通り。

               2011~15年  2011~20年
実質貸出金利上昇幅
米国               1.69%     1.36%    
ユーロ圏            1.34%     0.97%
日本               0.76%     0.60%
3地域加重           1.32%     0.99%
実質GDP成長率
米国               -0.5%     -0.3%    
ユーロ圏            -0.9%     -0.5%
日本               -0.4%     -0.1%
3地域加重           -0.6%     -0.3%
コアTier1調達額
米国             2470億ドル  2600億ドル
ユーロ圏          2730億ドル  7380億ドル
日本             1560億ドル  1690億ドル
3地域合計         6760億ドル  1兆1670億ドル
雇用者減少人数
米国             -458万人   -487万人
ユーロ圏          -468万人   -483万人
日本             -46万人    -43万人
3地域合計         -973万人   -1012万人

この様な試算結果は、いかにも「だから過度な規制を拙速にやってはいけない」という論理展開を導く。

【ブルームバーグ】
ドイツ銀CEO:欧州銀のストレステスト結果公表は「極めて危険」
2010/06/11 08:57 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=a4V4CUY.D3mc
金融規制問題については、米国では上院と下院で法案が通過し、両院協議会で審議中であるし、欧州では欧州委員会で議論が進んでいる。これらは6月25~26日のカナダ・ハンツビルでのサミット、その後の11月11~12日の韓国ソウルでの金融サミットで再び議論されるが、欧州財政危機に端を発した問題が世界的に広まっている中で、なかなか規制強化を推進するのは難しいだろう。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ギリシャ首相、デフォルトやユーロ離脱の可能性を否定
2010年 06月 12日 09:09 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15796220100612

【ロイター】
コーン副議長は後任承認まで理事会にとどまる=米FRB
2010年 06月 12日 05:40 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15794520100611

【ロイター】
中国の硬直的為替政策で先進国の回復が鈍化=ECB専務理事
2010年 06月 12日 05:36 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15794220100611

【ロイター】
ハンガリー、経済行動計画第2弾を今秋発表=首相
2010年 06月 12日 05:29 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15794920100611
同日に発表した経済行動計画では、税制改革や公務員給与削減など一連の方針を打ち出し、現在17%と32%の2段階累進税率が採用されている個人所得税について、一律16%課税の導入を検討するとした。さらに、中小企業を対象に減税を実施するほか、外貨建ての住宅ローンを禁止する措置も盛り込まれた。政府と中央銀行との確執について、オルバン首相は容易に解決できるとの見方を示した。首相をはじめ政府高官は中銀、特にシモール総裁への批判を強め、個人的な投資や政策ミスなどを理由に挙げて総裁の辞任を繰り返し求めてきた。

【ロイター】
英BP、原油回収費用は30─60億ドルに=アナリスト
2010年 06月 12日 01:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15793720100611

【ロイター】
20年度までに基礎的財政収支黒字化へ=民主党政権公約
2010年 06月 12日 01:16 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15793520100611

【ロイター】
銀行の新自己資本規制、特定項目で譲歩必要=オランダ中銀総裁
2010年 06月 11日 21:55 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15792620100611

【ロイター】
超党派の「財政健全化検討会議」、踏み込んだ内容=菅首相
2010年 06月 11日 19:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15792020100611

【ロイター】
スペイン、EUに支援要請していない=経済省
2010年 06月 11日 17:36 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15790620100611

【ロイター】
銀行規制改革、主要国の成長率押し下げる=IIF試算
2010年 06月 11日 14:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15785820100611
銀行のロビー団体であるIIFのアッカーマン会長(ドイツ銀行最高経営責任者)は「来たる20カ国・地域(G20)首脳会合と世界の規制当局に対し、提案されている銀行規制改革の内容、開始時期、調整について注意深く検討することを要請する」と述べた。地域別では、ユーロ圏への影響が最も大きく、11─15年で成長率は年間0.9%ポイント押し下げられると試算。また規制改革の影響で、米国・ユーロ圏・日本の金融機関は7000億ドルの資本調達および5兆4000億ドルの債券発行を迫られるとした。

【ロイター】
中期財政フレーム、「国債44.3兆円枠守る」=国家戦略相
2010年 06月 11日 12:10 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15782020100611
「新成長戦略」や「中期財政フレーム」の取りまとめ時期について遅くとも22日の閣議決定を目指すと述べた。

【ロイター】
亀井郵政・金融担当相が辞任、仙谷官房長官が代理へ
2010年 06月 11日 11:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15779320100611

【ロイター】
中国の為替改革、「非常に重要」=米財務長官
2010年 06月 11日 01:48 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15773420100610

(6月10日-4)ブラジル利上げ2回目

ブラジル中銀が利上げを決定した。0.75%の利上げは市場予想で織り込み済み。2009年7月から政策金利を年8.75%で据え置いていたが、前回2010年4月の0.75%の利上げに続く2回目の引き上げで、政策金利は10.25%となった。先日発表された1-3月期の実質GDP成長率で、前期比+2.7%、年率11.2%が、連続で大幅な利上げ実施を後押ししたと言える。

Copom raises the Selic rate to 10.25 percent
06/10/2010
http://www.bcb.gov.br/noticias/Noticias.asp?noticia=1&idioma=I&cod=2595 Brasilia - Continuing the adjustment process of the monetary conditions to the forward-looking scenario of the economy, in order to ensure the convergence of inflation to the targets path, the Copom unanimously decided to increase the Selic target to 10.25 percent, without bias.(ブラジリア:物価を目標の経路へ誘導することの確実性を高めるため、先行きを見通した経済シナリオに基づき、金融の状態を引き続き調整する。金融政策委員会は、政策金利のセリック金利目標をバイアス無しで10.25%に引き上げることを全会一致で決定した。)

The June Copom Minutes will be released in Portuguese next Thursday, June 17.
ブラジル・日本商工会議所の翻訳記事によれば、利上げはまだ続きそうで、、最終的には12%程度まで金利が引き上げられると考えられているようだ。今後は政策金利引き上げのペースが何時鈍化するかがポイントとなるだろう。

【在ブラジル日本商工会議所:エスタード紙訳】
Selic金利は1年ぶりに二桁台に
2010/06/10
http://jp.camaradojapao.org.br/brasil-business/noticias/noticias-politica/?materia=7473

大半の金融スペシャリストは7月並びに9月のCopom委員会でSelic金利はそれぞれ0.75%引上げられて年末には11.75%になると予想、しかし今後さらにインフレ圧力が強まれば、10月と12月のCopom委員会で小幅な利上げの可能性も否定できない。

2003年にルーラ大統領が就任した時のSelic金利は年利26%でSelic金利が一桁台に低下するのは経済担当班の夢であると述べていたが、昨年6月から1年間も一桁台を維持していた。

昨年のインフレ指数は4.31%、今年は6%が予想されているが、連邦政府のインフレ指数の目標上限である6.5%を突破する可能性も否定できない。

(6月10日-3)ECB金融システム問題

ECBが政策金利を発表した。前回から変更はなし。サプライズも無し。

10 June 2010 - Monetary policy decisions
http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100610.en.html
At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 1.00%, 1.75% and 0.25% respectively. (本日、ECBの政策委員会は主要リファイナンスオペ金利を1.00%、限界貸出金利を1.75%、預金金利を0.25%にそれぞれ据え置くことを決定した。)

トリシェ総裁の記者会見では、国債買入れについて、何処の国債を買い入れたのか、何時まで続けるのかと言うことに注目が集まっているが、明確な回答は無かった。

【ロイター】
トリシェECB総裁の会見要旨
2010年 06月 11日 01:03 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15772920100610

ユーロ圏の経済見通しが同時に発表されている。特徴としては、2010年の実質GDP見通しは1.4%~1.6%へと、前回の0.4%~1.2%から上方修正されている点だ。ただし、中身を見ると総固定資本形成など内需が下方修正されている一方で、輸出が大きく上方修正されており、欧州財政危機によるユーロ安効果が外需を通じて景気を押し上げると言うシナリオを描いているようだ。よって、ちょっと前向きとは言い難い。

10/06/2010
EUROSYSTEM STAFF MACROECONOMIC PROJECTIONS FOR
THE EURO AREA
http://www.ecb.int/pub/pdf/other/eurosystemstaffprojections201006en.pdf

前年比%        2009年  2010年    2011年
HICP(消費者物価)   0.3  1.4 ~ 1.6   1.0 ~ 2.2
実質GDP         -4.1  0.7 ~ 1.3   0.2 ~ 2.2
 民間消費        -1.2  -0.2 ~ 0.4  -0.2 ~ 1.6
 政府消費        2.6  0.3 ~ 1.3  -0.3 ~ 1.1
 総固定資本形成  -10.8  -3.4 ~ -1.2  -2.1 ~ 2.7
 輸出(財サービス)  -13.2  5.5 ~ 9.1   1.1 ~ 7.9
 輸入(財サービス)  -12.0  3.8 ~ 7.0   0.4 ~ 6.8

Standing facilities
http://www.ecb.int/mopo/implement/sf/html/index.en.html
Use of the standing facilities (Figures as at 10/06/2010, EUR millions)
Use of the marginal lending facility: 735
Use of the deposit facility: 365,904

最近、ECB関連で特に注目されているのが、翌日物預金準備残高で、6月10日時点で3659億ユーロとなっている。間接的な表現になるのだが、ユーロ圏内の銀行間金融市場の状況悪化が反映されていると言え、通常であれば金融機関同士の資金貸借が活発に行われることによって、余剰資金が資金需要のある金融機関へと貸し付けられることで、市場では資金が効率的に移動し、ECBへ資金が預け入れられると言うような資金のダブつきは縮小する。しかし、金融機関が貸付先の金融機関に疑念を持ち始め、クレジットラインを絞ったり、貸付を止めたりすることで、金融機関には手元流動性を厚くしておこうと言うインセンティブが働き始める。それがECB預金になってあらわれると見られ、この翌日物預金残高の増加は、ユーロ圏の金融システムについての問題が高まっていると言うバロメーターになっているようだ。


送信者 備忘録とかそういうの



欧州のこういった問題は、抜本的な対策が採られない限り、短期的に解決して行くとは考え難い。ストレステストの実行と公表により、問題を洗い出した上で、資本注入などの対応が行われれば、金融システムは正常化に向かってゆくだろうが、金融機関への支援に対する非難や、政治的な指導力の欠如などを加味すると、長く付き合っていかないといけない問題なのかもしれない。

(6月10日-2)BOE無風

英国銀行が政策金利、資産買入額の据え置きを決定。英国の金融政策については特にサプライズも無いため、以上。

News Release
Bank of England Maintains Bank Rate at 0.5% and Maintains the Size of the Asset Purchase Programme at £200 Billion
10 June 2010
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2010/047.htm

The Bank of England’s Monetary Policy Committee today voted to maintain the official Bank Rate paid on commercial bank reserves at 0.5%. The Committee also voted to maintain the stock of asset purchases financed by the issuance of central bank reserves at £200 billion.(イングランド銀行の金融政策委員会は、商業銀行に支払われる公定歩合を0.5%に据え置くことを本日決定した。また、委員会は中央銀行リザーブの発行によってファイナンスされる資産買入残高を2000億ポンドに維持することを決定した。(この文言は、前回から全く変わっていない。))

The minutes of the meeting will be published at 9.30am on Wednesday 23 June.(会合の議事録は6月23日水曜日の午前9:30に発表される。)

(6月10日)NZ利上げ開始!!

ニュージーランド準備銀行が利上げを実施した。6月1日のカナダの利上げに続く、先進国の利上げである。政策金利は2.5%から2.75%へと0.25%の引き上げ。文章を読むと、一番最後の段落に、過去の利上げサイクルよりは、利上げ後の水準は高くはならないだろうと言うような文言が組み込まれている。だいたい、ニュージーランドは5%くらいは少なくとも政策金利の水準があったということを考えると、そうは言っても緩やかな引き上げは当面続くことが予想される。さらに、その過去の利上げサイクルよりも水準を高めない理由が、金融市場の混乱によるクレジットスプレッドの拡大が、実質的に追加的な引き締め効果を発しているということを述べているので、時間をかけて利上げを行っている最中に、この金融市場の緊張から開放されて、実質的な緩和効果が発せられるようになるならば、更なる利上げによる調整が行われることが予想されることになるだろう。ニュージーランドの金利は上がっていき、6%くらいは行くのではないか。たぶん。

Reserve Bank raises OCR to 2.75 percent
Date 10 June 2010
http://www.rbnz.govt.nz/news/2010/4014913.html

Reserve Bank Governor Alan Bollard said: “The economy has entered its second year of recovery with growth becoming more broad-based. (準備銀行のアラン・ボラード総裁発言「景気回復は2年目に入り、その成長は更に広範に広がっている。」)

“The recovery in trading partner activity is continuing, with growth in Asia particularly strong. Along with ongoing growth in Australia and recovery in the United States, this has so far offset weak growth in some other export markets. Against this backdrop, New Zealand’s export commodity prices have increased sharply over the past few months, boosting export incomes. (「貿易取引相手国の景気回復は続いており、特にアジアは力強い。豪州の経済成長と米国の景気回復が続いていることより、他の幾つかの輸出市場の脆弱な成長が補われている。この様な背景により、この数ヶ月間でニュージーランドの商品輸出価格は急激に上昇し、輸出による収入を増加させている。」)

“In contrast to signs of global economic recovery there has been renewed turmoil in financial markets. Currently, we expect the main impact on New Zealand to come through continuing upward pressure on the cost of funds to the banking system. (世界経済の回復の信号に対し、金融市場では新たな混乱が発生している。現時点で、銀行システムにおける資金調達費用に引き続き上昇圧力がかかることが、ニュージーランドへの影響として主に予想される。)

“In New Zealand, growth of around 3? percent is expected this year and next. The main drivers of this outlook are higher export prices and volume growth, an improving labour market and a pick-up in residential and business investment. However, we expect households to remain relatively cautious, with the housing market and credit growth staying subdued. This moderate household spending contributes to some rebalancing in the economy. (ニュージーランドでは、今年と来年、経済成長は3.5%成長辺りが予想される。この見通しにおける主要なけん引役は、輸出価格の上昇とその量の拡大、労働市場の改善、住宅及び企業設備投資の増加である。しかしながら、住宅市場と信用成長が幾分抑制的であることから、家計は幾分慎重を維持したままと予想する。)

“Underlying CPI inflation is expected to track within the target range even as the economy expands further. That said, headline CPI inflation will be boosted temporarily by the announced increase in GST and other government-related price changes. Provided households and firms do not reflect this price spike in their wage and price-setting behaviours we do not expect a lasting impact on inflation. (更に経済が拡大したとしても、潜在的な消費者物価指数の上昇見通しは、物価目標の範囲で推移すると予想する。政府によるGST(財・サービス税)の引き上げや、政府による価格変更の発表により、一時的に消費者物価上昇率が加速するかもしれない。家計や企業は、この様な価格の急変に対し、賃金や価格を見越した生活行動について、インフレに最終的に影響を与える動きは予想していない。)

“Given this outlook and as previously signalled, we have decided to begin removing some of the monetary policy stimulus that is currently in place. The further removal of stimulus will be reviewed in light of economic and financial market developments.(この様な見通しと前回の発表で信号を発していたことにより、我々は現在の状況における金融政策による緩和を幾分縮小し始めることを決定した。更なる緩和の縮小は、経済や金融市場の行方に照らし合わせて再検討される。)

“The fact that bank funding costs are higher, long-term interest rates are higher than short-term interest rates, and a greater proportion of borrowers use floating rate mortgages should all reduce the extent to which the OCR will need to be increased relative to previous cycles.”(銀行の資金調達コストが高くなっているという事実や、長期金利は短期金利よりも高いということ、借り手の多くの割合が、変動金利によるモーゲージの借入を行っていることから、政策金利の引き上げの必要性については、前回の引き上げサイクルと比べて、小さいものとなるだろう。)

Key graphs - 90-day rates and the OCR
http://www.rbnz.govt.nz/keygraphs/Fig7.html


送信者 備忘録とかそういうの


《ニュース備忘録》

【ロイター】
英中銀が政策金利を0.5%で据え置き
2010年 06月 10日 21:48 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15771720100610

【ロイター】
ECB、政策金利を1.00%に据え置き
2010年 06月 10日 21:16 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15771020100610

【ロイター】
鉄スクラップ価格が急落、懸念される欧州経済危機の波紋
2010年 06月 10日 19:11 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15770420100610
関東鉄源協同組合の渡辺淳理事長は「春先から中国が買わなくなった。(日本の主要な輸出先である)韓国向け輸出は続いているが、哨戒艦沈没以降の通貨ウォン安もあり量は減少している。そして欧州や中東向け鉄鋼輸出拠点であるトルコでスクラップ価格が下落したことも響いている」と指摘した。

【ロイター】
中国の国際収支、大幅な黒字が続く見通し=外為管理局
2010年 06月 10日 18:14 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15768420100610

【ロイター】
ホンダ、中国自動車工場の通常操業を11日に再開
2010年 06月 10日 17:17 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15768020100610

【ロイター】
豪追加利上げ圧力高まる、5月就業者数は予想上回る大幅増
2010年 06月 10日 14:28 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15764220100610

【ロイター】
1─3月期実質GDP2次速報は年率+5.0%に上方修正
2010年 06月 10日 11:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15760320100610

【ロイター】
ポルトガル議会、緊縮財政案を可決
2010年 06月 10日 11:24 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15760120100610

【ロイター】
NZ中銀が2.75%に利上げ、市場の動向で追加も
2010年 06月 10日 08:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15756620100609

【ロイター】
EU・IMFの支援第2弾は確実=ギリシャ財務相
2010年 06月 10日 01:48 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15753020100609

【ロイター】
緊急融資制度を活用する計画ない=ポルトガル財務国庫長官
2010年 06月 10日 01:09 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15752420100609

(6月9日)機械受注改善継続

6月9日は機械受注が発表された。設備投資の先行指標となる船舶・電力を除く民需は前月比+4.0%と2ヶ月連続のプラスとなった。1-3月期は前期比+2.9%、4-6月期見通しは前期比+1.6%であり、機械受注の基調判断については「機械受注は、持ち直しの動きが見られる。」と、前回の「機械受注は、下げ止まっている。」から文言を上方修正した。外需が前月比-3.7%と減少に転じたことで、海外経済の減速が懸念されるため、完全に安心できる状況ではないが、引き続き注意が必要と言える。

機械受注統計調査報告
平成22年4月実績
平成22年6月9日
経済社会総合研究所
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/1004juchu.html

平成22年4月の機械受注実績
(( 概要・PDF形式 ))
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/juchu/1004gaiyou.pdf


送信者 備忘録とかそういうの


《ニュース備忘録》

【ロイター】
インタビュー:公募増資を軸に資本増強=新生銀次期社長
2010年 06月 9日 19:35 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15751120100609

【ロイター】
消費税率引き上げ時期の予測、2014年度が最多=調査
2010年 06月 9日 18:37 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15749620100609

【ロイター】
ハンガリーの状況懸念せず、当局は迅速に行動を=IMF副専務理事
2010年 06月 9日 17:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15748720100609

【ロイター】
中国証券監督管理委員会、中国農業銀行のIPO計画を承認
2010年 06月 9日 17:41 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15748420100609

【ロイター】
スペインの銀行、欧州銀行間市場での資金調達が困難に=現地紙
2010年 06月 9日 16:25 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15746120100609
スペインのある貯蓄銀行の幹部は同紙に対し、「スペインの大手銀行だけはなんとか資金を調達できている。ただ、ドイツなど海外の国債を担保としており、スペインの国債は担保として受け入れられていない」と語った。

【ロイター】
EU全域でのネーキッド空売り禁止を検討すべき=独仏
2010年 06月 9日 15:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15744020100609

【ロイター】
FRBは9月までに利上げすべき=米地区連銀総裁
2010年 06月 9日 11:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15738520100609
米カンザスシティー地区連銀のホーニグ総裁は8日、米経済は回復過程にあり、連邦準備理事会(FRB)は夏が終わるまでに金利を1%に引き上げるべきとの考えをあらためて示した。

【ロイター】
銀行課税、G20で合意なければ欧州独自の方法で=EU財務相
2010年 06月 9日 11:29 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15738820100609

【ロイター】
EU統計局に監査権限、ブルガリアに調査団派遣へ
2010年 06月 9日 07:57 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15735520100608

【ロイター】
ハンガリー、財政赤字比率の目標達成に努力=首相
2010年 06月 9日 07:13 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15735020100608

【ロイター】
ハンガリーが経済行動計画発表、税制改革など柱
2010年 06月 9日 01:32 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15732720100608
現在17%と32%の2段階累進税率が採用されている個人所得税について、一律16%課税の導入を検討する。公務員給与に関する歳出の15%カットを目指し、給与に上限を設ける方針を示した。

【ロイター】
ストレステストの銀行別結果公表予定せず=オーストリア財務相
2010年 06月 9日 01:24 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15732520100608

【ロイター】
ストレステストの銀行別結果公表予定せず=オーストリア財務相
2010年 06月 9日 01:23 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15731820100608

(6月8日-2)菅総理大臣誕生


6月8日に菅直人民主党新代表が内閣総理大臣に就任した。鳩山首相は6月4日に閣僚の辞表を取りまとめ、菅直人衆議院議員が民主党代表に選出された時点で事実上の総理大臣となったわけだが、菅首相が総理大臣就任を8日に延ばしていた。天皇陛下が4~8日に葉山御用邸で静養される日程などを考慮したためとも言われているし、鳩山首相の任期を細川内閣よりも伸ばすためといううがった見方もある。組閣まで時間を掛けることによって、菅新総理が考える時間を取るためという見方もある。いずれも真実かもしれないし、それらしい作り話かもしれないが、国民にとっては大差の無い話だと思うが、いずれにしても一日も早く停滞した日本に政治の方向性を示して欲しい所だ。

【読売新聞】
8日の任命式までは鳩山内閣継続
2010年6月4日22時35分
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20100604-OYT1T00969.htm
菅新首相の任命式が終わるまでは、憲法71条に基づき、4日午前に総辞職した鳩山内閣が引き続き職務を執行する。新内閣発足までは鳩山内閣が危機管理対応にもあたるが、「政治空白が生じ、危機管理上、問題がある」との指摘もある。

 旧憲法下では、1923年8月24日の加藤友三郎首相の病死に伴う内閣総辞職(同26日)後、9月2日に山本権兵衛首相が組閣するまでの“空白”に、関東大震災(9月1日)が起きた例がある。
 任命式が8日になったことで、鳩山首相の在任期間は266日、現憲法下では6番目の短さとなる見通しだ。任命式が4日に行われていれば、鳩山首相の在任期間は262日となり、細川護煕首相の263日に1日及ばなかったはずだった。

【首相官邸】
菅内閣総理大臣記者会見
平成22年6月8日(火)
http://www.kantei.go.jp/jp/kan/statement/201006/08kaiken.html

【民主党】
2010/06/04
【両院議員総会 代表選挙】新代表に菅直人衆院議員を選出
http://www.dpj.or.jp/news/?num=18302
鳩山由紀夫代表の辞任に伴う、代表選挙が4日午前両院議員総会で行われ、新代表に菅直人衆院議員を選出した。

【民主党】
2010/06/08
強い経済、強い財政、強い社会保障へ 菅新総理が就任会見で
http://www.dpj.or.jp/news/?num=18331

組閣人事については5日に仙石官房長官と枝野幹事長が内定との報道が先行しており、この3人で人事構想が練られていたとの観測がある。「脱小沢」なのか、「非小沢」なのか、「反小沢」なのか、良くわからないが、小沢カラーを一掃することによって支持率の回復と、民主党に対する国民のイメージ刷新を考えていたと言えよう。ただし、仙石、枝野両者供に前原グループ(凌雲会)所属で、菅グループ内部からは両者は以前の代表選挙で菅さんを応援しなかったではないかなどといった論功行賞に絡む批判も出ている。

(首相指名を受けた翌5日、菅は仙谷、枝野と民主党本部に終日こもり、人事構想を練った。午後11時まで及び、官邸に戻った菅が会見でこの日決めた人事を明らかにした。要となる官房長官に仙谷、幹事長に枝野、国対委員長には代表のポストを争った樽床に決まった。)

送信者 備忘録とかそういうの

【毎日新聞】
2010年6月6日 東京朝刊
クローズアップ2010:「枝野幹事長」発表 「小沢離れ」象徴
http://mainichi.jp/select/opinion/closeup/news/20100606ddm003010147000c.html

しかし、一般的に改革派と見なされているような人々を閣僚に据え、永田町で古いと考えられている人たちと交代していることは、一般国民には受けやすいのかもしれない。問題は、これらの閣僚が本当に国民のためにしっかりとした政策を行っていけるかどうかである。事業仕分けなどに話題が集中し、実際には何も進んでいないということになれば、日本の将来は明るくない。

(6月8日)ブラジル前期比年率+11.2%成長!!

ブラジルが1-3月期実質GDPを発表した。前期比+2.7%、年率換算は11.2%成長だ。前年比は+9.0%と高成長を記録し、インフレ圧力が高まっている。第1四半期の鉱工業部門のGDPは14.6%、投資はGDP比26%とそれぞれ大幅に増加、鉱業並びに建設業を除く製造業は17.2%、建設業は14.9%とそれぞれ増加して、1995年以来の記録を更新した。この高成長が途切れないうち、バブルが生成されないうちに、適切な金融財政政策を実施し、過去の高インフレの時の経済混乱を再び引き起こさないことを期待したい。

GDP grows 2.7% in the first quarter of 2010 and reaches R$ 826.4 billion
06/08/2010
http://www.ibge.gov.br/english/presidencia/noticias/noticia_visualiza.php?id_noticia=1631&id_pagina=1


《ニュース備忘録》

【ロイター】
菅連立内閣が発足、新首相「経済成長には財政再建が必須」
2010年 06月 8日 19:54 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15729720100608
菅首相は会見で、目指す社会について「最小不幸の社会をつくること」と述べ、そのうえで日本経済再生の道について「強い経済、強い財政、強い社会保障を一体的に実現する」

【ロイター】
英国、財政面で厳しい課題を抱えている=フィッチ
2010年 06月 8日 19:51 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15729620100608

【ロイター】
一般的に円安は輸出にプラス、相場にあまり発言しない=新首相
2010年 06月 8日 19:04 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15728320100608
「円安は一般的に輸出にプラスで、輸出のウエートの高い日本経済にとってはプラスになると承知しているが、相場についてはあまり発言しない」

【ロイター】
夏前に野党側との年金改革案の協議目指す─スペイン経済相=ラジオ
2010年 06月 8日 18:10 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15727220100608

【ロイター】
中国政府、インターネット検閲を緩和しない方針強調
2010年 06月 8日 17:16 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15724020100608

【ロイター】
スイス政府、2010年の経済成長率予測を上方修正
2010年 06月 8日 16:17 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15725520100608

【ロイター】
金価格が最高値に迫る、リスク回避資金を呼び込む状況変わらず
2010年 06月 8日 15:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15723820100608

【ロイター】
情報BOX:一部東欧諸国に対する欧州系銀行のエクスポージャー
2010年 06月 8日 15:03 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15722320100608

【ロイター】
菅内閣の閣僚が正式決定、仙谷官房長官・野田財務相・荒井国家戦略相
2010年 06月 8日 13:34 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15720220100608

【ロイター】
ユーロ圏財務相会合、加盟国緊急融資制度の詳細で合意
2010年 06月 8日 12:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15719020100608

【ロイター】
ユーロ圏財務相が特別目的機関設立の詳細で合意
2010年 06月 8日 11:27 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15717120100608

【ロイター】
EU財務相、加盟国予算案の事前審査や早期制裁で合意
2010年 06月 8日 11:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15716820100608

【ロイター】
ハンガリー政府が歳出削減方針を表明
2010年 06月 8日 04:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15709920100607

【ロイター】
G20首脳会議で赤字削減の計画策定求める=カナダ財務相
2010年 06月 8日 04:19 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15710320100607

【ロイター】
1─5月のハンガリー赤字、通年目標の84.6%に=経済省
2010年 06月 8日 01:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15709820100607
ハンガリー経済省は、1─5月の公的部門の財政赤字(地方自治体を除く)が、通年目標の84.6%に達したと発表した。1─5月の同赤字は7362億フォリント(30億7000万ドル)。通年目標は8703億フォリント。

【ロイター】
英財政状況は予想以上に悪い=キャメロン首相
2010年 06月 8日 01:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15709520100607

(6月7日)ハンガリーの妄言

ハンガリーの政府高官による舌禍で、欧州金融市場が揺れている。切っ掛けは、ハンガリー地元紙ナピの電子版で、与党フィデス・ハンガリー市民連盟のコーシャ副党首が、ハンガリーの財政状況は予想より大幅に悪化しており、ギリシャと同じシナリオを避けられる見込みはわずかだと発言したことによる。これを受けて、6月4日にオルバン首相のシーヤート報道官が、ブダペストで、「ハンガリー経済が極めて深刻な状況にあるのは明白だ」と述べた。同報道官は、デフォルト(債務不履行)については1年半も前に社会党出身の当時のジュルチャーニ首相が言及していると指摘。「同氏はハンガリーのデフォルトが目前に迫っており、国際通貨基金(IMF)からの融資だけが同国を救うことができるとはっきり述べた」とし、「その点で(コーシャ氏の発言が)誇張されているとはまったく思わない」と語った。そして、ダメ押しに、「ハンガリーでは前政権がデータを改ざんした。ギリシャでもデータに手が加えられていた。ギリシャには決定的な瞬間が訪れた。ハンガリーはまだだ」と述べたことで、市場が恐怖に駆られたことが混乱の大原因になっている。

(文章は下記ニュースなどの抜粋により作成。特に、下記日経新聞はその敬意について詳しいので一読を勧める)

【ブルームバーグ】
ハンガリー:経済状況「極めて深刻」、デフォルト観測「誇張ではない」
2010/06/05 01:19 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920012&sid=aYFvb4CqDggU

【日経新聞】
[FT]ハンガリー新政権、高くついた不用意発言
(1/2ページ) 2010/6/9 0:00
http://www.nikkei.com/news/category/article/g=96958A9C9381959FE2EAE2E1E18DE2EAE2E4E0E2E3E2E2E2E2E2E2E2;at=ALL

【産経新聞】
ハンガリー不用意発言 世界市場に衝撃広げる
2010.6.7 20:00
http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/100607/fnc1006072001010-n1.htm

【SankeiBiz】
ハンガリー、一転危機否定 赤字削減目標は「達成可能」 (1/2ページ)
2010.6.8 05:00
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/100608/mcb1006080504007-n2.htm

背景を色々見ていると、5月の総選挙による政権交代によって、ガバナンス能力の低い政治指導者がトップに着いたことにより、不用意な発言が相次いでいることが混乱の原因のようだ。選挙の結果、フィデスが在野8年間の歳月を利用して、切れ目のない政権移行の計画を立ててこなかったことが露呈した。

 選挙で社会党を破ってから最初に開いた記者会見で、オルバン氏は信望の厚い中央銀行総裁、アンドラシュ・シモール氏に辞任してもらいたい意向を明らかにした。続いてフィデスの党幹部らは、ユーロ建ての消費者ローンを自国通貨フォリント建てに換えるという論議を呼ぶ計画を口にし、銀行や投資家の冷ややかな反応を招いた。

 また、ハンガリーの新議会は発足早々に外国に住むハンガリー系住民に国籍を与える大衆迎合的な法案を可決し、隣国スロバキアの怒りを買った。スロバキア南部の一部地域では、ハンガリー系住民が多数派を形成しているからだ。

フィデス党は選挙戦の最中、今年の財政赤字をGDP比3.8%に抑えるという社会党政権の目標は非現実的で、経済の実態を隠すものだと盛んに訴えており、政権獲得後はIMFとEUを説得し、現状より緩い目標の設定に同意してもらうことを期待していた。

 実際、幹部らは、算入されていない一部の要素を含めると、財政赤字は最大7.5%に拡大すると主張していた。

 しかし先週、ブリュッセルで、欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長はオルバン氏に向かって、ハンガリーは財政再建を継続しなければならないと明言した。フィデス党のオルバン首相は減税と景気てこ入れを公約に総選挙を制したものの、6月3日にはEUから財政赤字拡大の承認を取り付けられなかった。

そこでフィデス幹部らは、体面を保つとともに、さらなる緊縮財政の必要性を国民に納得させるために、経済に関する議論を後退させ始めた。

そして、冒頭の様に国内向けに体面を取り繕おうとしたハンガリー政府与党幹部が不用意な発言に走ってしまったのだが、その衝撃は予想外に広がった。ハンガリー通貨フォリントは急落し、低金利の外貨建て住宅ローンを組む同国民がローンを支払えなくなるとの不安心理に火が付いた。
 ハンガリー中央銀行や経済専門家は「ハンガリーの今年の財政赤字は国内総生産(GDP)の4・1%で、ギリシャの9・3%に比べてはるかに健全だ。来年の経済成長予測もGDP比で2・8%と底堅い」と、ギリシャで懸念されたデフォルトの恐れを否定。オルバン政権も火消しに務めたが、時すでに遅しだった。

ハンガリー前政権の経済統計操作疑惑に関する調査委員会の代表、ミハリー・バルガ氏は6月5日に記者会見し、EUとIMFが承認した財政赤字削減目標である対国内総生産(GDP)比3.8%は、歳出・歳入計画の修正を通じて「達成可能」だと述べ、懸念の打ち消しに努めた。同氏は1週間前には赤字は7%を超える公算との見通しを示していた。

そして、マトルチ経済相は6月7日に、「われわれは今年、3.8%の財政赤字水準を堅持する。IMFおよび欧州連合(EU)が合意した水準であり、ハンガリー政府が合意した水準でもある。従って、それについての疑問はない。われわれはこの数値を堅持する」と述べた。また、「緊縮計画の必要性がないことははっきりしている。一方、刺激的な財政パッケージを実施する選択肢もない。そのため、新政権は行動計画を策定する。歳出を削減し、一方で歳入を拡大する」と語った。同相は、今年の予算目標を達成するには、GDP比で1.0~1.5%の削減が必要になると指摘。同時に景気を支援する必要があるとの認識も示した。

この様に、発言が右往左往したことで、市場が混乱し、実力ベースではそれほど問題は無いかもしれないハンガリーだが、政府の信用は大きく失墜したと言える。

欧州委員会がハンガリーから提出された統計や政策プログラムに対して4月の27日に発表した評価レポートを見ると、財政収支の対GDP比は2009年に-3.9%、2010年は-3.8%と、ギリシャやスペインなどの南欧諸国や、英国やアイルランドの北西の島国のような悪い水準ではないし、IMFは定期的にハンガリーに対する政策指導を行ってきたという経緯もあるため、統計に誤りがあったとしてもそれほど大きなものにはならないだろうという意見が多い。

Council Opinion on the updated Convergence Programme of Hungary, 2009-2012
Brussels, 27 April 2010
http://ec.europa.eu/economy_finance/sgp/pdf/20_scps/2009-10/04_council/hu_2010-04-26_council_opinion_con_en.pdf

ハンガリーの財政見通し
           2008年  2009年  2010年  2011年  2012年
実質GDP      0.6     -6.7    -0.3    3.7     3.8
財政収支     -3.8     -3.9    -3.8    -2.8    -2.5
政府総債務残高 72.9     78.0    79.0    76.9    73.6
財政項目は対GDP比。

しかし、一度失われた信用を取り戻すのは容易ではない。ハンガリーは今回の騒ぎで大きなものを失ったと思う。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
1─5月のハンガリー赤字、通年目標の84.6%に=経済省
2010年 06月 7日 21:56 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15708220100607

【ロイター】
ポルトガル、債務の持続可能性を示す必要=新中銀総裁
2010年 06月 7日 21:46 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15708320100607
欧州中央銀行(ECB)理事会メンバーであるポルトガル中銀のコスタ新総裁は7日、就任演説で、ポルトガルは債務が持続可能であることを直ちに示す必要があると述べた。

【ロイター】
マニフェスト、消費税含む抜本税制改革を明記=新政調会長
2010年 06月 7日 21:36 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15708020100607

【ロイター】
ハンガリー、選挙後の財政見通しに懸念=フィッチ
2010年 06月 7日 21:33 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15708120100607

【ロイター】
ハンガリーの当局者発言、信用力にマイナス=ムーディーズ
2010年 06月 7日 19:06 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15707420100607

【ロイター】
ハンガリー政府は3.8%の財政赤字目標を堅持する=経済相
2010年 06月 7日 18:36 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15707320100607

【ロイター】
ハンガリー政府、銀行税導入と年金改革などを検討=ニュースサイト
2010年 06月 7日 18:28 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15707120100607

【ロイター】
景気の谷は09年3月と判定、回復力弱く踊り場的調整も
2010年 06月 7日 17:38 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15705120100607

【ロイター】
中国、政府調達含め海外企業を平等に扱う=商務相
2010年 06月 7日 17:03 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15705420100607

【ロイター】
欧州緊急支援策、SPVの詳細固まる=EU筋
2010年 06月 7日 14:41 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15703020100607

【ロイター】
中東欧諸国、政権交代や緊縮財政への懸念浮上
2010年 06月 7日 14:17 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15702620100607

【ロイター】
焦点:G20は財政再建の必要性を率直に認識
2010年 06月 7日 11:16 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15697920100607

【ロイター】
ギリシャの歳入、5月に前年比8%増加―財務相=現地紙
2010年 06月 7日 10:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15697120100607

【ロイター】
菅新首相、党役員・閣僚人事で最終調整
2010年 06月 7日 06:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15693420100606

【ロイター】
欧州の銀行のストレステストは近く終了=ECB総裁
2010年 06月 6日 11:23 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15690520100606

【ロイター】
G20、銀行税導入計画や銀行資本規制で合意なし
2010年 06月 6日 10:47 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15690020100606

【ロイター】
米財務長官、欧州の支援策と中国の改革への取り組みを評価
2010年 06月 6日 10:26 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15690320100606