6月19日土曜日に、中国人民銀行が人民元相場の柔軟化を発表した。5月24~25日の米中戦略対話、6月4~5日のG20財務大臣・中央銀行総裁会議を経ても、中国政府当局は人民元の上昇を容認してこなかった。その結果米国議会を中心に対中強硬派が台頭し始め、中国に対する外圧は徐々に高まっていった。
この前の6月16日に米下院歳入委員会のレビン委員長(民主党)は、中国の貿易・産業政策に関する公聴会の冒頭で米国の「忍耐は限界に達した」と発言し、「中国が行動せず、米政府がそれに対し迅速に対応しなければ、米議会が行動する」と述べた。対中強硬派と見られている民主党のシューマー議員は、9日の米中経済安全保障再考委員会で、中国の違法な為替と貿易慣行について、米財務省が是正を求めないことには、控えめに言っても失望している」と語り、報復関税を含む対中制裁法案の採決を提案していた。中国政府としては、これ以上の政治対立が起きないようにと配慮した結果であると言えよう。
18日の上海外国為替市場の人民元相場は、1ドル=8.8262元であったが、週明けの21日は0.42%の上昇となる6.7976元で引けた。しかし翌日の22日には6.8136元へと0.23%下落し、失望を買った。人民元相場の柔軟化開始はここからスタートするのだが、今後どれだけのペースで人民元の上昇が容認されてゆくかが注目だ。
【中国人民銀行】
Further Reform the RMB Exchange Rate Regime and Enhance the RMB Exchange Rate Flexibility
Submit Date:2010-6-19 19:00:00
http://www.pbc.gov.cn/english/detail.asp?col=6400&id=1488
【ロイター】
中国人民銀行の元相場柔軟化に関する声明全文
2010年 06月 21日 05:51 JST
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnTK867587420100620
Further Reform the RMB Exchange Rate Regime and Enhance the RMB Exchange Rate Flexibility「人民元相場メカニズムのさらなる改革と人民元相場の柔軟性強化」
In view of the recent economic situation and financial market developments at home and abroad, and the balance of payments (BOP) situation in China, the People´s Bank of China has decided to proceed further with reform of the RMB exchange rate regime and to enhance the RMB exchange rate flexibility. 人民銀行は、最近の国内外の経済状況および金融市場の動向、中国の国際収支の状況を踏まえ、人民元相場メカニズムの改革をさらに進め、人民元相場の柔軟性を強化することを決定した。
Starting from July 21, 2005, China has moved into a managed floating exchange rate regime based on market supply and demand with reference to a basket of currencies. Since then, the reform of the RMB exchange rate regime has been making steady progress, producing the anticipated results and playing a positive role. 中国は、2005年7月21日から市場の需給に基づき、通貨バスケットを参考にした管理フロート制に移行した。以来、人民元相場メカニズムは着実に前進し、想定した結果を生み、前向きな役割を果たしてきた。
When the current round of international financial crisis was at its worst, the exchange rate of a number of sovereign currencies to the U.S. dollar depreciated by varying margins. The stability of the RMB exchange rate has played an important role in mitigating the crisis´ impact, contributing significantly to Asian and global recovery, and demonstrating China´s efforts in promoting global rebalancing. 今般の国際金融危機が最悪期にあった時、多くの国の通貨の対ドル相場はさまざまな幅で下落した。人民元相場の安定性は、危機の影響を緩和する上で重要な役割を果たし、アジアおよび世界の経済回復に多大な貢献をし、世界的リバランスの促進に向けた中国の取り組みを示した。
The global economy is gradually recovering. The recovery and upturn of the Chinese economy has become more solid with the enhanced economic stability. It is desirable to proceed further with reform of the RMB exchange rate regime and increase the RMB exchange rate flexibility. 世界経済は徐々に回復している。中国経済の回復と拡大はより強固となり、安定性が増した。人民元相場メカニズムの改革をさらに進め、人民元相場の柔軟性を強化することが望ましい。
In further proceeding with reform of the RMB exchange rate regime, continued emphasis would be placed to reflecting market supply and demand with reference to a basket of currencies. The exchange rate floating bands will remain the same as previously announced in the inter-bank foreign exchange market. 人民元相場メカニズムの改革をさらに進めるにあたっては、引き続き市場の需給を反映し、通貨バスケットを参考とする。為替相場の許容変動幅は、銀行間為替市場で以前に発表した水準と変わらない。
China´s external trade is steadily becoming more balanced. The ratio of current account surplus to GDP, after a notable reduction in 2009, has been declining since the beginning of 2010. With the BOP account moving closer to equilibrium, the basis for large-scale appreciation of the RMB exchange rate does not exist. The People´s Bank of China will further enable market to play a fundamental role in resource allocation, promote a more balanced BOP account, maintain the RMB exchange rate basically stable at an adaptive and equilibrium level, and achieve the macroeconomic and financial stability in China. 中国の対外貿易は着実に均衡に向かっている。経常黒字の国内総生産(GDP)に対する比率は、2009年に大幅に低下した後、2010年初めから低下し続けている。国際収支は均衡に近づいており、人民元相場の大幅な上昇の根拠は存在しない。人民銀行は今後も、市場が資源の配分で基本的な役割を果たすことができるようにし、より均衡のとれた国際収支を促進する。人民元相場を適応できる均衡した水準で基本的安定を維持し、中国のマクロ経済および金融の安定の達成を図る。
一つ、ポイントを挙げるならば、2008年7月のリーマンショック前に、柔軟化を続けていた人民元相場は、何のアナウンスメントも無く再び事実上の固定相場に戻ったのだが、今回は発表文章の中で管理フロート制に移行したと宣言していることで、事実上固定相場だったことを認めたことなのだが、重箱の隅を突いても余り意味は無いか。
《ニュース備忘録》
【ロイター】
G20各国が赤字を半減させることを望む=カナダ首相
2010年 06月 19日 04:53 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15896420100618
【ロイター】
銀行のストレステスト、ソブリン債への圧力等を想定=関係筋
2010年 06月 19日 02:13 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15895520100618
ストレステストは欧州銀行監督委員会(CEBS)の下で各国の監督機関が実施する。ストレステストについては14日の7カ国(G7)財務相会議が発端という。
【ロイター】
スペイン、第3四半期にシ団通じ10年債を発行
2010年 06月 19日 01:41 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15895120100618
【ロイター】
スペインの緊縮財政措置、正しい方向を向いている=IMF
2010年 06月 19日 01:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15895720100618
【ロイター】
オバマ米大統領、G20首脳に金融改革と財政強化求める
2010年 06月 19日 01:34 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15894720100618
オバマ大統領は「力強く均衡の取れた世界経済を支えるために、柔軟な為替レートが示すシグナルが必要だ」と指摘。中国人民銀行の張濤・国際局長は、人民元政策は中国の国家としての決定であると発言。朱光耀・財政次官も、人民元は世界ではなく中国が検討すべき問題であるとの見解を示している。
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