2010年6月28日月曜日

(6月22日-2)財政運営戦略

6月22日に政府は財政運営戦略を閣議決定した。

【国家戦略室】
財政運営戦略
http://www.npu.go.jp/policy/policy01/index.html#g

この中で、財政健全化目標については以下のような目標を立てている。その中で、「国債発行額の抑制財政健全化目標を確実に達成するとともに、財政健全化への積極的な姿勢を市場に向けて発信し、市場の信認を確保する観点から、平成23 年度の新規国債発行額について、平成22 年度予算の水準(約44 兆円)を上回らないものとするよう、全力をあげる。」と、来年度の予算編成における借金の上限を明記した。ただし、末尾には『・・・とするよう、全力をあげる。』とのなぞの文言が挿入されている。

(1)収支(フロー)目標

残高目標を達成するために、以下のとおり、収支の改善を図ることとする。

① 国・地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)について、遅くとも2015 年度までにその赤字の対GDP比を2010 年度の水準から半減し、遅くとも2020 年度までに黒字化することを目標とする。

② 国の基礎的財政収支についても、遅くとも2015 年度までにその赤字の対GDP比を2010 年度の水準から半減し、遅くとも2020 年度までに黒字化することを目標とする。

③ 2021 年度以降も下記(2)の残高目標にかかる達成状況を踏まえつつ、財政健全化努力を継続する。

(2)残高(ストック)目標

2021 年度以降において、国・地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させる。

国と地方のプライマリーバランスの改善時期を2015年までに半減、2020年までに黒字化と明記しているが、このころには総理大臣は変わっているだろう。国と地方の公債等残高の対GDP比を安定的に低下させるのが2021年度以降としているが、今から10年後はどうなっているか良くわからない。

閣議決定の対象ではないが、同日に内閣府が発表した「経済財政の中長期試算」では、以下のようなシナリオが描かれている。潜在成長率は2020年に2.3%まで上昇。実質成長率とほぼ一致する。一方で、名目成長率はデフレを脱却したと仮定されることから、2020年は3.6%成長。ちなみに、消費者物価指数は2011年度に前年比±0%になるとの設定である。これは、先週18日に発表された新成長戦略でも2011年に消費者物価指数を2011年度中にはプラストの目標を掲げている。他方、財政再建を進めると言っているわけだから、おのずとデフレ脱却は日銀の金融政策に頼らざるを得ない。

成長戦略シナリオ
         09年度 10年度 11年度 12年度 13年度 15年度 20年度 23年度
潜在成長率     0.6    0.7    0.8    1.0    1.2    1.7    2.3    2.4
実質成長率    -2.0    2.6    2.0    2.6    2.4    2.1    2.3    2.4
名目成長率    -3.7    1.6    1.7    2.9    3.0    3.4    3.6    3.6
消費者物価    -1.7   -0.4    0.0    1.0    1.4    1.9    1.9    1.8
失業率       5.2    4.8    4.4    4.2    3.9    3.4    3.1    3.0
長期金利      1.3    1.6    1.7    2.2    2.4    3.1    4.6    5.1

基礎的財政収支 -38.5  -30.8 -27.0   -23.9  -19.9  -15.0   -13.7   -11.7
財政収支     -48.6   -42.0 -38.2   -36.0  -33.5  -33.4   -50.0   -62.1
公債残高     782.2   827.1 868.9  908.7  947.0 1,024.7 1,270.7 1,463.8
対GDP比
基礎的財政収支  -8.1   -6.4   -5.5   -4.7   -3.8    -2.7   -2.1   -1.6
財政収支     -10.2   -8.7   -7.8   -7.1   -6.4    -6.0   -7.6   -8.4
公債残高     164.3  171.1 176.7 179.7  181.7  184.3  192.2  199.0

国の一般会計
一般歳出     102.6   92.3   92.9   94.5   97.0   106.2   137.6   160.7
基礎的財政収支対象経費
           83.3   70.9   70.9   70.9   70.9    73.9   84.0    90.7
国債費       19.3   20.6   22.0   23.5   26.0    32.3   53.6    70.0
税収等       49.1   48.0   43.7   47.5   51.1    57.2   67.7    75.3
税収        36.9   37.4   39.6   42.9   46.5    52.5   62.6    69.9
その他収入    12.2   10.6    4.1    4.5    4.6    4.7    5.1    5.4
歳出と税収等との差額
           53.5   44.3   49.2   47.0   45.9   49.0   69.9    85.4

その他、長期金利が2012年度には2.2%となっているが、消費者物価指数が1%のプラスの伸びとなっていることが前提とは言え、なかなかそこまでの金利上昇は難しいのではないかと、今の時点では思ってしまう。基礎的財政収支の赤字も2010年度が30.8兆円、2011年度が27.0兆円、ここに国債費などの利払や債務償還費用を除いた財政収支は2010年度が42.0兆円の赤字、2011年度が38.2兆円の赤字。公債残高は2015年度には1000兆円を超え、2023年度には対GDP比で200%に接近する。
緩やかな氷山衝突前のタイタニック号のようだが、氷山までの距離は度の程度か、経験則が無いので難しい。

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