2010年6月13日日曜日

(6月10日-3)ECB金融システム問題

ECBが政策金利を発表した。前回から変更はなし。サプライズも無し。

10 June 2010 - Monetary policy decisions
http://www.ecb.int/press/pr/date/2010/html/pr100610.en.html
At today’s meeting the Governing Council of the ECB decided that the interest rate on the main refinancing operations and the interest rates on the marginal lending facility and the deposit facility will remain unchanged at 1.00%, 1.75% and 0.25% respectively. (本日、ECBの政策委員会は主要リファイナンスオペ金利を1.00%、限界貸出金利を1.75%、預金金利を0.25%にそれぞれ据え置くことを決定した。)

トリシェ総裁の記者会見では、国債買入れについて、何処の国債を買い入れたのか、何時まで続けるのかと言うことに注目が集まっているが、明確な回答は無かった。

【ロイター】
トリシェECB総裁の会見要旨
2010年 06月 11日 01:03 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-15772920100610

ユーロ圏の経済見通しが同時に発表されている。特徴としては、2010年の実質GDP見通しは1.4%~1.6%へと、前回の0.4%~1.2%から上方修正されている点だ。ただし、中身を見ると総固定資本形成など内需が下方修正されている一方で、輸出が大きく上方修正されており、欧州財政危機によるユーロ安効果が外需を通じて景気を押し上げると言うシナリオを描いているようだ。よって、ちょっと前向きとは言い難い。

10/06/2010
EUROSYSTEM STAFF MACROECONOMIC PROJECTIONS FOR
THE EURO AREA
http://www.ecb.int/pub/pdf/other/eurosystemstaffprojections201006en.pdf

前年比%        2009年  2010年    2011年
HICP(消費者物価)   0.3  1.4 ~ 1.6   1.0 ~ 2.2
実質GDP         -4.1  0.7 ~ 1.3   0.2 ~ 2.2
 民間消費        -1.2  -0.2 ~ 0.4  -0.2 ~ 1.6
 政府消費        2.6  0.3 ~ 1.3  -0.3 ~ 1.1
 総固定資本形成  -10.8  -3.4 ~ -1.2  -2.1 ~ 2.7
 輸出(財サービス)  -13.2  5.5 ~ 9.1   1.1 ~ 7.9
 輸入(財サービス)  -12.0  3.8 ~ 7.0   0.4 ~ 6.8

Standing facilities
http://www.ecb.int/mopo/implement/sf/html/index.en.html
Use of the standing facilities (Figures as at 10/06/2010, EUR millions)
Use of the marginal lending facility: 735
Use of the deposit facility: 365,904

最近、ECB関連で特に注目されているのが、翌日物預金準備残高で、6月10日時点で3659億ユーロとなっている。間接的な表現になるのだが、ユーロ圏内の銀行間金融市場の状況悪化が反映されていると言え、通常であれば金融機関同士の資金貸借が活発に行われることによって、余剰資金が資金需要のある金融機関へと貸し付けられることで、市場では資金が効率的に移動し、ECBへ資金が預け入れられると言うような資金のダブつきは縮小する。しかし、金融機関が貸付先の金融機関に疑念を持ち始め、クレジットラインを絞ったり、貸付を止めたりすることで、金融機関には手元流動性を厚くしておこうと言うインセンティブが働き始める。それがECB預金になってあらわれると見られ、この翌日物預金残高の増加は、ユーロ圏の金融システムについての問題が高まっていると言うバロメーターになっているようだ。


送信者 備忘録とかそういうの



欧州のこういった問題は、抜本的な対策が採られない限り、短期的に解決して行くとは考え難い。ストレステストの実行と公表により、問題を洗い出した上で、資本注入などの対応が行われれば、金融システムは正常化に向かってゆくだろうが、金融機関への支援に対する非難や、政治的な指導力の欠如などを加味すると、長く付き合っていかないといけない問題なのかもしれない。

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