2010年6月13日日曜日

(6月5日)G20財務相・中央銀行総裁会議

6月5日に韓国の釜山でG20が開催された。欧州財政危機が深刻化し始め、金融市場の不確実性が拡大していく中で、どのような問題提起がなされるかに関心が集まった。

20か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明(仮訳)
[2010年6月5日 於:韓国・釜山]
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/g20_220605.htm

文章を抜粋すると、「深刻な財政課題を抱える国々は、健全化のペースを加速させる必要がある。我々は、幾つかの国による2010年に赤字を削減し財政の枠組み・制度を強化するとの最近の発表を歓迎する。」というように、ソブリンリスクについての注意喚起が促されており、財政緊縮策の推進はデフレ圧力になりえる。これを相殺するためには、マクロ的に金融緩和策を選択することになるだろう。

先行きについては、25日からカナダで金融サミットが開催されるが、「我々は、OECD、ILO及び他の国際機関からのインプットを受けたIMFによる政策シナリオ案及び世界銀行による中間報告を検討した。両者はともに、4月に示した我々のガイダンスに従って用意されたものである。これらの報告を基礎として、我々は協力的な相互評価のプロセスを実施し、より強固で、より持続可能で、より均衡のとれた成長を達成するための一連の政策オプションを策定した。我々は、これらのオプションを首脳による検討のために、2010年6月のトロント・サミットに提出する。「フレームワーク」の順調な進捗を継続するため、我々は各国主導の協力的な相互評価のプロセスとソウル・サミットに至るまでの我々の作業の予定表を改良している。」ということで、トロントサミットでは政策オプションが提示され、議論の俎上に上ることが示された。

一方で、金融については長いブロックの段落を割き、以下の様に言及している。

『4. 我々は、これまでの進展に加え、我々の努力を強化し、金融の修復及び改革を加速するというコミットメントを確認した。それゆえ、我々は、  ・ 金融の修復のさらなる進捗が世界経済の回復に極めて重要であると合意した。このために、銀行のバランスシートのより高い透明性やさらなる強化、金融機関のより良いコーポレート・ガバナンスが求められる。
 
・ 我々の改革のアジェンダの中核として、より強固な資本・流動性基準について迅速に合意に達することにコミットし、バーゼル銀行監督委員会の作業を完全に支持し、同委員会に対し、2010年11月のソウル・サミットまでに、銀行資本の量と質の双方を改善し、過度なレバレッジとリスク・テイクを抑制する国際的に合意されたルールの提案を求めた。我々の銀行規制当局が、グローバルな金融システムの将来の停滞に金融機関が耐えうるよう十分強固な資本・流動性規制ルールを策定することが、極めて重要である。我々が合意したように、これらのルールの実施は、2012年末までを目標に、金融情勢が改善し景気回復が確実になった時点で段階的に行われることとなろう。我々は、水準や段階的な実施をそれぞれ調整する定量的及びマクロ経済への影響度調査の進捗を歓迎する。我々は、合意されたルールの国内実施にあたって、透明で調和した方法で協働することにコミットする。これらの新たなルールの実施は、強力な監督で補完されるべきである。
 
・ システム上重要な金融機関におけるモラルハザードを減少させる必要性を強調し、全ての金融機関について、実効的な破たん処理の手段及び枠組みを国際的に合意された原則に基づいて策定するという我々のコミットメントを強化した。我々は、トロント・サミットへのFSBの中間報告を期待している。  

・ 金融セクターが、銀行システムの修復または破たん処理の資金を提供するための政府の介入が行われた場合には、それに関連するあらゆる負担に対し公平かつ実質的な貢献をすべきことに合意した。このため、様々な政策手法があることを認識しつつ、我々は、納税者を保護し、金融システムのリスクを減少させ、与信の流れを好況及び不況時に保護するという必要性を反映した原則を、各国の状況及びオプションを勘案し、公平な競争条件の促進に資するよう、策定することに合意した。IMFは、トロント・サミットに最終報告を提出する。  

・ ヘッジファンド、信用格付会社、報酬慣行、店頭デリバティブの透明性や、規制・監督を、国際的に整合的で無差別な方法で改善する強力な措置の実施を加速することにコミットした。我々はFSBに対し、これらの分野における国及び地域の実施をレビューし、グローバルな政策の一体化を促すよう求めた。また、我々は、一次産品市場の機能及び透明性を改善することにコミットした。  

・ 単一の質の高いグローバルな会計基準を実現することの重要性を表明し、国際会計基準審議会及び米国財務会計基準審議会がその目的のための努力を倍増することを強く促した。我々は、国際会計基準審議会が利害関係者の関与をさらに改善することを慫慂した。  

・ FSBメンバー間の国際的な評価や相互審査への我々のコミットメントを再確認した。我々はまた、支援を提供することを含め、非協力的国・地域に対処し、基準遵守を確保するための措置・仕組みを活用することに改めてコミットする。我々は、税の透明性及び情報交換についてのグローバル・フォーラムによる報告、相互審査プロセスの進捗、全ての国に開かれた情報交換のための多国間の仕組みの開発を歓迎した。我々は、資金洗浄やテロ資金供与に対する闘い、戦略上の欠陥を有する国・地域の公表リストの定期的な更新についての金融活動作業部会の作業を完全に支持する。我々は、全ての国・地域における健全性に関する情報交換と国際協力の基準の遵守に関するFSBの評価プロセスの実施を歓迎した。  

・ 国際的な企業と金融機関の行動に関する適切性、健全性及び透明性に関する統合的な原則の広範な適用を進めるために協働する必要性を認識した。 』

様々なメニューが抽象的に語られているが、この金融規制というものは具体性がなかなかつかみずらいため、実際の影響度や、何処が賛成、反対をしているのかが良くわからない。銀行課税については欧州を中心に賛成論があるが、カナダは強行に反対していると言うし、レバレッジ規制、資本規制などは、どの程度の水準が適切なのかと言う数字についても全く漏れてこない。

欧州の財政危機の最中、金融システムにも緊張が高まっているため、正直言うと国際会議で語られている金融規制は当面実行できないのではないかとも思える。

他方、人民元についての議論も行われたようだが、声明文には盛り込まれなかったようだ。この点についても米中を中心とした政治的な駆け引きが続いているのだろう。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ハンガリー経済の内外均衡は大幅改善=中銀
2010年 06月 5日 09:56 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15686720100605

【ロイター】
欧州の債務危機、米雇用へ影響せず=財務省次官補
2010年 06月 5日 09:47 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15686620100605

【ロイター】
ハンガリー、ギリシャのような危機に陥るリスク=首相報道官
2010年 06月 5日 08:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15686320100604
ハンガリーのオルバン首相の報道官は4日、同国がギリシャのような債務危機を避けられる見込みはわずかとした与党幹部発言について、誇張ではないとの考えを示した。「ハンガリーでは前政権がデータを改ざんした。ギリシャでもデータに手が加えられていた。ギリシャには決定的な瞬間が訪れた。ハンガリーはまだだ」と述べた。ハンガリーでは4月の総選挙でオルバン氏が率いる中道右派のフィデス・ハンガリー市民連盟が勝利し、8年ぶりに政権交代が実現した。

【ロイター】
ホンダ、中国部品工場でスト妥結と発表
2010年 06月 5日 08:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15686520100604

【ロイター】
中国農業銀行、IPOで最大476億株の発行を計画
2010年 06月 5日 04:16 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-15683920100604

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