2010年5月30日日曜日

(5月24日-2)スペインのカハ

金融危機のような問題が起きると、それまで全く知らなかったようなことまでニュースが出てきて、事後的に問題を知ることになる。サブプライム問題がそうであり、CDO、CDOスクウェアー、モノライン、ABCPなど、問題が生じるたびにそこに焦点を当てたレポートが行われる。欧州は米国サブプライム問題に端を発した金融危機によって傷を負ったが、その傷の膿みは出きっておらず、隠された部分が多いという見方も多かった。ギリシャで財政問題が発生して以降、ソブリンリスクが意識される中で、世界はリスクに敏感になっている。ギリシャはサブプライムとは別に、自国政府が財政状況をごまかしていたことが危機の引き金になったのだが、ここに来てスペインの問題がクローズアップされてきた。

5月22日に中央銀行のスペイン銀行が貯蓄銀行カハスールを管理下においたと発表した。

PRESS RELEASE
Madrid, 22 May 2010
The Banco de España replaces the directors of CajaSur
http://www.bde.es/webbde/GAP/Secciones/SalaPrensa/NotasInformativas/10/Arc/Fic/presbe14e.pdf

発表文章には“CajaSur accounts for scarcely 0.6% of the assets of the Spanish banking system, whose soundness will not be in the slightest affected by this situation.”(カハスールはスペイン銀行システムにおける資産の0.6%程度でしかなく、この状況によって銀行システムの安定性には殆ど影響は無い)と示すなど、金融システムに対する懸念を払拭しようとの思いが透けて見える。

このカハ問題がニュースで沢山報じられ始めたのが24日頃からのようだ。たとえばこのマーケットウォッチの記事など。

【MarketWatch】
May 24, 2010, 4:39 p.m. EDT
Spanish savings banks unveil merger pact to access aid
Four-way 'caja' combination to create lender with 135 billion euros in assets
http://www.marketwatch.com/story/giant-caja-combination-unveiled-to-tap-aid-2010-05-24?dist=afterbell

「Caja(カハ)」とは、これらのニュースを見るまで全然知らなかったのだが、スペイン特有の貯蓄銀行で、スペインで「カハ」として知られる貯蓄銀行は同国銀行業務のほぼ半分を牛耳っているようだ。カハスールの場合は、取締役20人のうち過半数がカトリック教会関係者で占められ、そのうち6人は神父だったそうだ。

スペイン銀行が3月26日に発表した金融安定性報告書を見ると、カハスールについてはこのころから問題だったと取り上げられており、特にこの24日に発表されたニュースが市場を刺激する内容だったとは思えないのだが、とりあえず何らかの材料を市場が探していたところにぶつかってしまったと言う不幸な交通事故が起きたと感じている。また、同じくこの報告書では、建設不動産事業への預金金融機関のエクスポージャーの大きさが示されている。

26/03/2010
Financial Stability Report (March 2010
http://www.bde.es/informes/be/estfin/completo/estfin18e.pdf

預金取り扱い金融機関の建設不動産関連企業へのエクスポージャー(2009年12月末)
         合計(億ユーロ) 貸出し比(%) 担保保全(億ユーロ) 保全率(%)
貸出額     4450億ユーロ
うち注意     428億ユーロ    9.6%     177億ユーロ     41.4%
うち懸念     590億ユーロ   13.3%      76億ユーロ     12.9%
破綻       597億ユーロ   13.4%     130億ユーロ     21.8%
減損処理     40億ユーロ    0.9%      40億ユーロ    100.0%
問題債権合計 1655億ユーロ   37.2%     423億ユーロ     25.6%

カハについては6月末までの整理統合を政府は進めようとしているが、こういった何らかの問題を材料にして、金融システム不安が再燃する懸念がある。

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