2011年1月30日日曜日

(1月20日)トルコ利下げ

トルコが政策金利を発表した。政策金利である1週間物の金利は利下げしたものの、貸出しと借入のワイダーバンドのレポ金利は据え置き。トルコの金融政策はよく分からない。その経済背景がよく分からないからなのかもしれないが、ニュースなどに伝え聞くところによると、中国などの新興国同様、ホットマネーの資金流入がある中で、インフレ抑制のための利上げはその資金流入を加速させてしまうかもしれないリスクがあるため、金利ではなく量を絞ることに焦点を当てる面があるというのが、中国やブラジルなどの準備率操作による金融政策なのだが、トルコは貸出金利と預入金利の対になっている金利に幅をもうけ、これを大きく広げていると言うことに特徴がある。トルコの短期金融市場に接しているわけではないし、そもそもトルコ経済を深く見ているわけではないので、この技術的な金融政策が実務上何処まで機能しているかは、全く分からない。

しかし、一応、ビジュアル的に自分でトルコの状況をある程度知覚するために、1月25日に発表された1月分のインフレーション・レポートから図表を幾つかピックアップして、その雰囲気をつかんでみる。

【TCMB】
DECISION OF THE MONETARY POLICY COMMITTEE
Meeting Date: January 20, 2011
http://www.tcmb.gov.tr/yeni/announce/2011/ANO2011-01.pdf
The Monetary Policy Committee (the Committee) has decided to set the short term interest rates as follows:(金融政策委員会は短期金利を以下の様に決定した。)

a) One-week repo rate (the policy rate) is reduced from 6.5 percent to 6.25 percent,(政策金利である1週間物のレポ金利を6.5%から6.25%に引き下げ)

b) Overnight Interest Rates: Borrowing and lending rates are kept constant at 1.50 percent and 9 percent, respectively. The interest rate on borrowing facilities provided for primary dealers via repo transactions is kept constant at 8 percent.(翌日物金利を借入金利は1.5%、貸出金利は9%にそれぞれ据え置かれる。レポ取引を通じてプライマリー・ディーラーに供給する貸出し金利は8.0%に据え置き。)

c) Late Liquidity Window Interest Rates (between 4:00 p.m. – 5:00 p.m.): Borrowing rate is kept constant at 0 percent, while lending rate is kept constant at 12 percent.(遅い時間(午後4時~5時)の流動性供給金利について、預入金利は0%に据え置き、貸出金利も12.0%に据え置き。)

Recent releases have been consistent with the outlook presented in the October Inflation Report. Economic activity continues to recover amid strong domestic demand, yet, industrial capacity utilization rates remain below their pre-crisis levels due to weak external demand. Although employment conditions continue to improve, unemployment rates remain at high levels. Therefore, aggregate demand conditions do not exert upside pressures on inflation. Inflation is expected to decline significantly in January, remain below the end-year target of 5.5 percent during the first quarter, and reach the year-end target after displaying some fluctuations starting with the second quarter.(最近発表された指標は、10月のインフレーション・レポートに沿ったものである。経済活動は強い国内需要により回復が続いているが、産業の稼働率は海外需要の弱さによって、金融危機以前の水準に止まったままだ。雇用状況は引き続き改善が続いているものの、失業率は高水準のままだ。よって、総需要の状況は、インフレ上昇圧力を及ぼすものではない。インフレは1月に大きく低下し、第1四半期は年末の目標である5.5%の物価上昇率を下回ったままとなり、第2四半期から幾分振れはするものの、戻ってゆくと予想される。)

The impact of the measures taken in December to contain credit supply will be seen in the forthcoming days. Additional macroprudential measures to restrict credit expansion, to be taken before the next meeting, will provide more flexibility for monetary policy. In this respect, additional hikes in required reserve ratios for short term liabilities will be necessary.(12月から採用された信用供給手段の影響度は、今後現れてくるだろう。信用拡張を制約するための追加的なマクロプルーデンシャルな手段は、次の会合までに行われ、金融政策により柔軟性を与えるだろう。これらによって、追加的な短期負債(流動性の高い預金)に対する準備比率の引き上げが必要となるだろう。)

In order to preserve both financial stability and price stability, a policy mix of a lower policy rate coupled with higher reserve requirements emerges as an optimal policy mix under the current conditions. In this respect, the Committee assesses that, the net impact of the measures taken—and to be taken in the future—will be restrictive.(金融の安定と物価の安定の両者を確保するために、低い金利と高い準備率との政策の組み合わせは、現在の状況下で最適な政策の組み合わせである。これらによって、政策委員会は政策手段の純粋な影響、現在行われ、将来行われるだろうものを精査し、制約的になるだろうと考える。)

It should be emphasized that any new data or information may lead the Committee to revise its stance.(強調すべきことは、新しいデータや情報によっては、政策委員会はそのスタンスを変更する可能性がある。)


図6の左が政策金利。罰則的な貸出金利の上限は、上記声明文にも書かれている通り、9%と高い。遅い時間の貸出金利は12%とかなり高いので、準備預金達成のための資金調達インセンティブは大きい。右側の図は満期ごとの準備預金率だが、短期間のものは準備率が非常に高く、長期のものは準備率を下げることで、ホットマネーを排除し、中長期的なマネーに便益を与える構図となっている。



図2は消費者物価の寄与度であるが、食料品の物価押上げがトルコでは大きいことが示されている。

図18は物価目標とGDPギャップの見通しの図。

その他にも、トルコは原油価格の上昇によるエネルギー輸入の増加が経常赤字を拡大させているといった図もある。声明文などからは、国内需要が強い(そのため、輸入が大きかったり、食料価格を押し上げる一側面になっているのかもしれないが)と記されているが、ホットマネーや欧州経済の混乱と言った不確実性があるなかで、どのような金融政策が遂行されるか、引き続き注目したい。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ギリシャ経済、第3四半期からプラス成長を回復できる=開発相
2011年 01月 20日 21:32 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-19121320110120

【ロイター】
中国GDPが日本上回り世界2位へ、過度の依存は日本経済リスクに
2011年 01月 20日 19:05 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19120120110120

【ロイター】
ユーロ圏財務相、債務国の負担軽減へ一部債務償却を検討=報道
2011年 01月 20日 18:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19119420110120

【ロイター】
ダボス会議、相互関連するリスクの結合が世界の脅威に=主催者
2011年 01月 20日 17:27 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19117920110120

【ロイター】
中国国家主席に人民元相場は過小評価と伝えた=米大統領
2011年 01月 20日 14:00 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19111020110120

【ロイター】
チュニジア新内閣に国民から不満の声、改造求めデモ相次ぐ
2011年 01月 20日 13:29 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19110620110120

【ロイター】
ブラジル中銀が利上げ、新総裁体制で引き締めサイクル入り
2011年 01月 20日 10:32 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19105620110120

【ロイター】
英豪BHPの10─12月期鉄鉱石生産は過去最高
2011年 01月 20日 09:08 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-19104520110120

【ロイター】
米中首脳会談後の記者会見での発言要旨
2011年 01月 20日 07:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19102020110119

【ロイター】
米中、総額450億ドルの契約で合意=米政府高官
2011年 01月 20日 05:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19100820110119

【ロイター】
IMF、健全性審査で英大手銀に詳細情報要請へ=関係筋
2011年 01月 20日 05:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19100720110119

【ロイター】
スイスフラン高による影響緩和策、一部延長する可能性=経財相
2011年 01月 20日 02:44 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-19099120110119

【ロイター】
IMF、EUストレステストに先立ち英大手行の審査へ=関係筋
2011年 01月 20日 00:58 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19098920110119

【ロイター】
ドイツ政府、ギリシャの債務再編の可能性に備えた対応策を検討
2011年 01月 20日 00:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-19098820110119

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