2011年5月29日日曜日

(4月18日)S&P米国格付け見通しをネガティブに

S&Pが米国の格付け見通しを引き下げ、米国財務省がそれにコメントをしている。S&Pは今後2年間の先行きを考えると、その中でAAA格を満たさない可能性があると指摘しているが、抜本的な財政再建への道筋は、来年の大統領選後まで確定しないだろうとの見解を表明している。つまりは、ネガティブアウトルックではあるが、大統領選とその後の早い時期に表明されるであろう財政再建策を見て、評価すると述べている。つまりは、それまでは前提条件である経済財政の状況が余程変わらない限り、格下げは無いだろうと言っているようなものである。

米国では、債務残高上限引き上げが決まっていないなどの問題があり、中間選挙で財政健全化を強く推し進めようとしているティーパーティに所属する共和党議員らの強い態度によって、議会がなかなかまとまらない状況が続いている。このような財政に関する意思決定の乱れに対しても一石を投じていると言えよう。ただ、仮に1段階下がったとしてもAA+であり、格付けは高い部類に入るので、米国国債の適格担保としてのクオリティは維持されるだろうが、問題は市場がどう認識するかである。たぶん、それ程問題は無いのだろうけど。

日経新聞によれば、オバマ大統領はS&Pのレポートについて、16日時点でガイトナー財務長官から説明を受けていたようだ。

【U.S. Treasury】
Statement of Treasury Assistant Secretary for Financial Markets Mary Miller on Credit Rating Agency Announcements Today
4/18/2011
Page Content
http://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/tg1143.aspx
Treasury Welcomes S&P Affirmation of AAA Rating, Moody’s View of Recent Fiscal Announcements by Both Parties as a Positive ‘Turning Point’ for US; Stresses Need for Action on Debt and Deficits(米国財務省はムーディーズが最近の民主・共和両党の財政政策発表に対する見解を「転換点」と前向きに捉え、財政の債務と赤字に行動が必要だと強調した上でAAA(トリプルA)格を確認したことを歓迎する。)

WASHINGTON – The U.S. Department of the Treasury today released the following statement from Assistant Secretary for Financial Markets Mary Miller on announcements by Standard and Poor’s (S&P) and Moody’s today:(ワシントン:米国財務省は本日、S&PとMoody'sの本日の発表に対して、メアリ・ミラー金融市場担当次官補の以下の声明を発表した。)

“This morning, S&P affirmed the AAA rating of the U.S., but emphasized the importance of timely bipartisan cooperation and action on fiscal reform. In addition, Moody’s commented today that ‘we view the changed parameters of the debate, with broadly similar goals as to government debt levels, as a turning point that is positive for the long-term fiscal position of the U.S. federal government.’(今朝、S&P社は米国に対するAAA格を確認したが、財政再建に向けて、超党派によるタイムリーな協力と行動の重要性を強調した。加えて、Moody'sは「われわれは、広い意味で同じような政府債務水準の目標であるが、長期的な米国連邦政府の財政状況を前向きにする転換点として議論とする変数を変更した。」)

“As the President said last week, addressing the current fiscal situation is well within our capacity as a country. He has initiated a bipartisan process that will allow us to make progress on a balanced approach to restoring fiscal responsibility. The U.S. economy is strengthening as it emerges from the recent recession. Both political parties now agree that it is time to begin bringing down deficits as a share of GDP. (大統領は先週、現在の財政状況は国家としての我々の許容範囲内に十分あると演説した。彼は財政に対する責任を復元させるバランスの取れた手段を我々が追及できるようにするため、超党派の議論の進行を開始した。)

“S&P assumes that the U.S. will enact ‘a comprehensive budgetary consolidation program – combined with meaningful steps toward implementation by 2013,’ but we believe S&P’s negative outlook underestimates the ability of America’s leaders to come together to address the difficult fiscal challenges facing the nation.”(S&Pは米国が、2013年までの実施に向けた重要は行程を含む包括的な財政整理統合計画を実行すると予想するが、我々はS&Pのネガティブ見通しが、国家が直面する難しい財政の挑戦に一緒に取り組む米国の指導者達の能力を過小評価していると考える。)

【S&P】
'AAA/A-1+' Rating On United States of America Affirmed; Outlook Revised To Negative
Publication date: 18-Apr-2011 21:01:33 HKT
http://www.standardandpoors.com/ratings/articles/en/ap/?assetID=1245302886884

【S&P】
米国のアウトルックを「ネガティブ」に変更、格付けは据え置き
2011-04-19 16:06:00
http://www2.standardandpoors.com/portal/site/sp/jp/jp/page.article/1,0,0,0,1204866612603.html
アウトルック変更
新:     旧:
ネガティブ 安定的
格付け据え置き
※AAA 自国通貨・外貨建て長期ソブリン格付け
※A-1+ 自国通貨・外貨建て短期ソブリン格付け
*ソブリン格付け「長期/長期格付けのアウトルック/短期」のみを記載。個別債務格付けは、S&Pの英語ウェブサイトの

「Find a Rating」を参照。※付きの格付けは「無登録格付け」、詳細は本稿末尾の「S&Pの格付けについて」を参照。

米国のソブリン格付けを※「AAA/A-1+」に据え置き。

米経済は柔軟かつ多様化され、効果的な金融政策がインフレ圧力を抑制しつつ経済成長を下支えしてきたのに加え、引き続き米ドルが世界の基軸通貨として評価されていることが、米国に独特の対外流動性を与えている。

長期格付けが「AAA」の他のソブリンと比較して、財政赤字が大きく、債務が増加しており、これらに対処する道筋も明らかでないとの見方から、米国のソブリン格付けのアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更。

S&Pは米政権と議会が2013年までに中長期的な財政再建策で合意できないリスクは大きいと考えており、仮にそれまでに合意が得られず、有意義な施策に着手できなければ、米国の財政状況は他の「AAA」のソブリンより脆弱になるとみている。

(2011年4月19日、東京=S&P)スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(以下「S&P」)は18日、米国の長期ソブリン格付けを※「AAA」に、短期ソブリン格付けを※「A-1+」にそれぞれ据え置き、長期格付けに対するアウトルックを「安定的」から「ネガティブ」に変更した。

米国の格付けは、高水準の歳入と、多様化され柔軟な米国経済に基づく。慎重かつ信頼性のある金融政策がインフレ圧力を抑制しつつ成長を下支えしてきたことも、格付けに反映されている。格付けには、米ドルが世界の通貨の中でも極めて重要な通貨として評価されることで独特のメリットを享受しているとのS&Pの見方も反映されている。

S&Pではこうした強みは、現時点では米国の経済・財政面での大きなリスクと多額の対外債務に勝っているとみているものの、今後2年間に、「AAA」の格付けで耐えられると想定される水準の信用リスクを完全には相殺できなくなる可能性があると考えている。

先の金融危機が始まってから2年以上が経過しているが、米政権と議会は財政悪化に歯止めをかけたり、長期的な財政圧力に対処する方法について、いまだに合意に至っていない。

2003年から2008年にかけて、米国の一般政府財政赤字の対GDP比率は2-5%の間で推移した。同比率はすでにほとんどの「AAA」のソブリンの水準を大きく上回り、2009年には11%超に達し、まだ回復に向かっていない。

「ネガティブ」のアウトルックは、今後2年以内に少なくとも3分の1の確率で米国の長期格付けを引き下げる可能性があるとS&Pが考えていることを示している。アウトルックは、中長期的な財政問題に対処する時期と方法を巡る政治的折衝が少なくとも2012年の大統領選挙後まで長引くリスクが高まっているとのS&Pの見方を反映している。

今後、財政再建を巡り何らかの妥協が図られ、オバマ大統領が4月13日に発表した12年以内に4兆ドルの財政赤字削減を目指す計画に近い赤字削減策で合意し、2013年までの実施に向けて明確な道筋がつけられるなど、包括的な財政再建策で合意した場合には、アウトルックを「安定的」に戻す。反対に、そのような合意が得られなかったり、いかなる理由にせよ財政がさらに大幅に悪化した場合には、格下げとなる場合がある。

【ウォールストリート・ジャーナル】
S&P、米国債格付け見通しを「ネガティブ」に変更
2011年 4月 19日 2:47 JST
http://jp.wsj.com/US/node_224408
S&Pはこの日、米議員らが財政課題への対処方法で2013年までに合意できない可能性があるという実質的なリスクがみられると表明した。そうなれば、米国の財政状況は「AAA」の格付けを有する他の諸国よりも脆弱となる見通し。S&Pは、「12年秋の大統領選後まで中期財政戦略に関して米議会での交渉が合意に達しない可能性があるという著しいリスクが存在すると確信している。その場合、関連措置を盛り込む最初の予算案は14年度(13年10月1日~14年9月30日)予算となる可能性があり、それ以降にずれ込む可能性もあると確信している」と続けた。

【ブルームバーグ】
米国の「AAA」格付け、見通し「ネガティブ」に変更-S&P(1)
2011/04/19 04:59 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=atnB3t8dRtuE
S&Pは18日のリポートで、「中・長期的な財政への試練にどう対応するかについて、米国の政策当局が2013年までに合意に達しないかもしれないという重大なリスクがあると当社は考えている」と説明。「もしその時までに合意に達せず、有益な措置が開始されない場合は、当社の見方では、米国の財政状況は他の『AAA』格付け国と比較し大きく悪化することになる」と続けた。 今回の見通し下方修正は、議員らに対し、財政赤字の縮小や連邦債務の削減で合意に至らなければ「AAA」格付けが脅かされると通告した格好だ。S&Pは、米国の債務が13年までに対国内総生産(GDP)比で84%に増加すると見込んでいる。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ギリシャ、債務再編のシナリオを完全に排除=政府報道官
2011年 04月 18日 21:26 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20680020110418

【ロイター】
2次補正の財源に「復興再生債」発行へ=与野党政調会長会談
2011年 04月 18日 21:24 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20679720110418

【ロイター】
中国国営企業の第1四半期利益、前年同期比28%増
2011年 04月 18日 21:22 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-20679920110418

【ロイター】
ギリシャ債務再編めぐる選択肢、いかなる協議も行われていない=欧州委
2011年 04月 18日 21:20 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20680120110418

【ロイター】
キューバで13年ぶりに共産党大会、国民は世代交代を歓迎
2011年 04月 18日 17:23 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20678220110418

【ロイター】
フィンランド議会選で反EU政党躍進、党首はポルトガル支援変更言及
2011年 04月 18日 17:21 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20677520110418

【ロイター】
震災復興の責任から逃げない、財政再建含め道筋つける=菅首相
2011年 04月 18日 17:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20677620110418

【ロイター】
ギリシャ、EUとIMFに債務再編を要請=報道
2011年 04月 18日 16:57 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-20676920110418

【ロイター】
アイルランドの銀行を2段階格下げ=ムーディーズ
2011年 04月 18日 15:55 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-20674120110418

【ロイター】
中国とニュージーランド、250億元の通貨スワップ協定を締結
2011年 04月 18日 15:35 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-20673420110418

【ロイター】
ナイジェリア大統領選、現職ジョナサン氏が当選確実
2011年 04月 18日 14:44 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20672620110418

【ロイター】
サウジが3月の原油生産を縮小、市場は供給過剰との見方で
2011年 04月 18日 12:47 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-20670020110418

【ロイター】
IMF国際通貨金融委、米財政問題は世界経済の回復脅かすと警告
2011年 04月 18日 12:10 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20668520110418

【ロイター】
イエメン当局発砲で22人負傷、反体制派「退陣交渉の余地なし」
2011年 04月 18日 11:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20666020110418

【ロイター】
中国人民銀行が預金準備率引き上げ、インフレ抑制へ
2011年 04月 18日 08:18 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-20662320110417

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