3月17日、日本銀行が金融政策を発表した。
2010年3月17日
日本銀行当面の金融政策運営について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k100317.pdf
1.日本銀行は、本日、政策委員会・金融政策決定会合において、次回金融政策決定会合までの金融市場調節方針を、以下のとおりとすることを決定した(全員一致)。無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.1%前後で推移するよう促す。
政策金利の変更は行わず、この点はサプライズなし。ただし、固定金利方式の共通担保資金供給オペレーション(固定金利オペ)について、資金供給の規模が10兆円から20兆円に増えるという。
2010年3月17日
日本銀行固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの運用についてhttp://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/un1003d.pdf
○ 日本銀行では、本日の政策委員会・金融政策決定会合において示された方針を踏まえ、固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションの運用について、原則として下記のとおりとすることとしましたので、お知らせします。
(1)期 間 3か月
(2)オファー頻度 週2回
(3)資金供給額(1回当たり) 8千億円程度
○ これにより当オペの資金供給規模は、現在の10 兆円程度から、20 兆円程度に増加することとなります。
10兆円から20兆円に増額というと、量的緩和時に見たような数字が目標という分かりやすい構図に捕らえられがちであるが、この辺りは日銀もある程度の見栄えを選択した結果、錯覚を覚悟した上で数字を発表して来たのではないだろうか。一般の人が金融政策で、しかも技術的な金融政策オペレーションについて深く知っているはずが無い。数字で表記することは分かりやすい手段であるが、この効果があるかどうかを知る術は、ある程度金融政策について知っている人で無いと無理だろう。
以前、共通担保資金供給オペにおける固定金利方式の発表があった12月1日、白川総裁はこの10兆円という金額について
『それから「10 兆円」についてですが、これは概ね10 兆円を目指すということであり、これ以上でもこれ以下でもなくきっかり10 兆円と決めているのではなく、大よその目途です。概ね週1回、1回あたり8千億円という期間3か月のオペを実行すると、大体3か月で残高が10 兆円程度に達します。現在の金融市場の状況において十分な長めの資金を供給するうえでそれくらいが必要であると判断しました。』
ということである。一ヶ月が4週間だとして、3ヶ月だと大体12~13週になる。これに8千億をかければ、10兆円前後になる。3ヶ月後次の第1週からは、3ヶ月終了に伴う償還分のロールオーバーになるので、ここで残高は頭打ち。これを週2回にしたわけだから、その倍の20兆円くらいが市場に出回るということだろう。
金利入札であるならば、金利の高いものから入札額が決定されてゆくのという方法だろうと分かるのだが、固定金利の入札はどうやるのかと思ったら、「固定金利方式の場合には、借入希望額により、募入を決定します。ただし、日本銀行は、適当と認める場合には、各応募の全部または一部を募入外とすることがあります。―― 例えば、固定金利方式の場合において、全入札参加者の借入希望額の合計が貸付予定総額を上回るときは、貸付予定総額を各入札参加者の借入希望額に応じて按分し、貸付金額を決定します。」ということなので、まぁ按分狙いに入札金額が膨れるのではないかと始めは思った。
共通担保オペ(全店貸付)および共通担保オペ(本店貸付)の取引概要
http://www.boj.or.jp/type/exp/ope/opetori12.htm
しかし、足もとの短期金融市場オペレーションの結果をみると、6兆円弱程度の応札額である。昔、別件だがFB(3ヶ月もの政府短期証券)の入札で100兆円入札みたいな按分狙いの入札があったが、そこまでヒドイ按分狙いの入札にはなっていない。この辺は、日本の金融市場は業者間の連係プレーが上手く機能しているからと言えるのだろうか・・・
その要因としては、共通担保資金供給の金利入札オペレーションを含む短期金融市場オペレーションの入札結果で、一般的な金利入札物の按分・全取りレートが0.10%に収束しつつあることが挙げられる。去年の11月頃は0.13%くらいが按分・全取りレートであったので、0.03%(弱)程度入札レートが低下したことになる。この結果、共通担保資金供給オペレーションは、固定金利入札も、金利入札もほぼ似たようなものになってしまったということが挙げられ、資金調達側に取ってみれば0.10%で資金を借りることができるため、結果として大差は無いものになってしまった。
ただ、当然の結果であるが、見栄えとしては日銀にはうれしい結果が徐々に出始めており、それは日銀のバランスシートが膨らんでいるということだ。世界の主要中央銀行がバランスシートを拡張する中で、日銀だけは資金需要の低迷や、国債買入れ増額に渋ちんであったことから、バランスシートの拡大が限定的であった。日銀は過去の量的緩和時期に、ただただ中央銀行のバランスシートを拡張させても実体経済への影響は非常に限定的だったことを知っている。それが、今回政府に追い立てられる形で追加オペレーションを決定したとはいえ、対外的には説明しやすい結果になっている。本心では、「こんなことやってもねぇ~」とシニカルに考えている人も多いかもしれないし、糊塗の一環を抜け切れない範囲のことなのかもしれないが、まぁ変なところから湧き出る風圧を減圧できるくらいの防風林を育てることは出来たのかもしれない。
日本銀行勘定
兆円 日銀資産 うち共通担保 長期国債 発行
総額 資金供給 銀行券
資産負債 資産 資産 負債
09年 1月 119.5 26.3 42.5 76.8
2月 122.2 30.4 43.6 76.9
3月 123.9 32.7 42.7 76.9
4月 114.8 26.6 44.3 78.3
5月 118.8 31.2 46.1 76.4
6月 109.8 24.3 45.2 76.7
7月 114.7 29.7 46.8 76.4
8月 117.2 32.9 48.5 76.2
9月 116.3 30.2 46.3 75.9
10月 111.4 25.4 48.0 76.2
11月 117.3 29.6 49.6 76.3
12月 122.5 32.5 48.2 81.0
10年 1月 122.4 34.6 49.9 76.9
2月 126.8 39.5 51.6 77.1
《ニュース備忘録》
【ロイター】
新オペ拡充で景気・物価改善を支援、低金利維持を明確化=日銀総裁
2010年 03月 17日 19:34 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14391020100317
【ロイター】
デフレ克服に向けたさらなる金融緩和を歓迎=鳩山首相
2010年 03月 17日 19:30 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14391320100317
鳩山首相は「基本的に歓迎する」とし、「今回のデフレ克服に向けて、ある意味でのさらなる金融緩和の方向は(政府として)期待している方向だ。そう思って歓迎する」と評価した。
【ロイター】
2010年の中国のGDP・CPI見通しを上方修正=世銀
2010年 03月 17日 14:00 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14384520100317
【ロイター】
新型オペの供給額を20兆円に引き上げ=日銀金融政策決定会合
2010年 03月 17日 13:08 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14381320100317
【ロイター】
焦点:疑問点多いギリシャ支援合意、ユーロ圏は明確な説明回避
2010年 03月 17日 12:47 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14381020100317
【ロイター】
米上院の超党派議員団、人民元問題で対中制裁法案提出
2010年 03月 17日 10:50 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14378020100317
米議員の間では、人民元は25─50%過小評価されており、中国企業が対米輸出において価格面で不当に有利な立場にあるとの見方が大勢。
【ロイター】
EU、ギリシャ支援枠組みで基本合意
2010年 03月 17日 09:19 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14374720100317
【ロイター】
人民元切り上げ要求、中国の安定の重要性を無視=UNCTAD報告
2010年 03月 17日 02:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14368920100316
【ロイター】
ギリシャの格付けを確認、ウオッチリストから除外=S&P
2010年 03月 17日 02:44 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14368820100316
S&Pは今回の決定について、ギリシャ議会が3月5日に承認した財政赤字削減措置が背景にあると説明。
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