2010年2月7日日曜日

(2月2日)豪州予想外の金利据置き

豪州準備銀行が金融政策を発表したが、予想外に政策金利の据え置きであった。経済統計は好調で特に住宅市況がよくなっているにもかかわらず、政策金利を据え置いたことが市場にとってサプライズで、豪ドル安を誘発している。市場予想は0.25%の利上げとなる4.0%を織り込んでいたにもかかわらず、発表されたのは3.75%であった。

Number 2010-02
Date 2 February 2010
Embargo For Immediate Release
Statement by Glenn Stevens, Governor: Monetary Policy Decision
http://www.rba.gov.au/media-releases/2010/mr-10-02.html

文章を読んでいると、ブルームバーグが要約しているのでそれを参考にしながら訳を見ると。

【ブルームバーグ】
スティーブンス豪中銀総裁:政策金利据え置きは「適切」-声明
2010/02/02 14:11 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a7fstF6mcInk

At its meeting today, the Board decided to leave the cash rate unchanged at 3.75 per cent.(本日の会合で、理事会は(政策金利の)キャッシュレートを3.75%に据え置くことを決めた。)

The global economy is growing, and world GDP is expected to rise at close to trend pace in 2010 and 2011. The expansion is still likely to be modest in the major countries, due to the continuing legacy of the financial crisis, resulting in ongoing excess capacity. In Asia, where financial sectors are not impaired, recovery has been much quicker to date, though the Chinese authorities are now seeking to reduce the degree of stimulus to their economy. Global financial markets are functioning much better than they were a year ago. Credit conditions nonetheless remain difficult in the major countries as banks continue to face loan losses associated with the period of economic weakness. Concerns regarding some sovereigns have increased.(世界経済は成長しており、世界のGDPは2010、11年に通常のトレンドに近いペースで伸びる見込みだ。一方、主要国では金融危機の影響を引きずることにより過剰設備の状態が続くため、景気拡大は引き続き穏やかなものになる可能性が高い。 金融セクターに損傷の出ていないアジアでは、これまでの回復ペースがかなり速いが、中国政府当局は現在、国内経済に対する刺激策の度合いを減らそうとしている。世界の金融市場は、1年前よりもはるかにうまく機能している。しかしながら、主要各国の信用状況は困難ななままで、銀行部門は引き続き経済の弱さが続くことによって、貸出しの損失計を迫られるであろう。)

In Australia, economic conditions have been stronger than expected, after a mild downturn a year ago. The effects of the fiscal stimulus on consumer demand have now faded, but household finances are being supported by strong labour market outcomes and a recovery in net worth. Public infrastructure spending is now boosting demand, as is an upturn in housing construction. Investment in the resources sector is strong. The rate of unemployment appears to have peaked at a much lower level than earlier expected.(オーストラリアでは、1年前の穏やかな落ち込みに続き、景気が予想より力強く推移している。財政出動による消費者需要への影響はすでに後退したが、家計の金融環境は力強い労働市場や純資産の持ち直しによって支えられている。住宅建設の上向きとともに、公共インフラ向け支出が需要を押し上げている。天然資源を取り扱う部門における投資は堅調。失業率は以前に予想されていたよりも、低い水準で最悪期を付けたようだ。)

と、ここまで訳を借りながら追加で加筆してきたが、経済全般については、豪州経済が好調の一言といって良いほどの書きぶりになっている。他方、何らかの引っ掛かりを見つけるとするならば、海外主要国経済が完全に復調したとは言い難く、中国政府当局の方針転換をリスクとして意識していると言うことだろうか。

続く物価部分などは飛ばして、最後の金融政策の部分を見ると、

With the risk of serious economic contraction in Australia having passed, the Board had moved at recent meetings to lessen the degree of monetary stimulus that was put in place when the outlook appeared to be much weaker. Lenders have generally raised rates a little more than the cash rate over recent months and most loan rates have risen by close to a percentage point. Since information about the early impact of those changes is still limited, the Board judged it appropriate to hold a steady setting of monetary policy for the time being.(豪州における一連の深刻な景気収縮リスクが過ぎ去ったため、理事会は最近の会合で、景気見通しがかなり悪かった時期に導入した刺激措置を解除してきた。貸出手金融機関は概して、最近キャッシュレートを若干上回る金利の引き上げを行い、殆どの貸出金利は1%近く上昇した。こうした変更がもたらした初期の影響についての情報がなお限定的なため、理事会は当分の間政策金利を据え置くことが適切と判断した。)

Interest rates to most borrowers nonetheless remain lower than average. If economic conditions evolve broadly as expected, the Board considers it likely that monetary policy will, over time, need to be adjusted further in order to ensure that inflation remains consistent with the target over the medium term.(しかしながら、殆どの借り手にとって金利は(これまでの豪州経済から考えて)平均水準よりも低いままである。理事会はこれからの金融政策について、物価上昇率が中期的な目標に沿うように調整していく必要があると考える。)

このように、政策金利の引き上げをここで一旦打ち止めとした理由は、政策金利の引き上げによってその他の金利の引き上げへと作用が波及してきているからとのロジックが展開されている。09年10月6日に政策金利を0.25%引き上げるまでは、豪州の政策金利は3.0%であって、今回の据え置きまで累計0.75%の金利引き上げが行われてきた。この間のその他の金利の変動については、

金利(%)            09年    10年
                 9月     1月   上昇幅
一般の住宅ローン      5.80     6.65    0.85
モーゲージ・マネージャー  5.45     6.25    0.80
消費者ローン        14.15     14.65    0.50
ホームエクイティー      5.90     6.75    0.85
担保付中小企業貸付    7.10     7.85    0.75

・・・と、そんなに上がっているのかというような結果になっている。表面上のロジックはそうなのだが、やはり一番初めに見たように中国政府当局の動向とその影響を重視しているのが本音ではないかと見られる。豪州準備銀行の過去を見ても、利上げ局面では金利引き上げをずっと連続して打ち出してくるというよりは、途中で小休止を挟みながら政策金利を引き上げているというのが過去の経緯であり、そうやって遠くから眺めてみたなら、今回の政策決定多少サプライズではあったが、政策や経済の転換点であるとは言えない。最後の一文で引き続き政策金利引き上げ方向での照準調整を行っていることを示しているため、暫くしたら利上げ再開となるだろう。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ポルトガルは大幅な経済調整が必要=中銀総裁
2010年 02月 2日 23:17 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13678720100202

【ブルームバーグ】
ドイツ経済研究所:IMFにギリシャ救済委ねるべきだ-ウェルト紙
2010/02/02 19:56 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920014&sid=aqAoGkzJ7aZI

【ロイター】
日銀には適切かつ機動的な運営で経済の下支えを期待=財務相
2010年 02月 2日 16:47 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13674620100202

【ロイター】
2011年度以降の子ども手当、基本的にはマニフェスト通りに=首相
2010年 02月 2日 15:54 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13671020100202

【ロイター】
情報BOX:2011年度米予算教書の骨子
2010年 02月 2日 14:07 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13669320100202

【ブルームバーグ】
豪中銀:政策金利を3.75%で据え置き-市場の予想外(Update2)
2010/02/02 13:29 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920000&sid=aMPDrHfFIZS4

【ロイター】
米商業不動産市場、一段と悪化の可能性=S&P
2010年 02月 2日 10:35 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13663020100202

【ロイター】
米大統領、予算教書で国際企業の税制改革案を縮小
2010年 02月 2日 10:05 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13662320100202

【ブルームバーグ】
オバマ米大統領:富裕層と企業から1.9兆ドルの増税目指す-予算教書
2010/02/02 07:07 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920011&sid=aYi5ouyTaSnE

【ロイター】
トヨタ、アクセルペダル修理で包括的対応策を発表
2010年 02月 2日 07:39 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-13659020100201
1日から停止している米国・カナダ6工場での対象車種の生産は、8日にも再開する見通しとした。第一段階の修理で、トヨタには少なくとも2億5000万ドルの保証料負担が発生するとみられている。

【ブルームバーグ】
ドイツ:スイス銀行口座の盗まれた情報購入か、2国間関係が悪化も
2010/02/02 03:16 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=ass.b06iaHoQ

【ブルームバーグ】
米予算教書:オバマ政権、多国籍企業の租税回避禁止策盛り込まず
2010/02/02 01:35 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920011&sid=aisDLPtaE16E

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