2010年10月24日日曜日

(10月5日)日銀包括緩和!!

日銀が新たな金融緩和策を打ち出した。


「包括的な金融緩和政策」の実施について(13時38分公表)
2010年10月5日
日本銀行
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc10/k101005.pdf

日本銀行がここまで踏み込んだのは、「日銀は対応が後手後手」というレッテルによってかなり追い詰められていたからと言える。大きなきっかけは8月10日の金融政策であったと言える。円高が進む中で日銀は8月10日に政策金利の据え置きを決定した。他方、同日のFOMCではFRBがバランスシートの規模を維持するためにMBSの償還金見合いで国債の買入が決定された。その結果、対ドルでの円高が更に進み、1ドル=85円割れが実現する。

その結果として政治からの圧力が強まり、結果として8月12日に総裁談話、8月30日に臨時会合による緩和策発表と立て続けに対策を発表する羽目になった。(その間、菅-白川会談に向けた根回しが行われたり、8月19日時点で日銀臨時会合の噂が出たり、8月23日には菅-白川電話会談が行われたりと、様々な紆余曲折があった)

この一連の経緯によって日銀は金融政策で後手に回ることに大きな危機感を覚え、学習したと言える。それは、後手に回ることによって、経済・物価指標が手遅れになるというものではなく、日銀の存在自体に圧力がかかると言う反作用である。(9月の24日には白川総裁辞任報道まで市場に出回った)

9月15日に6年半ぶりとなる為替介入が行われ、同時に日銀からは総裁談話が発表され、為替政策に日銀が組み込まれてゆく。そして、9月21日のFRBの追加緩和示唆がドル安円高に追い討ちを掛けた。その結果、当面の日銀の金融政策は、物価を金科玉条の如く金融政策の対象とした行動から、目線が明らかに変化しており、為替や国内経済への悪影響へと政策変数が移っている。

今回打ち出された金融政策は「包括緩和」と命名され、(1)金利の変更、(2)時間軸効果の強調、(3)資産買入の同時実施を表明している。

【日銀の発表】

(1)金利誘導目標の変更(全員一致)

無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0~0.1%程度で推移するよう促す(公表後直ちに実施)。

(2)「中長期的な物価安定の理解」に基づく時間軸の明確化

日本銀行は、「中長期的な物価安定の理解」に基づき、物価の安定が展望できる情勢になったと判断するまで、実質ゼロ金利政策を継続していく。ただし、金融面での不均衡の蓄積を含めたリスク要因を点検し、問題が生じていないことを条件とする。

(3)資産買入等の基金の創設

国債、CP、社債、指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)など多様な金融資産の買入れと固定金利方式・共通担保資金供給オペレーションを行うため、臨時の措置として、バランスシート上に基金を創設することを検討する。このため、議長は、執行部に対し、資産買入等の基金の創設について具体的な検討を行い、改めて金融政策決定会合に報告するよう指示した。

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(1)金利の変更については、0.1%であったものを0~0.1%としただけであって、短期金融市場参加者以外殆ど影響が無いと見られる。顕微鏡の世界での小幅修正であり、マスコミは「実質ゼロ金利」と大々的に発表しているが、0.1%も殆ど実質ゼロ金利である。日銀は、この解釈のされ方について、多少の誤解はあろうとも良い誤解であるなら放置している感じがする。

(2)の時間軸の明確化であるが、物価の安定が展望できる情勢になるまで実質ゼロ金利と言われても、当面この低金利が続くという市場の見方から、時間軸効果は限定的(何を効果と認めるかも議論が必要だが)であろう。ただ、今後のとこについて考える上で、翌日の白川総裁の記者会見における質疑応答は丁寧にフォローする必要がある。

「物価については中長期的な物価安定の理解があるわけです。この中長期的な物価安定の理解は2%以下のプラスで、大勢は1%程度が中心というものです。私どもは、この中長期的な物価安定の理解を念頭に置きながら、先々の経済・物価情勢を点検していき、・・・(中略)・・・機械的な公式があり、この公式で金融政策が運営できるのであれば、そもそも中央銀行はいらないわけです。私どもとして、ただ今申し上げた判断を毎回行っていく、ただその時に判断の根拠となる物価の数字は、中長期的な物価安定の理解であるということを改めて確認し、明確にしたということです。」

白川総裁は上記の様に発言しており、消費者物価が1%程度に接近して、あるいはこれを超えてゆくような物価が見通せる時期にならない限り、低金利を続けると言っているようなものだ。

そして、市場が最も注目したのがこの(3)の資産買取である。資産買取基金については5兆円で、買入対象資産は[1]長期国債、国庫短期証券が3.5兆円、[2]CP、ABCP、社債が1兆円程度、そして残りの[3]5千億程度がETF(指数連動型上々投資信託)、J-REIT(不動産投資信託)である。ここで一つ条件が付いており、長期国債、社債は残存期間1~2年程度とされている。この程度の金額であるならば、既に毎月1.8兆円の国債買入れが行われているし、短期金利はほぼゼロに張り付いているので殆ど効果が無い。

やはり注目は5000億のETFとJ-REITである。

東証売買代金(億円)
    国内
    ETF   REIT
1月  1,754  1,871
2月  1,331  1,654
3月  1,868  2,031
4月  1,907  2,366
5月  1,958  1,970
6月  1,249  1,963
7月  1,184  1,830
8月  1,017  1,527
9月  1,481  1,682
(注:立会市場とToSTNeT市場の合計)

日本銀行
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2010年10月5日(火)
午後3時半から約60分
http://www.boj.or.jp/type/press/kaiken07/kk1010a.pdf

総裁記者会見では、「本措置は、短期金利の低下余地が限界的となっている状況を踏まえ、金融緩和を一段と強力に推進するために、長めの市場金利の低下と各種リスク・プレミアムの縮小を促していくものです。こうした措置は、中央銀行にとって異例の措置であり、特に、リスク・プレミアムの縮小を促すための金融資産の買入れは、異例性が強い措置です。」と述べている。この『リスク・プレミアム』はかなりのキーワードと言える。

リスク・プレミアムについて白川総裁は「ETFあるいはETFを構成する株式、REITの場合には、エクイティなので金利ではありませんが、利回りをリスク・フリー金利と比較するとリスク・プレミアムと表現できます。そういうものを総称して、リスク・プレミアムという言葉を使っています。」と定義を与えた後、『ただ、私どもとしては、日本銀行がこうした市場で買入れを行うことによって、さらに幅広い投資家の買いが増えていけば、価格の形成にプラスの影響が出て、実体経済にも方向としてプラスの影響が及んでいくと考えました。』と明確に述べている。つまりは《株やREITが上昇すれば、景気にプラス》とのメッセージを強く発したものだ。

この日銀のリスク資産購入効果が、どれだけ日本の金融市場にプラスの影響を与え得るかは、注意しながら見て生きたい。

《ニュース備忘録》

【ロイター】
政府内から日銀決定を評価する声、「コペルニクス的転回」とも
2010年 10月 5日 23:49 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17528820101005

【ロイター】
インドネシア中銀が金利据え置き、利上げは11年以降との見方
2010年 10月 5日 21:22 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-17528020101005

【ロイター】
資本流入対策を検討中、インフレは高水準=インド中銀副総裁
2010年 10月 5日 18:45 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-17526320101005

【ロイター】
日銀の追加緩和規模は実質5兆円、資産買い入れ基金に拡大余地
2010年 10月 5日 19:20 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17527120101005

【ロイター】
今回の措置、信用緩和と量的緩和の側面持つ「包括緩和」=日銀総裁
2010年 10月 5日 17:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17523820101005

【ロイター】
アイルランドをさらに格下げの方向で見直し=ムーディーズ
2010年 10月 5日 16:56 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17522120101005
ムーディーズは現在「Aa2」となっているアイルランドの格付けを引き下げる場合、1ノッチ下げる可能性が高いとしている。ムーディーズは7月19日に、アイルランド国債の格付けを「Aa1」から「Aa2」に引き下げている。

【ロイター】
韓国、銀行の通貨デリバティブのポジションを調査へ
2010年 10月 5日 13:21 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-17515720101005

【ロイター】
豪中銀、利上げ予想に反し政策金利を4.50%に据え置き
2010年 10月 5日 12:57 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17515120101005

【ロイター】
補正で新規国債発行せず、財政規律を堅持=野田財務相
2010年 10月 5日 12:11 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17513320101005

【ロイター】
米FRB、FOMC前実施の市場調査の対象拡大=関係筋
2010年 10月 5日 10:35 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-17509820101005

【ロイター】
早すぎる引き締め、景気回復損なう恐れ=米FRB議長
2010年 10月 5日 10:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17509420101005

【ロイター】
菅首相が中国首相と会談、ハイレベル協議開始で合意
2010年 10月 5日 09:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17505920101005

【ロイター】
追加的な証券買い入れ、金融状況を緩和=米FRB議長
2010年 10月 5日 08:58 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17505420101004

【ロイター】
中国、急速な人民元上昇求めるEUに反論
2010年 10月 5日 08:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17507120101004

【ロイター】
ブラジル、レアル高抑制で海外投資家への金融取引税引き上げ
2010年 10月 5日 08:42 JST
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPJAPAN-17506520101004

【ロイター】
ポルトガル当局が予算案支持呼び掛け、野党は増税反対崩さず
2010年 10月 5日 06:32 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-17505220101004

【ロイター】
ギリシャ政府が2011年予算案を提出
2010年 10月 5日 04:52 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17504120101004

【ロイター】
アイルランド中銀、2010年の成長率見通しを引き下げ
2010年 10月 5日 03:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17503820101004

【ロイター】
主要通貨相場は相対的に安定的であるべき=中国首相
2010年 10月 5日 01:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-17502820101004

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