貸し渋り対策のための銀行規制の緩和は、一応対応策とは言える。しかし、馬を水飲み場に引っ張ってきたからと言って、馬が水を飲んでくれるとは限らない。これによって、貸し渋りが解消するとは思えない。信用保証制度をつけたと言えど、場合によってはモラルハザードを呼び起こし、いかがわしい集団に目をつけられた企業が、過剰借入によって資金を金融機関から引っ張ってくる玉手箱にさせられかねない。最後は倒産させて、国(=税金)で穴埋めと言う構図。
銀行マンが何を基準に行動しているのかと考えると、自己資本比率などの規制もあるが、やはり「上意下達」だろう。いくら頭取が「貸し渋りはしてない」といっても、現場は違うルールで動いていると言うこともある。優良な企業を見つけてきて、経営者と面談してこの人は信用は置けると判断し、じっくり成長を期待するという腰の据わった、所謂鏡としての銀行マンは、なかなかそう短期に、簡単に育つものではない。機械的に信用リスク表などに頼って事務的に何でも仕事を進めてしまいがちになるが、人と人との付き合いは、紙の上で判断できるほど重要ではない。それこそが、モノではなく「信用」を取り扱う金融機関の一番重要なポイントだ。今回の金融危機に際して、一番心配なのが、この日本の「信用」ネットワークがどれだけズタボロにされてしまうのかということ。
金融庁では
中小企業の資金調達に役立つ金融検査の知識
http://www.fsa.go.jp/policy/chusho/nattoku.pdf
という12ページモノのパンフレットをHPの冒頭に公表している。
こういったことを地道に行っている銀行の方には頭が下がります。
金融は、それ自体は単なる補助的な役目でしかなく、事業者が主役というのが当然の姿。
金融機関が、よく訳が分からない商品を開発するというのは、イノベーションではなく単なる横暴。
事業会社を金融という手段でつなぎ、適切な情報を媒介して、航海における羅針盤になることこそが、本来の姿だろう。その羅針盤を見て、企業やその全体である社会、経済という船が、目的地に向けて順調に航海できるようにするというのがあるべき姿だ。金融技術のイノベーションは、新しい航海操舵の道具であって、無謀なエネルギー消費や暴走を起こすエンジンの開発であってはならないし、船のへさきにつける煌びやかな装飾品でもない。
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