2010年4月25日日曜日

(4月16日)GS vs SEC

4月16日、米国証券取引委員会(SEC)がゴールドマンサックスを証券詐欺の疑いで訴追した。発表された当日のニュースなどを見ると、大手ヘッジファンドのポールソン&Co.と共同してサブプライムを組み入れたCDOを組成、そのCDOは価値下落によって利益が出るポジションであった。その詳細な情報をゴールドマンが投資家に公表することを怠り、投資家に損失が出たことが詐欺罪に当たるのではという嫌疑であった。これだけをみると、ゴールドマンは悪そうだが、なぜポールソンが同時に訴追対象ではないのかと疑問に思った。

そこで、ゴールドマンが発表した提訴内容に関するプレスリリースを見ると、ポールソンがサブプライムに関連してショートポジションを組成したいと考えており、ゴールドマンはその商品設計を手伝ったということ、そしてゴールドマンは反対のロングポジションを取ったということ、追加で、このCDO組成によって得られたゴールドマンの手数料以上に、ゴールドマンはロングポジションによる損失が出ているということだ。この状況をみると、なんだかSECが提訴に出たのが果たして正当な理由があるからなのかと疑問に思う。人によっては、難癖をつけているだけではないかという見方もできる。

その更に裏で、ゴールドマンがABX指数をショートポジションにして、ポジションニュートラルを図っており、このCDOに関するポジションのみをプレスリリースにしているという芸当をやっているのかどうかは分からないのだが(証券化商品を組成した場合、組成者がある程度ポジションを持つことで、売却先の投資家の信頼を得るという効果もあるため)、この問題は法律論や勧善義務違反みたいな問題ではなく、政治問題になっているという意見が強い。米国では今、オバマ大統領が医療保険改革法を成立させ、金融問題の総決算としてのボルカールールに代表される金融規制改革法案の成立に向けた歩みを進めている。

上院の審議で、ロビー活動や野党の抵抗などによって、金融規制改革法案の議論が停滞しており、ここで世論に再度「金融規制を取りまとめることが重要なんだ!!」という熱風を起こしてもらうことを意識しているという見方もある。週末のG20に向けた議論加速を狙う上でも、ここで代表的なゴールドマンという会社が槍玉に挙げられることは、議論の背中を後押しする政治効果があると言えるかもしれない。

このニュースのせいで、16日の米国株式市場は下落し、ドル円相場も一時91円台に突入、日本株下落の材料となった。

【米国証券取引委員会】
SEC Charges Goldman Sachs With Fraud in Structuring and Marketing of CDO Tied to Subprime Mortgages
FOR IMMEDIATE RELEASE
2010-59
Washington, D.C., April 16, 2010
http://www.sec.gov/news/press/2010/2010-59.htm

【ゴールドマンサックス】
米国証券取引委員会による提訴内容について
April 16, 2010
http://www.goldman-sachs.co.nz/japan/our-firm/press/press-releases/SECComplaint.html

[プレスリリース翻訳版]
2010年4月16日

(ニューヨーク)—-ザ・ゴールドマン・サックス・グループ・インクは、本日、米国証券取引委員会(SEC)が、個別の一取引について、法律上も事実上も何等根拠がないことが明らかである詳細な記録があるにもかかわらず、係る訴訟を提起したことは大変遺憾であるとの見解を表明しました。

ゴールドマン・サックスは本取引により損失を被っている本取引によるゴールドマン・サックスの損失は9,000万ドル以上であり、同社が得た本取引の手数料は1,500万ドルです。同社自身が損失を被っており、損失を前提とするようなポートフォリオの組成はしておりません。

2006年、ポールソン・アンド・カンパニーから住宅価格が下落することを予想して、一定のポジションを構築したいという意思表明がありました。ゴールドマン・サックスは、参照資産の価値が下落した場合に、ポールソン社が収益を得る仕組みの合成CDOを組成しました。本合成CDO取引において、ゴールドマン・サックスは自らロング・ポジションを保有していました。

本取引は、ゴールドマン・サックスがサブプライム市場に対し、ショート・ポジションを取るために組成されたものではなく、反対に、ゴールドマン・サックスは本取引の結果、保有していたロング・ポジジョンにより損失を被ることとなっています。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ギリシャの銀行の流動性状況は厳しい、悪化の可能性も=ECB総裁
2010年 04月 16日 21:26 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14861520100416

【ロイター】
クラウド&スマグリ関連株投信が注目集める
2010年 04月 16日 19:09 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14860420100416

【ロイター】
再送:アイスランド火山噴火、欧州の空の足に大きな影響
2010年 04月 16日 18:45 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14846820100416

【ロイター】
「着実に持ち直し」で基調判断を据え置き=4月月例経済報告
2010年 04月 16日 18:22 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14858820100416

【ロイター】
BRICs首脳会議、迅速な国際金融機関改革求める
2010年 04月 16日 15:35 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14857020100416

【ロイター】
英テレビ討論会、勝者は自由民主党のクレッグ党首=世論調査
2010年 04月 16日 10:59 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14851620100416

【ロイター】
ギリシャがEU・ECB・IMFに協議要請、支援要請近いとの見方
2010年 04月 16日 08:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14848820100415
IMFと欧州委員会の合同チームは、19日から約15日間ギリシャ側と協議を行う予定。

【ロイター】
ギリシャはIMFとの3年間の予備的スタンドバイ協定に関心=IMF当局者
2010年 04月 16日 03:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14846220100415

【ロイター】
EU・IMF・ECB宛て書簡、金融支援の発動意味せず=ギリシャ当局者
2010年 04月 16日 01:38 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-14844320100415

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