8月28日は日本の現状の悪さを示す統計結果がポロポロ発表された。
まず、総務省発表の7月全国消費者物価指数だが、前年比-2.2%は比較可能な1971年以来最低の伸び率。前年比ベースで見ると、原油価格の昨年夏場につけた強烈な上昇と比べて低い水準であることから、石油製品が‐27.9%と足を大きく引っ張っている。ただ、食料やエネルギーを除いたとしても、物価は前年比-0.9%と下落しているため、デフレの状況にあると言える。
09年
前年比 % 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月
CPI総合 0.0 -0.1 -0.3 -0.1 -1.1 -1.8 -2.2
除く生鮮食品 0.0 0.0 -0.1 -0.1 -1.1 -1.7 -2.2
除く食糧・エネルギー -0.2 -0.1 -0.3 -0.4 -0.5 -0.7 -0.9
前月比 %
CPI総合 -0.4 0.1 0.0 -0.1 -0.4 -0.2 -0.1
除く生鮮食品 -0.2 0.2 0.0 -0.3 -0.3 -0.2 -0.1
除く食糧・エネルギー -0.2 0.1 -0.1 -0.2 -0.2 -0.1 -0.2
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厚生労働省が発表した有効求人倍率(季節調整済み)も0.42倍と、比較可能な1963年以降最低の倍率となった。パートを除く有効求人倍率になると、0.34倍まで低下する。新規求人倍率は過去最低ではないが、0.77倍。新規求人倍率は、今年の2月から0.76倍前後でほぼ横ばいで推移している。
一般職業紹介状況(平成21年7月分)について
http://www.mhlw.go.jp/za/0828/a51/a51.html
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また、総務省が労働力調査で、失業率を発表している。
労働力調査(基本集計) 平成21年7月分(速報)結果
http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/tsuki/index.htm#01
失業率も1953年の統計開始以来最悪の5.4%を記録した。
失業率とは、社会政策的な統計と言える。計算式は、
失業率=失業者/労働力人口=失業者/(失業者+就業者)
である(細かい点だが、以下失業者は完全失業者)。総務省の定義では、労働力人口とは15歳以上人口のうち、就業者と完全失業者を合計したものとなっている。もうちょっと踏み込んで言うならば、労働力人口とは働く気のある人で、専業主婦(主夫)や学生、引退者などはここから除かれ、非労働力人口となる。失業者は働く気のある人で職探しをしているわけだから、つまり失業率とは働く気のある人のどれくらいの割合が職に就けていないかということになる。
【総務省】
用語の解説(基本集計)
http://www.stat.go.jp/data/roudou/pdf/definit.pdf
たまに、「実質失業率」などという言葉を見かける。これは、職を失った人が失業者となるのだが、失意のうちに職探しをあきらめてしまい、非労働力人口となって失業率の計算式にカウントされなくなることを補おうとする考え方だ。
例えば(以下季節調整済みの値)、日本の労働力人口は、1997年6月の6811万人がピークで、それ以降労働力人口は減少の一途を辿っている。一方で、非労働力人口は増加を続け、2009年7月は4451万人となっている。1997年6月の3839万人から612万人も増加している。そのうちいくらかは高齢化による引退者の増加があるだろうが、長期不況の中で就業をあきらめた人が増えていると見なして、失業率の計算式で労働力人口を6811万人に仮定し、失業者は「6811万人-就業者」で計算し、そこから実質的な失業率を求めようという考え方だ。2009年7月の失業者は376万人であるが、この「失意の失業者」も加味して考えると、同月の就業者が6231万人であるから、実質失業者は580万人(=6811-6231)となり、失業率は8.5%(=580/6811)となる。ヘッドラインの数字の5.4%よりもはるかに悪い数字である。
(補足すると、失業率は失業率の原数値を季節調整しているので、季節調整されたあとの労働力人口と失業者から失業率を計算すると5.7%と計算される・・・)
ただ、こうやって数字を転がしてみたところで、雇用環境が過去最悪だということは変わりないし、「統計の作り方を知っている」ということを強調する意外に、積極的な意味は無いような気もする。社会政策的には「仕事を求めているのに仕事に就けない」人を助けることは必要であるが、厳しい言い方をすると、仕事を探すのを止めた人を敢えてカウントする必要があるのかということはちょっとまじめに考えないといけない。本当に困窮して仕事を探さなければ生活できないというのであれば、職探しをし続けるだろう。職探しを止めて非労働力人口になれるような、極端な言い方をすると家事専業に従事できる人や学生になれる人、ニートになれる人がいるということは、その裏側にある程度(多少生活水準を落としてでも)生きていける深い懐があることを意味している。
雇用環境が厳しいと言うことを否定することは一言も言っていない。
それよりももっと問題なのは、年齢階層別の失業率であって、年齢階層別に見ると失業率は、
失業率
08年7月 09年7月 前年差
15~24歳 7.5 9.9 2.4
25~34歳 5.2 7.1 1.9
35~44歳 3.3 4.9 1.6
45~54歳 2.7 4.0 1.3
55~64歳 3.4 4.9 1.5
65歳以上 1.9 2.7 0.8
全体 3.8 5.4 1.6
となっている。若年層での失業率が高く、この厳しい雇用環境の中で若い者から雇用が切られている。壮年者の仕事意識が高く、若年者は仕事をやめても親のスネをかじれる安心感があるから仕事を辞めているのではない。先ほど述べたように、失業率とは「働きたいのに働けない人」の社会政策的な統計である。これからの前途有望(?)な雇用が満たされず、一丁上がり的な人の雇用が守られてしまっているという側面は否定できない。確かに40代や50代の労働者は夫婦の片方だけが仕事をし、家庭で子育てしているところが多く、これらの雇用を切ることは若年者よりも社会的に問題が大きいとも言えるが、それにしても若年層の犠牲は大きいと言わざるを得ない。
25歳~34歳の失業率が7.1%というのは、「働きたいと思っている」14人に一人は失業者ということだ。この様な雇用体系は将来の日本
の国力の懐を浅くする。
失業率とは、社会政策的な統計である。
《ニュース備忘録》
【ロイター】
09年のドイツ成長率はマイナス5―6%になる見込み=首相
2009年 08月 28日 21:29 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11234220090828
【ロイター】
民主の高速道路無料化、参院選での勢力拡大が実現の鍵
2009年 08月 28日 19:07 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11233020090828
【ロイター】
10年度借換債に98.4兆円、新発債38.5兆円で仮置き=財務省
2009年 08月 28日 18:05 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11230820090828
【ロイター】
S&Pとムーディーズ、米ジャンク債デフォルト率予測に著しい開き
2009年 08月 28日 16:52 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11230120090828
【ロイター】
7月の自動車世界生産、トヨタなど軒並み過去最大の下落率
2009年 08月 28日 16:49 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11230320090828
【ロイター】
中国当局、月末にかけた融資の伸び抑制を銀行に指導
2009年 08月 28日 15:33 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11229020090828
【ロイター】
FRB当局者、出口戦略への焦点シフトを強調
2009年 08月 28日 11:58 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11224420090828
【ロイター】
7月完全失業率は5.7%で過去最悪=総務省
2009年 08月 28日 10:23 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11221620090828
【ロイター】
7月全国コアCPIは‐2.2%で過去最大の下落率更新
2009年 08月 28日 09:37 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11220120090828
【ロイター】
7月有効求人倍率は0.42倍、過去最低を更新
2009年 08月 28日 08:49 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11218920090827
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