2009年9月13日日曜日

(9月10日)NZ金融政策と経済事情

ニュージーランド準備銀行が政策金利を2.5%に据え置いた。加えて、前回同様に2010年後半まで政策金利をこの水準で据え置くことを決定した。時間軸を設定した金融政策は、カナダとニュージーランドがこのように具体的な期日までの政策金利据え置きを宣言している。

OCR unchanged at 2.5 percent
Date 10 September 2009
http://www.rbnz.govt.nz/news/2009/3745217.html

声明文の中では、景気の悪化が収束に向かう一方で、回復の兆候が散見されると述べられている。しかし、先行きの景気に対するリスクも述べられていて、

「If the exchange rate were to continue its recent appreciation and/or the recovery in house prices were to undermine the improvement in household savings, then the sustainability of the present recovery will be brought into question. 」(もし、為替レートの昨今の通貨高の継続と、住宅価格の回復による家計の貯蓄(率の改善?)の後退の両者またはどちらかが起きる場合、現在の景気回復の安定性に疑問が生じるであろう)

と、通貨高と家計の貯蓄の裏側にある過剰消費についての警鐘が鳴らされている。同時に発表された、四半期に一度公表されている金融政策ステートメントに、ニュージーランドの金融・経済に関する詳しい分析がなされている。

Monetary Policy Statement
September 20091
http://www.rbnz.govt.nz/monpol/statements/sep09.pdf

この中のBOX Bのパートで為替の分析について言及している。ニュージーランドドルについてのTWI(貿易加重為替)をみると、2007年7月24日にTWI(14ヶ国ベース)は76.68まで上昇したが、リーマンショック後の金融危機によるリスク資産回避行動によって、2009年2月3日には、この期間の最低値50.85まで下落した。3分の1の価値下落になる。その後、足下では65まで回復しているので、この5ヶ月間で27.8%も通貨が上昇したことになる。しかし、この様な為替市場の評価とは裏腹に、ニュージーランドのファンダメンタルは脆弱だというのが、NZ中銀の言い分だ。

【参考】ニュージーランド準備銀行の為替データ公表ページ
Exchange rates and foreign exchange turnover
http://www.rbnz.govt.nz/statistics/exandint/b1/index.html

また、オーストラリアは鉱業資源(industrial commodities(産業用原材料)と書かれている)の輸出に占める割合が大きいが、ニュージーランドは農産品の割合が大きいため、世界的な資源価格の回復はオーストラリアに恩恵はあっても、ニュージーランドの通貨が上昇するという市場の反応には、こういった経済背景だけを考えるとちょっと疑問だとも述べている。(オーストラリアはそろそろ利上げを開始するだろうとの予想もしている。)

こういった背反的な理由については、過去、このTWIと住宅価格を比較してみると、住宅価格の上昇と為替の上昇が連動しているので、市場は住宅価格の回復、ひいてはニュージーランド経済の回復を期待しており、それが為替相場の上昇を生み出していると解説している。
しかし、ニュージーランドの貯蓄率は恒常的に大きなマイナスが続くとの予測も公表されている。この過剰消費体質にこれまでの住宅ローンを始めとする家計の負債が重なり、景気回復もおぼつかないのではと、ニュージーランド準備銀行は考えているようだ。これまでの消費の拡大には、移民の増加による消費が寄与していたとも述べられている。(ニュージーランドへの移民の増加は続くとNZ中銀は考えているようであり、この構造が激変することは想定していないようだ。)

% 年    05    06     07    08     09   10    11    12
貯蓄率  -9.34  -11.72  -12.79  -10.68  -8.32  -8.21  -7.46  -4.42

ちなみに、ニュージーランドのGDP成長率、潜在GDP成長率、GDPギャップ予想は

年        03  04  05  06   07   08   09   10  11  12
GDP      4.9  4.3  3.8  3.0  1.8  3.1 -1.0  -0.9  3.1  3.4
潜在GDP   3.4  3.4  3.1  2.8  2.4  2.1   1.9   2.0  2.1  2.1
GDPギャップ 1.0  1.9  2.5  2.5  1.8  2.7 -0.2  -3.0 -2.1 -0.9

となっている。当分先までGDPギャップが開いたままで、ニュージーランドは供給過剰からデフレ圧力が存在しているとの評価になっている。この様な見通しが出てくる限り、金融政策を遂行する彼らの思考回路からは、金融政策を引き締めるというアイディアは出にくいだろう。


《ニュース備忘録》

【共同通信】
閣僚人事、川端、原口氏有力に 枝野氏も入閣の方向
2009/09/10 22:09
http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091001000946.html

【共同通信】
補正予算の回収可能5・9兆円 財務省が見積もり
2009/09/10 21:15
http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091001001040.html

【共同通信】
総務次官、西川氏辞任は基本方針 日本郵政社長人事
2009/09/10 18:31
http://www.47news.jp/CN/200909/CN2009091001000650.html

【ブルームバーグ】
今年度補正予算の未執行5.9兆円、一部停止し財源に-民主党関係者
2009/09/10 18:23 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003017&sid=asZgR0ceaGAo&refer=jp_japan

【ロイター】
米リセッションは終了、雇用情勢は厳しさ続く=ブルーチップ調査
2009年 09月 10日 16:39 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11440320090910
09年第3・四半期の国内総生産(GDP)伸び率は前期比年率3.0%で、第4・四半期は2.4%と予想した。

【ロイター】
8月の中国不動産投資、前年比34.8%の大幅増
2009年 09月 10日 14:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11437120090910

【ロイター】
医療保険未加入の国民に公的保険制度の選択肢を=米大統領
2009年 09月 10日 10:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11430720090910

【ブルームバーグ】
NZ中銀:政策金利を2.5%で据え置き-利下げの公算減る(Update2)
2009/09/10 08:55 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003009&sid=a8qVAToHfHWE&refer=jp_top_world_news

【ロイター】
米、今後さらに数百万の住宅差し押さえに直面=財務省高官
2009年 09月 10日 04:22 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11425020090909

【ロイター】
8月世界ジャンク債デフォルト率11.5%、91年以来=ムーディーズ
2009年 09月 10日 01:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11423720090909

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