17日に09年4-6月期の米国資金循環統計が発表されていたので、その数値をちょっと見てみる。
Flow of Funds Accounts of the United States - Z.1
Release Date: September 17, 2009
http://www.federalreserve.gov/releases/z1/Current/
金融市場借入額 08年 09年
兆ドル Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2
借入合計 2.94 2.12 3.30 2.25 -0.22 -0.24
短期証券 0.02 -0.27 -0.59 0.08 -0.66 -0.74
国債 0.41 0.31 2.08 2.15 1.44 1.90
エージェンシー 0.65 1.32 0.71 0.41 0.04 -0.12
地方債 0.10 0.06 0.10 0.01 0.13 0.22
事業債・外債 0.34 0.32 -0.71 -0.55 0.29 0.23
銀行ローン 0.47 0.09 1.38 0.84 -0.86 -0.93
その他ローン 0.30 0.06 0.47 -0.44 -0.47 -0.40
モーゲージ 0.52 0.12 -0.14 -0.18 -0.04 -0.24
消費者信用 0.12 0.11 0.02 -0.08 -0.10 -0.17
株式調達 0.19 0.86 -0.13 0.50 0.34 1.21
企業株 0.03 0.26 0.07 0.94 0.44 0.44
非金融部門 -0.43 -0.22 -0.34 -0.35 -0.12 0.09
外国株式 0.11 0.09 -0.05 -0.14 0.01 0.15
金融部門 0.35 0.39 0.46 1.42 0.56 0.20
投資信託 0.16 0.59 -0.20 -0.43 -0.10 0.76
金融市場からの借入額を見ると、2008年は年率換算で1-3月期が2.94兆ドル、4-6月期が2.12兆ドル、7-9月期が3.30兆ドル、10-12月期が2.25兆ドルと、市場からの資金調達超過が続いていたが、2009年に入り、1-3月期が-0.22兆ドル、4-6月期が-0.24兆ドルと資金調達がネットマイナスになり、マクロ的に資金返済が続いている格好になっている。
国債に当たる財務省証券(貯蓄債券も含む)は、昨年7-9月期以降、年率2兆ドル近くの資金調達が続いており、景気対策や金融危機対応に関する政府の資金需要の旺盛さが示されているが、エージェンシーの資金調達は2005年7-9月期以来初めてマイナス(ネット資金返済)となった。昨年4-6月期に年率1.32兆ドルも資金調達していた所から見ると、この資金需要の落ち込みは激しい。
今回最も注目は、銀行ローンの返済が4-6月期に0.93兆ドルにも上ったことだ。1-3月期も-0.86兆ドルと借入がネットマイナスになっており、その前の2008年7-9月期と10-12月期がそれぞれ1.38兆ドル、0.84兆ドルの借入増加と比較して、その資金返済への急激な舵取りの変化は他の部門を圧倒する。この銀行ローンの増減が、昨年のリーマンショックによって7-9月期、10-12月期と決済性資金の緊急需要によって借入が急増したが、1-3月期以降はその緊張が和らいだことで返済が増えているというこの期間に限った増減なのか、それとも2009年に入ってから、銀行部門が貸し渋りを本格化させ始めたからなのか(そのため、マネー供給の収縮が今後も続くのか)、両者の解釈の違いはマネーフローを考える上で180度異なる。
ローンの延滞率や貸倒率が上昇しており、場合によっては日本で見られたような間接金融市場の縮小が米国でも始まるのではないかという見方も徐々に台頭するかもしれない。その場合、日本の経験をトレースすると、資金は国債に流れ込み、資金需要不足から長期金利の低下が始まる。
ただし、株式の方を見ると、企業の資本調達だけでなく、4-6月期は投資信託(ミューチュアル・ファンド)の調達(新規設定や既存のファンドへの資金流入)が増加しているため、資金動向が必ずしもすべて国債に流れているわけではない。米国ファイナンス市場が日本と同じ轍を踏むかどうか、米国金利動向を考える上でも、今後の動向は注目だ。やはり、リスクテイクの後のリターンに成功体験が伴うのであれば、リスクマネーの供給は続くのだろうと思う。そういう意味では、日本でリスクマネーの供給を行ったときの成功体験は多くなく、時間と供にマネーの供給主体のリスク許容度の目線が引き下げられていったのではないだろうか。
モーゲージによるネットマイナスの資金調達(資金返済)は昨年7-9月期以降4四半期連続。
また、分配勘定を見ると、国内総所得のうち、雇用者報酬の低下が鮮明ななかで、企業収益が上向きに転じていることはマクロ的にも改善の兆候といえる。企業収益には在庫評価も含まれているため、会計的な現金創出を伴わない利益の可能性もあるが、賃金が減って企業利益が回復している、所謂「ジョブレス・リカバリー」にちかい状況(雇用者報酬の減少は、この統計だけでは賃金削減か雇用削減か、理由が明確でないため、多分他の統計から考えて明確なのだろうがあえて断言しない。)が起きており、景気回復の序章を思わせる。
(不動産収益には非営利団体の収益も含む)
《ニュース備忘録》
【ロイター】
中国の急速なユーロ買いは望ましくない=欧州委員
2009年 09月 18日 23:49 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11581320090918
【ロイター】
中国の景気回復は安定していない=共産党中央委員会
2009年 09月 18日 22:29 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11580820090918
【ロイター】
民主党は日銀の独立性を尊重、為替は経済実勢で決まるのが自然=藤井財務相
2009年 09月 18日 21:37 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11580520090918
【ブルームバーグ】
英銀大手の住宅ローン承認件数が8月に増加、今年最高に-英中銀
2009/09/18 19:38 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003013&sid=aRaro3UEhagI&refer=jp_us
【ブルームバーグ】
「パンドラの箱」開けたUBSの和解-他行の秘密口座が次々と露呈
2009/09/18 15:57 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90003013&sid=aEA38AGLL2Is&refer=jp_us
【ロイター】
補正の執行停止は小さな額でない、国債発行減も=財務相
2009年 09月 18日 13:40 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11571420090918
【ロイター】
モラルハザードが疑われる事柄、相当ある=亀井郵政・金融相
2009年 09月 18日 12:34 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11565320090918
【ロイター】
補正予算の執行見直し、10月2日までの報告指示=官房長官
2009年 09月 18日 11:45 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11566520090918
【ロイター】
米SEC、「フラッシュオーダー」の規制案を発表
2009年 09月 18日 11:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11566220090918
【ロイター】
欧州短期市場関係者、ECB1年オペ金利プレミアムめぐり見解に相違
2009年 09月 18日 08:22 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11560920090917
【ロイター】
米住宅購入税控除、これまで140万人が利用=内国歳入庁
2009年 09月 18日 06:05 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11559220090917
【ロイター】
英中銀、資産買い入れ拡充の必要性を数カ月内に判断=金融政策委員
2009年 09月 18日 04:13 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11557820090917
【ロイター】
スイス中銀が金利据え置き、非伝統的政策も継続
2009年 09月 18日 00:41 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11557320090917
0 件のコメント:
コメントを投稿