2009年9月27日日曜日

(9月24日)中銀のドル供給

ECB、BOE、スイス中銀が、米ドル供給オペの80日物を停止すると発表した。昨年のリーマンショックによって金融危機が発生し、金融システムが壊滅的なダメージを受ける中でドル決済の懸念が拡大し、FRBはこれまで段階的にその金額や地域を拡大してきたが、足下ではそのようなドルの緊急需要も後退しており、特に中銀から調達する長めのドル需要はなくなっている。

24 September 2009 - ECB and other central banks decide to continue conducting US dollar liquidity-providing operations
http://www.ecb.int/press/pr/date/2009/html/pr090924_2.en.html

News Release
Bank of England US Dollar Repo Operations
24 September 2009
http://www.bankofengland.co.uk/publications/news/2009/072.htm

Zurich, 24 September 2009
Central banks to extend provision of USD liquidity
http://www.snb.ch/en/mmr/reference/pre_20090924_1/source/pre_20090924_1.en.pdf


日銀も、ドル供給については、長めの期間のものは止めて、30日もののみを残すようなオペスケジュールを発表した。


2009 年9 月24 日
日本銀行金融市場局
米ドル資金供給オペレーションのオファー日程の追加について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/mok0909b.pdf

ECBのドル供給入札を見ると、昨年ドルの無制限供給を決めて以降、固定金利での入札額全額が割り当てされているが(入札額/割当額=1)、8月11日の84日物の入札では2社から5.1億ドルの入札があったが、9月9日には入札がとうとうゼロになった。

ECBのドル供給オペの表(2009年2月~)

送信者 備忘録とかそういうの


7日物の入札も入札社数が徐々に減ってきており、7月ぐらいからは10社弱が400億ドル前後の金額を毎週ロールオーバーしているだけのような格好になっている。9月23日の入札は6社であった。この数社の限られたドル調達の取り手が常にECBに頼らなければ資金を取れないという状況なのか、それともECBから借りるほうがコストが安くて済むのかは短期金融市場のディーラーでないと分からないのだと思うが、徐々に役目を終えてゆく運命にあるだろう。

FRB側のドル資金供給額を見ても、9月23日の段階ではドル供給額が591.2億ドルであるから、ECBが供給している残高436.6億ドルは約74%を占めていることになる(その殆どが上記6社で決まっていることになる)。



よって、別に今回80日もののドル供給オペを止めたことが出口戦略の一歩云々と言われているが、そもそも入札者も居なくなったものを止めると言っただけであって、スーパーで売れなくなった品物が出なくなった後で、最後に陳列棚に残った名札をただ回収しただけと言えば言いのだろうか。あまり取り立てる意味は無いと思う。

FRBのバランスシートを見ても、

2. Maturity Distribution of Term Auction Credit, Other Loans, and Securities, September 23, 2009
https://www.federalreserve.gov/releases/h41/Current/h41.pdf

「Central bank liquidity swaps」の残高591.2億ドルのうち、492.0億ドルが残存15日以内なので、殆どが上記ECBの7日物のオペである。16日~90日もののオペは、その他の国で長めの資金供給を行ったものの残存年限がまだ15日以内になっていないことが要因なのだろう。

それ以上に、いきなり話が飛躍するのだが、同じFRBの買入資産の期間別残高で、モーゲージバック証券(MBS)の6936億ドルの全てが残存年限10年以上で保有しているということの影響は小さくないだろう。この塊は肝臓脂肪のようになかなか溶け出すことの無いメタボの原因となりかねない。

一方でFRBは9月23日のFOMCの声明で、政策金利を0~0.25%に据え置く一方、MBSと政府機関債の買入額はそれぞれ1.25兆ドル、2千億ドルに据え置いたが、その買入期間を2010年3月末まで延長するために、買入額を緩やかに減少させると発表した。

MBSの買入増額にはブレーキが掛かり始めるのかもしれないが、中銀のバランスシートを見ると、このMBSによってかなり不恰好なバランスとなりつつあるような気がする。



このMBSが市場環境の改善によって売却が開始できるほどになったときに、初めて出口戦略といえるのかもしれない。その時こそ、米国が引き起こした金融危機の最初のトリガーとも言える不動産証券化バブルの後片付けが始まるのであろう。

《ニュース備忘録》

【ロイター】
ドイツの経済回復、持続的でない恐れ=IFOエコノミスト
2009年 09月 24日 22:49 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11636720090924

【ロイター】
米FRB、出口戦略の一環としてMMFの活用を検討=新聞
2009年 09月 24日 22:42 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11636820090924

【ロイター】
情報BOX:G20による金融規制強化策の進ちょく状況
2009年 09月 24日 15:23 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11630020090924

【ロイター】
米TARP資金、納税者が全額取り戻す可能性は低い=当局者
2009年 09月 24日 14:43 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11628520090924

【ロイター】
中国、2010年初頭までに2ケタ成長回復も=エコノミスト
2009年 09月 24日 14:41 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11628020090924

【ロイター】
米クレジットカードの貸倒償却率、過去最高に上昇=ムーディーズ
2009年 09月 24日 14:24 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11627620090924

【ロイター】
米カリフォルニア州、財政危機後初の地方債発行
2009年 09月 24日 13:01 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11625520090924

【ロイター】
米FOMC声明全文
2009年 09月 24日 06:29 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11615020090923

【ロイター】
「トービン税」、発想は素晴らしいが実施は困難=アルムニア欧州委員
2009年 09月 24日 01:17 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11612620090923

【ロイター】
09年度の米国債発行総額、7兆ドルに=財務次官補代行
2009年 09月 24日 01:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11611520090923

【ロイター】
準備通貨のSDRへの移行案、中国への批判に対する答え=人民銀行総裁
2009年 09月 24日 00:59 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11611620090923

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