2009年10月11日日曜日

(10月7日)ラトビア危機

バルト三国の中央に位置するラトビアの情勢がきな臭くなってきた。10月7日に実行された2400万ラトの国債の入札に対し、800万ラトの入札分に応札が無かった。いわゆるフェイルというやつだ。マーケットウォッチを見ると、ラトビアに関する動きが幾つか取り上げられている。

「ラトビアの国債入札は金融危機の中で失望の結果」
Oct. 7, 2009, 9:48 a.m. EDT · Recommend · Post:
Latvia debt auction disappoints amid crisis
http://www.marketwatch.com/story/latvia-debt-auction-disappoints-amid-crisis-2009-10-07

「ラトビア銀行は『金融不安の波』を警戒」
Oct. 7, 2009, 10:53 a.m. EDT · Recommend · Post:
Bank of Latvia warns of "wave of distrust"
http://www.marketwatch.com/story/bank-of-latvia-warns-of-wave-of-distrust-2009-10-07-1053400

その結果、ラトビア中銀はホームページで声明文を発表した。

On renewing confidence in the Latvian economy
7 October 2009
http://www.bank.lv/eng/main/all/sapinfo/commentary/renewing_confidence/index.php?102654

文章を抜粋して読むと、

「Another wave of distrust is beginning to roll over Latvia, potentially bringing higher interest rates, worsened conditions for entrepreneurs. Currently there are two main reasons behind such distrust and lack of confidence: the many less than clear signals associated with the process of adopting the state budget and the called for legal amendments that would limit the liability of borrower toward lender to the value of collateral. 」(ラトビアに展開し始めた更なる信用不安の波は、潜在的により高い金利と、企業の経営状況を悪化させる可能性がある。現時点で、この様な信用不安と信任の欠如の背景には2つの主要な理由がある。それは、国家予算の編成過程や、法律改正によって、貸し手の借り手に対する債務負担に制限を設けようとする動きが、透明性のシグナルを与えるに十分でないことだ。)

「In the situation where the world's attention is focused on us, there is a most urgent need for fixing the budget, by setting state expenditures at levels that are sustainable in the long run, and for fostering the financial stability. If this does not happen, the situation and future prospects will worsen not just for the economy as a whole but also for each of its participants: the government, banks, entrepreneurs, and the general population.」(世界が我々に注目する状況にあり、長期的に維持可能な水準まで国家の歳出を編成しなおし、金融安定化に資する必要に喫緊に迫られている。もし、これが出来なければ、現状や先行きは経済だけではなく、そこに参加している政府や銀行、企業、一般市民にまで悪影響が及ぶであろう。)

中央銀行がこのような声明を発表するくらいなので、状況は切迫していると言える。注目は、ラトビア通貨のラトはユーロペッグであるため、通貨の切り下げが起きるのではないかと言うことだ。2009年8月末時点のラトビア在住金融機関の資産負債残高は総額212.5億ラトだが、資本は16.2億ラトで、負債勘定を見ると、ラトビア国内居住者からの外貨預金残高が28.4億ラト、外貨建て債務は114.7億ラトだ。これだけ国内金融機関の資金調達が外貨関連となっていることは、通貨切り下げが単純に起きた場合、フローの場面では自国通貨安は輸出などにとっては良いのかもしれないけれど、これら外貨建ての負債は自国通貨安になるだけ返済負担が急増する。

ラトビアへは地理的にも近いスウェーデンがかなり資金を貸し込んでいて、その余波の第一波はスウェーデンが被ることになるだろう。世界的にこの信用不安の連鎖が止まるかどうかは、スウェーデンの対応にかかっていると言えよう。

そのスウェーデンの記事を見ると、ラトビアの3.25億ラトの歳出削減では、IMFと夏場に5億ラトで合意した削減内容に足りないとプレッシャーを掛けている。このままではラトビアは海外からの救済パッケージを受けることが出来ず、苦しい立場になりかねない。

Oct. 6, 2009, 11:38 a.m. EDT · Recommend (2) · Post:
Sweden raises pressure on Latvia over rescue terms
Baltic nation weighs limiting homeowners' loan liability
http://www.marketwatch.com/story/sweden-ups-pressure-on-latvia-over-loans-2009-10-06

ちなみに、IMFがラトビアについてまとめた資料は以下のリンクのPDFファイル114枚物に思いがこめられている。(全部読む気にはなれない・・・)

Republic of Latvia: First Review and Financing Assurances Review Under the Stand By Arrangement, Requests for Waivers of Nonobservance of Performance Criteria, and Rephasing of Purchases Under the Arrangement
http://www.imf.org/external/pubs/cat/longres.cfm?sk=23330.0


ラトビアの首相は、住宅ローンの借り手の負債責任は担保価値までに制限するという法案を議会で通そうとしており、かなりの軋轢を生んでいるようだ。ラトビアの問題は昨年からずっと言われてきたことなので、スウェーデンもある程度対応は準備していると考えられる。ウォールストリートジャーナルの記事を見ると、スウェーデン銀行(民間銀行)の頭取は長期的な視点からバルト海地域を見ており、撤退は考えていないと発言している。ラトビア国内の資金の借り手は、約85%がユーロ建てとのことで、通貨の切り下げは望ましくない。との内容は上記の通り。

【WSJ】
OCTOBER 6, 2009, 9:43 A.M. ET
INTERVIEW: Swedbank To Continue Latvia Support Despite Spat
http://online.wsj.com/article/BT-CO-20091006-707420.html

スウェーデンは6月10日にストレステストの結果を公表しており、一定のシナリオの下、スウェーデンの4大銀行は大丈夫との結論を導いている。最終的にラトビアの金融問題がどのように着地するかは不透明な部分もあるが、引き続き北欧金融問題は注意が必要だ。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
ドル安は米低金利政策が引き金、今は静かに見守る段階=藤井財務相
2009年 10月 7日 19:33 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11841620091007

【ロイター】
金が最高値更新、現物は1オンス=1045.85ドルに
2009年 10月 7日 17:50 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11839620091007

【ブルームバーグ】
藤井財務相:無秩序な状況になった場合は適切な措置を取る-為替相場
2009/10/07 17:39 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=a32W7vJ3QZXY

【ロイター】
ドル88.12円まで下落、8カ月ぶり安値を更新
2009年 10月 7日 17:27 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11839120091007

【ロイター】
ロシア中銀、36.10ルーブルの水準で外貨買いのもよう=市場筋
2009年 10月 7日 16:15 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11838420091007

【ブルームバーグ】
ホンダ:今年のタイやインドの四輪回復は予想以上-昨年並み(Update2
2009/10/07 15:17 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aYZVGPQTcB6A

【ブルームバーグ】
サンタンデール銀ブラジル部門、IPOで約7100億円調達(Update1)
2009/10/07 12:47 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=apjG4F_FBgeI

【ブルームバーグ】
英RBSの完全国有化、救済受諾で辛うじて回避-英中銀前副総裁
2009/10/07 12:10 JST
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90900001&sid=aEGkla_17RGM

【ロイター】
中国の為替操作国への認定、米政権に圧力強まる
2009年 10月 7日 09:55 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11830620091007

【ロイター】
仏財務相、米ドル以外での石油取引協議との報道一蹴
2009年 10月 7日 07:53 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11828320091006

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