2009年10月7日水曜日

(10月6日)豪州の利上げとドル決済放棄の陰謀?

豪州準備銀行が予想外の利上げを実施した。市場予想でも今回の0.25%の利上げは殆ど予期しておらず、かなりのサプライズであった。政策金利はこれで3.25%。4月から9月まで6ヶ月のうちに5回の声明文の公表が会ったが、それらを据え置いた後での利上げであった。

No: 2009-23
Date: 6 October 2009
Embargo: For Immediate Release
STATEMENT BY GLENN STEVENS, GOVERNOR
MONETARY POLICY
http://www.rba.gov.au/MediaReleases/2009/mr-09-23.html


声明文を読むと、まず中国の成長率がとても強いことが述べられており、豪州景気の中国重視が読み取れる。さらに、ところかしこに予想以上に景気が良いと言う文言がちりばめられている。
例えば、

「Economic conditions in Australia have been stronger than expected」(豪州の経済情勢は予想以上に強く(推移してきた))

「but it now appears that private investment will not be as weak as earlier expected.」(しかし、今見えるのは、民間投資はこれまで予想していたほどは弱くない)

「Unemployment has not risen as far as had been expected.」(失業は予想していたほど上昇していない)

「Underlying inflation should continue to moderate in the near term, but now will probably not fall as far as earlier thought.」(インフレ地合いは目先緩やかであるだろうが、先に予想したよりも落ち込みはしないだろう)

などなど。このように、予想外の経済の進展を受けて、ここに予想外の利上げを意図したと言う建付けと読んだ。もちろん、利上げの決定については、その露払いとして、

「Interest rates facing prospective borrowers on fixed-rate loans have already risen to some extent, as markets have anticipated a higher level of the cash rate.」(固定金利の借り手の期待に直面している金利は幾分上昇してきており、市場はキャッシュ・レート(政策金利)の水準上昇を見込んできたようだ)

との文章をちりばめて、利上げ正当化の材料としている。最後に、政策金利の今後の見通しについては、

「With growth likely to be close to trend over the year ahead, inflation close to target and the risk of serious economic contraction in Australia now having passed, the Board’s view is that it is now prudent to begin gradually lessening the stimulus provided by monetary policy.」(今後1年、経済成長はトレンドに近づいているようで、インフレは目標に近づいており、豪州が深刻な景気悪化に陥るリスクは、今は過ぎ去った。政策委員会は、金融政策によって供給されている刺激(緩和支援)を徐々に減らしてゆくことを始めるのが、今こそ賢明な時だと判断する)

と述べており、連続利上げが示唆される。

これに困るのはニュージーランドだろう。豪州は少なくとも年末、早くて11月で穏当な判断では12月からの利上げと思われていたのだが、今回10月の利上げとなった。一方のニュージーランドは来年央まで利上げしないと声明文で宣言している。こういった両国のコミットメントがあるのだが、市場は「ニュージーランドも同じく近い将来利上げが進むのではないか?」と考えるため、折角の金融緩和効果が利上げ期待からニュージーランドドル高に結びついたらどうしようも無い。この市場の勝手な期待は暫く放置して、時間を置いてみたら「豪州とニュージーランドは違った!!」と市場が失望して元に戻るかもしれないが、そのとき既にニュージーランドが利上げ時期になっていたなら、ちょっと遅ればせながらやっぱり利上げしたのねとなる。

先週末の米雇用統計で予想外の悪化で冷や水を浴びせられた市場だが、豪州利上げで前向きな動きが出てきたことは歓迎される。けれど、マスコミはこれをこぞって「出口の始まり」とはやしたてた。十分な金融緩和効果を浸透させようとしていた先進各国経済が、この豪州の行動によって勝手に前傾姿勢になられたのでは、ちょっと困るかもしれない。そういう意味では、今回の豪州の利上げはKYだったかもしれない。ただ、市場は利上げ開始により、経済が動き始めたというシグナルを受け取ることができたので、それはそれで好ましい。

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10月6日はもう一つのニュースが為替市場を駆け巡った。インディペンデント紙が報じたところによると、湾岸諸国の石油産出国が、原油取引の決済通貨としてドルを放棄し、円、元、ユーロ、金と湾岸諸国で新設する統一通貨のバスケットで取引しようと言う途方も無い話題だ。

The demise of the dollar
In a graphic illustration of the new world order, Arab states have launched secret moves with China, Russia and France to stop using the US currency for oil trading
By Robert Fisk
Tuesday, 6 October 2009
http://www.independent.co.uk/news/business/news/the-demise-of-the-dollar-1798175.html

(この絵は上記インディペンデント紙より。目に訴えかける画像だ…)

記事によれば、ロシア、中国、日本、ブラジルの財務大臣と中央銀行総裁による秘密裏のミーティングがすでに開かれていると、アラブ諸国と中国の銀行関係者が確認したと述べている。このことを嗅ぎ付けたアメリカは詳細は突き止められなかったものの、親米国である湾岸諸国や日本までもが絡んだこの陰謀に対して闘うとの見方が記事にされた。

ロイターの記事を見ると、サウジアラビア、ロシア、クウェート、UAEの当局者がこの報道を否定したとのこと。

【ロイター】
原油先物が1ドル超上昇、原油取引通貨に関する報道で
2009年 10月 6日 19:22 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11822720091006

ただ、この記事を書いたRobert Fisk氏は、Googleで検索すると中東系に強い老練の記者だと言うことが分かる。どこぞの有象無象が書いたというわけではなく、それなりの有名人が記事にしたことで、市場もこれほど反応したのだろう。今日明日でその真実が明らかになることは無いだろうが、少し長い目で見る必要があるのかもしれない。このニュースが流れたあと、ドルは下落した。


《ニュース備忘録》

【ロイター】
補正執行停止・返納見込み額は総額2兆5169億円
2009年 10月 6日 18:57 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11821820091006

【ロイター】
原油取引でドルに代わる通貨協議していない=クウェート石油相
2009年 10月 6日 18:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11821920091006

【ロイター】
日銀のCP・社債買取停止観測、閣僚が相次ぎけん制
2009年 10月 6日 17:15 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11819120091006

【ロイター】
原油取引でのドル利用中止を協議との報道は「不正確」=サウジ中銀総裁
2009年 10月 6日 16:27 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11819720091006

【ロイター】
豪中銀が政策金利を25bp引き上げ、緩和策の段階的縮小が賢明
2009年 10月 6日 15:06 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-11815820091006

【ロイター】
9月中国新規融資は3000─4000億元=銀監会委員長
2009年 10月 6日 07:21 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-11805620091005

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