2008年12月21日日曜日

日銀の決断(12月19日)

やっと2週間分の回顧が追いついた・・・


12月19日に日銀は政策金利引き下げを含めた金融政策を公表した。
金融政策の変更について(14時05分公表)金融調節手段に係る追加措置について (PDF, 188KB)


CP買入れは満額回答。政策金利は0.3%から0.1%へ0.2%ポイントの利下げ。国債の買入れを月間1.2兆円だったものを1.4兆円に増額。国債の買入対象に30年固定利付債と物価連動債、変動利付国債を加えた。国債買入で一番影響の大きいのは、「残存期間別の買入れ方式」であろう。

日銀の国債買入方式は、前日の引値に対して何ベーシスポイント(1ベーシスポイント=100分の1%)で競争入札するというもの。それが、日銀の買入れ国債に偏りをもたらしていた。どういうことかというと、ちょっと複雑なのだが、(債券市場参加者なら良くわかっているが、、、)

前日の引け値が2年債0.40%、5年債が0.80%、10年債が1.50%であったとする。

日銀が「国債を買い入れる」と発表した瞬間、金利低下圧力が働くとするならば、

市場の金利実勢が例えば2年債0.38%、5年債が0.76%、10年債が1.43%に低下したとする。

日銀の入札は前日比終わり値比で有利なものを買い入れるので、例えば-3ベーシスポイントで札を入れようとした場合、国債の利回り2年債0.37%、5年債が0.77%、10年債が1.47%での入札が、競争順位で等しくなる。

この時、2年債なら市場で売ると0.38%の金利で売らなければいけないが、日銀に札を持ち込めば0.37%とより低い利回りで買ってもらえてうれしい。一方、5年債を売ろうとすると、市場で売れば0.76%で売れるにもかかわらず、日銀に札を持ち込むと0.77%も利回りがついていないと売れないことになる。10年債は更に分が悪く、市場で売れば1.43%のところなのだが、日銀では1.47%までがんばらないと、入札からもれてしまう。

この様に、利回り曲線が平坦化するときには長期金利の利下がり具合いが大きいので、買入入札が「前日終値比」の形であると長期債がなかなか買い入れられず、日銀に持ち込まれる債券は償還までの残存年限が短いものばかりが持ち込まれることになってしまっていた。

日銀の国債買い入れは、一応「成長通貨の供給」と言う命題があるが、短期債ばかり買い入れられていて、「国債を買い入れて市場に現金を供給」しているにもかかわらず、すぐに国債の償還が来ると資金を吸収する形になってしまっていた。(細かい話をすると、日銀乗換えなど複雑だが激変緩和措置的な色々な手続きがある)。

残存期間別の買入れは、長期金利の低下を促すであろう。それもどれくらいかと言うのは、日銀の期間別の買入れ額の配分にも拠る。

それにしても、米国に一歩遅れながら、日銀はかなりありとあらゆる方策を採ったといえる。裏を返すと、非常事態によって円高などの状況が日銀を押し切ったと言うことが言える。

週末の日経ベリタスを見ると、白川総裁は「FRBは準備預金の付利を0.25%に設定した。『ゼロ金利政策導入』という新聞見出しが多かったが、そういう決定は行われていない!!」と語気を強めて言い放ったと言う。しかし、そこで抵抗したとしても、今が景気の底であるわけがないので、暫くしたら市場の「追加緩和要求」が出てくるだろう。FRBは事実上量的緩和に突入するとはいっても「量に意味は無い」という旨の発言をしているようだ。結局、日銀はビハインド・ザ・カーブではなく、カーブ余地がなくなってしまったので、ビハインド・ザ・エクスペクテイション(期待の後追い)というところであろうか。

世界中で非伝統的金融政策(金利の上げ下げ以外の金融政策)へと突っ込んでいる現状、次はどんな手が出てくるだろうか。ロジックを考えるのが難しいところ。円高が止まったら、日銀も金融政策の一段の緩和をやる気はなくなるんだろうな。

《ニュース備忘録》


【ロイター】
ブッシュ米大統領、約174億ドルの自動車メーカー向け融資を発表
2008年 12月 19日 23:32 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35553720081219


【ロイター】
09年度一般会計は過去最大の88.5兆円=中川財務・金融相
2008年 12月 19日 22:37 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35553120081219


【ロイター】
ポンドの水準は政策の対象でない=英首相
2008年 12月 19日 22:20 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35552620081219


【ロイター】
日銀利下げでも株と外為の反応限定的、マネーは国債シフトへ
2008年 12月 19日 17:59 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35547120081219


【ロイター】
PIMCO、米GMACの債務スワップ提示を拒否─関係筋=WSJ
2008年 12月 19日 17:27 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35546320081219
仮にPIMCOが債務スワップに応じない場合、GMACは銀行持ち株会社として必要な資本が確保できない


【ロイター】
情報BOX:日銀が発表した政策決定内容一覧(12月19日)
2008年 12月 19日 15:48 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35544520081219

[東京 19日 ロイター] 日銀は金融政策決定会合で、政策金利である無担保コール翌日物金利の誘導目標を0.2%ポイント引き下げ、0.1%前後で推移するよう促すことを決めた。会合後に発表した一連の決定は以下の通り。 

 ・無担保コール翌日物レートの誘導目標を0.2%引き下げ、0.1%前後で推移するよう促す(直ちに実施)。
 ・補完貸付の基準貸付利率を0.2%引き下げ、0.3%とする(直ちに実施)。
 ・補完当座預金制度の適用利率を0.1%とする(直ちに実施)。
 ・長期国債買い入れを、年16.8兆円(月1.4兆円)ペースに増額(12月から実施)。従来は年14.4兆円(月1.2兆円)ペースだった。短期の資金供給オペの負担を軽減するための措置。
 ・買い入れ対象国債の追加、残存期間別買い入れの実施(実務的な検討を行い、できるだけ速やかに成案を得るよう執行部に指示)。買い入れ対象国債に30年債、変動利付国債、物価連動国債を追加。残存1年以下、1年超から10年以下、10年超区分を導入し、買い入れ国債の残存期間が極端に短期化あるいは長期化することを避ける。
 ・企業金融支援特別オペレーションを1月8日から実施。その基本要領などを決定。
 ・CP買い入れを含めた企業金融面での追加措置の導入・検討。時限的にCP買い入れ(買い切り方式)を実施する。企業金融に係るその他の金融商品についても対応を検討。個別企業の信用リスクを負担するという異例の対応へ。
 ・CP買現先オペ等の対象先に日本政策投資銀行を追加。

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