米国FRBは12月16日FOMCを開き、政策金利であるFF金利の誘導目標をそれまでの1.00%から0.00~0.25%のレンジに変更し、事実上のゼロ金利政策に突入した。事前の市場予想は0.50%の利下げが予想中心値であったことから比べると、かなり踏み込んだ内容であった。(日本時間17日時点)
Release Date: December 16, 2008
For immediate release
The Federal Open Market Committee decided today to establish a target range for the federal funds rate of 0 to 1/4 percent.
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20081216b.htm
この中で、FRBは長期国債買い入れの検討をしているとの文章も盛り込まれた。FRBは既にそのスキームの中にMBS買入れがあるため、上位クレジット商品の買入れについてスキーム的には問題にならないであろう。ポイントは、その買入れがどの程度の金額になるかと言うことだ。
リスク資産買入れスキームは、11月25日(日本時間だと26日)にTerm Asset-Backed Securities Loan Facility (TALF) としてABSをノンリコースで2000億ドルまで買い入れるということ(TARPから200億ドル拠出)や、GSEの負債を1000億ドルまで、MBSを5000億ドルまで買い入れると言うニュースをリリース済みだ。
FRBは何でも買取機構 (2008年11月26日)を参照。
個人的には、米国国債を買い入れても余り意味は無いと思う。長期金利上昇を抑制するためだと思うのだが、そもそも証券化商品の発行減の影響が大きいので、米国投資家の国債買い入れ余地は大きい。それに、短期金利を低位に保ちつつ、長期金利はある程度付利された長短金利スプレッドの下で、米国国内金融機関が短期調達、国債運用で利ざやを稼げるようにする格好が理想だと思う。この長短金利差による収益でミルク補給を受け、毀損した資本を少しずつ回復させてゆく必要があると思う。自国国債なら、リスクも低い。
この米国金融政策の発表を受けて、ドル円相場の為替は1ドル=87円台に突っ込んだ。この時、中川昭一財務・金融担当相が「悪い円高でなく、急激な変化ではない」、「日本の株も上がっているし、そんなに心配していない」、(為替介入については)「今のところ考えていない」などとボケたことを言ったがために、円高に拍車が掛かったそうだ。後日、為替介入の可能性について「手段(として)はある」と言い直すなどのブレがみられ、多分FRBの発表に対してどう受け答えしていいか官僚に振り付けされたんだろうなということが読み取れる。こんな現状を理解していない財務大臣では、介入したいとしてもFRBやECBを説得するのは無理だろうから、為替介入は出来ないのではないか。
為替のディーラーに話を聴くと、当局はレートチェックなどの牽制はしても、実弾介入はなかなか出来ないだろうと市場は瀬踏みしているという。11月にシティが2回目の公的資金注入と債務再編に追い込まれる直前、急激な円高が進んだときに「為替介入はクロス円(対ユーロ)でするんじゃないか?」と緊張感が漂っていたにもかかわらず、結局実弾介入は無く財務省からは各国当局との調整のうえでこぎつけた数行の円高牽制声明文の発表に止まった。今回も似たパターンになるかもしれない。
米国自動車産業の再編や、金融市場の問題が突然発生するリスクなど、ドル安円高圧力がある中で、日本が為替介入をしても、相場の方向を変えることが出来ないのであれば、介入は難しいというのが当局の心理なのかもしれない。介入の効果が得られず、相場に逆に押し流されてしまえば、日本国が為替の評価損を膨らませるだけ。少なくとも、円高ドル安材料の出尽くしが担保されない限り、なかなか実弾介入は出来ないのではないかと私は思う。
話は戻って、この強烈な米国の金融緩和が日本の金融政策に対しても緩和圧力を投げかけることになり、それは英国、ユーロ圏も同類だ。世界はいよいよ超々低金利時代へ突入することになったと言える。今回のFRBの決定はそのマイルストーンでしかない。
通貨膨張がリフレからインフレを招くというリスクは、何種類か後の市場のテーマだろう。今は、景気悲観論からの金利低下圧力が大きい。
《ニュース備忘録》
【ロイター】
米Mスタンレーの9─11月期、予想上回る赤字
2008年 12月 17日 22:52 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35500320081217
【ロイター】
金利がゼロに接近すれば量的緩和の検討が適切=英中銀金融政策委
2008年 12月 17日 22:20 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35500120081217
【ロイター】
焦点:改正金融機能強化法、低くなる公的資金注入のバー
2008年 12月 17日 19:08 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35498020081217
金融機関に公的資金を予防的に注入する改正金融機能強化法が17日に施行され、金融庁は国内の金融機関の破たんを未然に防ぐ手段を手に入れた。
【ロイター】
米銀行監督当局、シティグループに対する監視強化=報道
2008年 12月 17日 15:47 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35493520081217
【ロイター】
東京外為市場・正午=ドル89円挟み、ドル売り地合いのなか小動き
2008年 12月 17日 13:22 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35490220081217
【ロイター】
米連邦預金保険公社、預金保険料を引き上げ
2008年 12月 17日 09:24 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35481920081217
米連邦預金保険公社(FDIC)は16日、金融機関が支払う預金保険料を7ベーシスポイント(bp)引き上げると発表した。
【ロイター】
FRBが0─0.25%に利下げ、長期国債買い入れの可能性検討
2008年 12月 17日 08:50 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35480420081216
【ロイター】
米FOMC声明全文
2008年 12月 17日 06:21 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-35478020081216
[ワシントン 16日 ロイター] 米連邦準備理事会(FRB)が16日発表した、12月15─16日の米連邦公開市場委員会(FOMC)の声明全文は次の通り。
米連邦公開市場委員会(FOMC)は16日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準をゼロ─0.25%とした。
前回の会合以来、労働市場の状況が悪化し、入手可能な指標は個人消費・設備投資・鉱工業生産が低下した(declined)ことを示している。金融市場は依然としてかなり緊張しており(remain quite strained)、クレジット状況はひっ迫(tight)している。全体的に経済活動の見通しは一段と弱まった(weakened further)。
一方、インフレ圧力ははっきりと軽減した(diminished appreciably)。エネルギーなど商品価格の下落や一段と弱い経済活動の見通しを踏まえ、FOMCは今後数四半期でインフレが一段と緩和する(moderate further)と予想している。
FRBは、持続可能な経済成長の再開を促し、物価安定を維持するために、利用可能なあらゆる手段を用いる(employ all available tools)。とりわけFOMCは、弱い経済状況により当面、異例に低水準のフェデラルファンド(FF)金利が正当化される可能性が高いと予想する(warrant exceptionally low levels of the federal funds rate for some time)。
FOMCの政策の今後の焦点は、公開市場操作をはじめとするFRBのバランスシートの規模を高水準に保つ手段を通じ、金融市場の機能を支え景気を刺激することに置かれる。すでに発表したとおり、FRBはモーゲージ市場と住宅市場を支援するため、今後数四半期の間に機関債やモーゲージ担保証券(MBS)大量に買い入れる(purchase large quantities)。また、状況に応じて(as conditions warrant)、機関債やMBSの購入を拡大する用意がある。FOMCはさらに、長期国債買い入れの潜在的メリットを評価している(evaluating the potential benefits)。家計や中小企業向け与信を促すためにFRBは2009年初めにターム物資産担保証券ローンファシリティー(TALF)も実施する。FRBはクレジット市場や経済活動を一段と支援するため、バランスシートの活用方法を引き続き検討する(consider ways of using its balance sheet)。
今回の声明に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、カミング(NY連銀第一副総裁)、デューク、フィッシャー、コーン、クロズナー、ピアナルト、プロッサー、スターン、ウォーシュの各委員。
関連措置として理事会は全会一致で、公定歩合を75ベーシスポイント(bp)引き下げ0.5%とすることを承認した。この措置をとるにあたり、ニューヨーク、クリーブランド、リッチモンド、アトランタ、ミネアポリス、サンフランシスコの各地区連銀理事会の要請を承認した。理事会はまた、所要・超過準備預金の金利を0.25%に設定した。
<10月29日>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は29日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準を50ベーシスポイント(bp)引き下げ、1.00%とした。
経済活動のペースは、主に個人消費の落ち込みにより、著しく減速(slowed markedly)したもよう。過去数カ月間に民間設備投資と鉱工業生産は弱まり(weakened)、多くの国での経済活動の減速は米輸出の見通しを抑制している(damping the prospects for U.S. exports)。さらに、金融市場混乱の深刻化(intensification)は、家計や企業の借り入れ能力を一段と低下させることもあり、支出を一段と抑制する(exert additional restraint on spending)公算が大きい。
エネルギーなど商品価格の低下や一段と弱い経済活動の見通しを踏まえ、FOMCは今後数四半期でインフレが物価安定と一致する水準に緩和すると予想している。
本日の利下げ、中央銀行による協調利下げ、異例の流動性対策、金融システム強化に向けた当局の措置を含む最近の政策行動は、時間とともにクレジット状況を改善し、緩やかな経済成長への回帰を促進する一助となるだろう。それでも成長への下振れリスクは依然存在する(downside risks to growth remain)。FOMCは経済・金融動向を慎重に監視し、持続可能な経済成長と物価安定を促進するため、必要に応じて行動する。
今回の声明に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ガイトナー副委員長、デューク、フィッシャー、コーン、クロズナー、ピアナルト、プロッサー、スターン、ウォーシュの各委員。
関連措置として理事会は全会一致で、公定歩合を50bp引き下げ1.25%とすることを承認した。この措置をとるにあたり、ボストン、ニューヨーク、クリーブランド、サンフランシスコの各地区連銀理事会の要請を承認した。
<9月16日>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は16日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準を2.00%に据え置くことを決定した。
金融市場の緊張は大幅に高まり(increased significantly)、労働市場は一段と弱まった(weakened further)。経済成長は家計支出の軟化を一部反映し、最近減速したもよう(slowed recently)。信用状況の縮小や継続中の住宅市場の収縮および輸出の伸びの幾分の鈍化(some slowing in export growth)は、今後数四半期にわたり経済成長を圧迫する可能性が高い。金融政策の大幅な緩和は、市場の流動性を促すための継続中の措置とあわせ、時間とともに穏やかな経済成長を促進するだろう。
インフレは、エネルギーや他の一部商品価格のこれまでの上昇で拍車がかかり高くなっている(has been high)。FOMCは年内から来年にインフレが緩和する(to moderate)と予想しているが、インフレ見通しは依然として非常に不透明(highly uncertain)だ。
成長への下振れリスクとインフレの上振れリスクはいずれもFOMCにとって重大な懸念(significant concern)だ。FOMCは経済・金融動向を慎重に監視し(monitor carefully)、持続可能な経済成長や物価安定を促進するため、必要に応じて行動する。
今回の声明に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、カミング(NY連銀第一副総裁)、デューク、フィッシャー、コーン、クロズナー、ピアナルト、プロッサー、スターン、ウォーシュの各委員。カミング氏はガイトナー副委員長に代わって投票した。
<8月5日>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は5日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準を2.00%に据え置くことを決定した。
経済活動は、個人消費と輸出の伸びを一部反映し、第2・四半期に拡大した。ただ、労働市場は一段と軟化し、金融市場は引き続きかなりの緊張下にある(under considerable stress)。信用状況の縮小や継続中の住宅市場の収縮およびエネルギー価格の高止まり(elevated)は、今後数四半期にわたり経済成長を圧迫する可能性が高い(likely to weigh on economic growth over the next few quarters)。金融政策の大幅な緩和は、市場の流動性を促すための継続中の措置とあわせ、時間とともに緩やかな経済成長を促進するだろう。
インフレは、エネルギーや他の一部商品価格のこれまでの上昇で拍車がかかり高くなっており(has been high)、インフレ期待の一部指標が高止まりしている。FOMCは年内から来年にインフレが緩和する(to moderate)と予想しているが、インフレ見通しは依然として非常に不透明(highly uncertain)だ。
成長への下振れリスクは引き続き存在するが、インフレの上振れリスクもFOMCにとって重大な懸念(significant concern)だ。
FOMCは経済・金融動向を引き続き監視し、持続可能な経済成長や物価安定を促進するため、必要に応じて行動する。
今回の声明に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ガイトナー副委員長、コーン、デューク、クロズナー、ミシュキン、ピアナルト、プロッサー、スターン、ウォーシュの各委員。フィッシャー委員は、今回の会合ではFF金利誘導目標の引き上げが好ましいとして、反対票を投じた。
<6月24―25日>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は25日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準を2.00%に据え置くことを決定した。
最近の情報は、全般的な経済活動が家計支出の幾分の底堅さを一部反映し、引き続き拡大していることを示している。ただ、労働市場は一段と軟化し、金融市場は引き続きかなりの緊張下にある(under considerable stress)。信用状況の縮小や継続中の住宅市場の収縮およびエネルギー価格の上昇は、今後数四半期にわたり経済成長を圧迫する可能性が高い(likely to weigh on economic growth over the next few quarters)。
FOMCは年内から来年にインフレが緩和する(to moderate)と予想している。ただ、エネルギーや他の一部商品価格が引き続き上昇していることや、インフレ期待の一部指標が高止まりしていることを踏まえると、インフレ見通しをめぐる不確実性(uncertainty)は依然として高い。
これまでの大幅な金融緩和政策は、市場の流動性を促すための継続中の措置とあわせ、時間とともに緩やかな成長を促進するだろう。成長への下振れリスクは引き続き存在するが、幾分低下したよう(appear to have diminished somewhat)で、インフレとインフレ期待の上振れリスクは高まった(increased)。FOMCは経済・金融動向を引き続き監視し、持続可能な経済成長や物価安定を促進するため、必要に応じて行動する。
今回の声明に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ガイトナー副委員長、コーン、クロズナー、ミシュキン、ピアナルト、プロッサー、スターン、ウォーシュの各委員。フィッシャー委員は、今回の会合ではFF金利誘導目標の引き上げが好ましいとして、反対票を投じた。
<4月29―30日>
米連邦公開市場委員会(FOMC)は30日、フェデラルファンド(FF)金利誘導目標水準を25ベーシスポイント(bp)引き下げ、2.00%とした。
最近の情報は経済活動が依然として弱いことを示している。家計・企業支出は鈍く、労働市場は一段と軟化した。金融市場は引き続きかなりの緊張下にあり(under considerable stress)、信用状況の縮小や住宅市場の一段の収縮は今後数四半期にわたり経済成長を圧迫する可能性が高い(likely to weigh on economic growth over the next few quarters)。
コアインフレ指標は若干改善したが(improved somewhat)、エネルギーや他の商品価格は上昇し、インフレ期待の一部指標は過去数カ月に上昇した。エネルギーや他の商品価格が横ばいとなる見込み(projected levelling out)やリソース利用への圧力の緩和を反映し、FOMCは今後数四半期にわたりインフレが緩和する(to moderate)と予想している。ただインフレ見通しをめぐる不確実性(uncertainty)は依然として高い。インフレ動向を引き続き注意深く監視する必要がある。
これまでの大幅な金融緩和政策は、市場の流動性を促すための継続中の措置とあわせ、時間とともに緩やかな成長を促進し、経済活動に対するリスクを軽減する一助となるだろう。FOMCは経済・金融動向を引き続き監視し、持続可能な経済成長や物価安定を促進するため、必要に応じて行動する。
今回の声明に賛成票を投じたのは、バーナンキ委員長、ガイトナー副委員長、コーン、クロズナー、ミシュキン、ピアナルト、スターン、ウォーシュの各委員。フィッシャー、プロッサー各委員は、今回の会合ではFF金利誘導目標の据え置きが好ましいとして、反対票を投じた。
関連措置として理事会は全会一致で、公定歩合を25bp引き下げ2.25%とすることを承認した。この措置をとるにあたり、ニューヨーク、クリーブランド、アトランタ、サンフランシスコの各地区連銀理事会の要請を承認した。
0 件のコメント:
コメントを投稿