2010年7月11日日曜日

(7月8日-3)米半期為替報告書

米国が半期の為替報告書を発表した。当初、4月15日に発表の予定であったが、中国がなかなか人民元の柔軟化を発表せず、米国では議会からの対中制裁圧力が増加してくる中で、4月3日にこの半期為替報告書の発表を延期するとのニュースリリースがあった。そこから約3ヶ月を経て漸く半期の為替報告書の発表となった。結論としては、為替操作国と認定された国は無かった。ただし、人民元は過小評価されているとの見方を明確にしており、足もとで始まった人民元の上昇ペースがどの程度進むかを見極めると言う判断を表明している。

その参考値として、2005年7月から2008年7月までの3年間に、21.2%の対米ドルでの上昇があったと表明している。2005年7月の人民元の柔軟化開始時は、当初2.1%の切り上げを行った後、順次緩やかな上昇となっているため、3年間で19.1%(=21.2-2.1)、年率にすれば6.3%の人民元の上昇がラインになると考えているのだろうか。

【米財務省】
July 8, 2010
TG-772
Treasury Releases Semi-Annual Report to Congress on International Economic and Exchange Rate Policies
http://www.ustreas.gov/press/releases/tg772.htm

Treasury has concluded that no major trading partner of the United States met the standards identified in Section 3004 of the Act during the period covered in this Report.(財務省は主要貿易取引相手国の中で、今回のレポートが対象としている期間内に法令のセクション3004に該当する(為替操作)国は無かったと結論付ける)

On June 19, 2010, China announced that it was ending its peg to the dollar and returning to an exchange rate regime that would be more flexible and more market based. China’s policy shift is a significant development, but what matters is how far and how fast the renminbi appreciates.(2010年6月19日に中国は対ドルペッグの終了を発表し、より柔軟でより市場に即した為替レートの管理体制に回帰した。中国の政策は大きな発展に移行したが、問題はどれだけの期間、どれだけの速さで人民元が上昇するかである。)

Between July 2005 and July 2008, the last period where the Chinese authorities allowed the exchange rate to move in response to market forces, the Chinese currency appreciated 21.2 percent against the dollar. As was the case then, it will take time before we can assess whether China's recent exchange rate change will produce a sufficiently market-determined exchange rate to correct the undervaluation. China's continued foreign reserve accumulation, the limited appreciation of China's real effective exchange rate relative to rapid productivity growth in the traded goods sector, and the persistence of current account surpluses even during a period when China's trading partners were in deep recession together suggest that the renminbi remains undervalued.(2005年の7月から2008年の7月にかけて、中国当局は為替レートを市場の圧力に対応させて変更し、ドルに対して人民元は21.2%上昇した。その時のケースに基づき、我々は中国の最近の為替レートの変更が(人民元の)過小評価を修正し、十分市場決定的な為替レートが提供されているかどうかを判断するには、時間がかかるであろう。中国は引き続き外貨準備を積み上げており、財輸出部門の生産性の急速な成長と比べて中国の実質実効為替レートの上昇が限定的であることや、中国の取引相手国が深い景気後退にある中で、引き続き経常黒字が根強いことなどを踏まえると、人民元はまだ過小評価されている。)

一方で、米国議会はこの程度の人民元の上昇は足りないと吼える対中強硬派議員が多く、中間選挙に向けて中国バッシングが続いている。次回の半期為替報告書は10月に発表される予定で、丁度米国中間選挙の前になる。この間の人民元の上昇ペースが限定的であることが浮き彫りになれば、選挙対策も兼ねて対中圧力が増す可能性が高い。中国は人民元相場を政治問題に持ち込むことを極端に倦厭しているが、これまで多額の貿易黒字をため、国力、軍備力を増している時点で政治問題化は避けられないものとなっている。

【読売新聞】
米、中国の為替操作 10月再判断
2010年7月10日
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20100710-OYT8T00294.htm
オバマ大統領は6月下旬の主要20か国・地域(G20)サミット(首脳会議)後の記者会見で、中国の切り上げ姿勢は、「3か月ではっきり分かる」として、期限を明示した上で中国側に対応を迫っている。10月の次回の報告書発表までの人民元相場の動きを見定めた上で、切り上げペースが不十分なら、為替操作国に認定することも辞さない構えとみられる。

【ロイター】
中国人民元問題、米議会の厳しい対応が必要=グラム上院議員
2010年 07月 10日 04:22 JST
http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnJT874047520100709

0 件のコメント: