2009年2月19日木曜日

日米金融政策と景気

米国は必死に7870億ドルの景気対策(17日にオバマ大統領署名)の実施やGM、クライスラー2社の220億ドル近くの追加支援要請(17日に同社再建策提出)、900万世帯の住宅ローン対策(18日発表)をしているにもかかわらず、日本では中川財務金融相が酔っ払った上でG7の会見に臨んだことが非難を浴びている。現自民党執行部は相当危機感が無い。起死回生で麻生首相が外交を得点に結び付けようとロシアのサハリンを訪問したが、苦しいときに手を差し伸べてくるのはろくでもない場合が多い。このままでは日本の外交にとってマイナスが多いので、早く選挙をやって決着を付けたほうがいいと思う。点数稼ぎが逆に害をもたらす。ここまで求心力がないのであるから、さっさとあきらめたほうがいい。小泉元首相が同時期にロシアを訪問して麻生首相を非難するというのは異例の事態である。

さて、一方日米の金融政策を見ると、FRBは長期的な経済の見通しを発表した。

Release Date: February 18, 2009
For release at 2:00 p.m. EST
http://www.federalreserve.gov/newsevents/press/monetary/20090218a.htm

FRBの金融政策目標は所謂デュアルマンデートとして、雇用の最大化と物価の安定が挙げられているが、この目標を達成するのに適切な経済成長率や失業率、物価上昇率の姿を示したのが今回の1月16日、27~28日のFOMC議事要旨だ。

この見通しの指し示すところは、単に見方であって、目標ではない。
The longer-run projections of inflation may be interpreted as the rates that each Federal Reserve Board member and Federal Reserve Bank president sees as most consistent with achieving the dual objectives of maximum employment and price stability.

英欧のような物価目標、いわゆるこの物価水準を上回ったら即金融引き締めと言うことではない。
実際にこの数値は、
2.5 to 2.7 percent growth in real gross domestic output (実質GDP)
4.8 to 5.0 percent unemployment (失業率)
1.7 to 2.0 percent inflation, as measured by the price index for personal consumption expenditures (PCE). (個人消費支出インフレ率)

となっている。長期の期待に働きかけるアンカーとなるだろうとバーナンキ議長は記者会見で述べており、長期金利への影響を意識した時間軸効果を考えているのかもしれない。

一方、日銀も本日の金融政策決定会合で企業金融支援策の拡充を図る決定を行った。

2009年2月19日
日本銀行
当面の金融政策運営について
http://www.boj.or.jp/type/release/adhoc09/k090219.pdf

(1)企業金融支援策の拡充
① 企業金融支援特別オペレーションを強化し、期間3か月のやや長めの資金を低利・安定的に供給する。
② 社債買入れの細目を定め、3月より買入れを開始する。
③ CP買入れ、及び民間企業債務に関する適格担保要件の緩和措置の実施期限を延長する。

政策金利は0.1%を維持する一方、年度越えの3ヶ月間の金利を操作しようという意図だ。オーバーナイトから徐々に操作範囲を不確実性の高いものへと移しつつあると言える。

18日付の日経新聞朝刊で、トヨタ自動車がこれまでの急激な在庫調整から一転して生産水準を引き上げるとの記事が掲載された。今景気後退局面で一番大きな現象は在庫調整であり、実際この生産引き上げが本格化するのであれば、日本経済にとって一つの転換局面になる可能性がある。昔、堺屋太一経済企画庁長官がアジア通貨危機、日本の金融危機後の1998年12月の月例経済報告で景気に「変化の胎動がみられる」と発表し、景気の節目を示唆したことがあった。現下の局面でも変化の胎動を見つけることが重要な局面と言える。

ただし、本日発表された09年2月の月例経済報告では基調判断は下方修正されていた。
http://www5.cao.go.jp/keizai3/2009/0219getsurei/main.pdf

[1月]:景気は、急速に悪化している。
[2月]:景気は、急速な悪化が続いており、厳しい状況にある。


《ニュース備忘録》

【時事通信】
与党の危機感、官邸に伝わらず=入院シナリオ幻に-中川氏辞任劇
2009/02/19-21:14
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol_30&k=2009021900948

【ロイター】
米GM債務再編交渉続く、過剰債務が最大のリスク
2009年 02月 19日 16:26 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36573620090219
アナリストの間では、GMの破たんリスクは依然大きいとの見方が多い。
 ムーディーズ・インベスターズ・サービスは、GMとクライスラーの再建計画提出後、両社が破たんする確率は、昨年12月時点の70%から変わっていないと指摘した。

【ロイター】
米政府、最大900万世帯の差し押さえ回避に向け住宅保有者支援
2009年 02月 18日 23:34 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36556620090218

【ロイター】
英中銀総裁、量的緩和の承認求め財務相と会談
2009年 02月 18日 20:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36554820090218

【ロイター】
訂正:GM・クライスラーの経営再建計画、約2兆円の政府追加支援を要請
2009年 02月 18日 13:22 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36541620090218
GMは当初見通しの倍以上となる最大300億ドルの政府支援を要請し、新たな政府融資がなければ3月にも手元資金が枯渇するとの見通しを示した。一方クライスラーは、今後3年間、国内市場の低迷が続くとして50億ドルの追加資金援助を求めた。

【ロイター】
FRBのTALF、GMAC支援にならず=GM
2009年 02月 18日 11:33 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36540720090218

【ロイター】
麻生首相に辞表を提出した=中川財務・金融相
2009年 02月 17日 18:35 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36526520090217
共同通信は、後任に与謝野馨経済財政金融担当相が就任し、3つの担当を兼務すると報道している。

【ロイター】
波紋広がる中川財務相のG7会見、首相は続投指示
2009年 02月 16日 21:46 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36504820090216
中川昭一財務相兼金融担当相が7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)終了後の会見で、記者とのやりとりがちぐはぐだった問題が16日、各方面に波紋を広げた。

【ロイター】
10─12月期実質GDPは年率‐12.7%、35年ぶりの大幅マイナス
2009年 02月 16日 11:14 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36490920090216

【ロイター】
米GM、破産法11条の適用申請を検討=WSJ紙
2009年 02月 15日 08:19 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-36480320090214

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