2009年2月1日日曜日

日本の景気悪化指標

週末に出てきた日本の経済指標は悉く悪い結果であった。鉱工業生産指数を見ると、11月の前月比-8.5%に続き、12月は-9.6%と悪化が急激だ。この結果四半期ベースで見ると10-12月期は前期比-11.9%という急激な悪化である。

更に、細かい数値計算になるが、どれくらいの悪影響が起こりそうかということを見るために、少し四則演算を行う。製造工業予測指数を見ると、1月が前月比-9.7%、2月が前月比-4.7%となっている。月間当りのマイナス幅は減速を見ているが、この所の悪化は毎回予測の下方修正となって実現しているので当てにならない。しかし、この伸び率で仮に今後生産が減少するとして、3月を楽観的に前月比±0.0%と見込むとしよう。この時、1-3月期の生産はいわゆるマイナスの下駄を履いていることから、前期比-20.3%という恐ろしい数字になる。もちろん、これも下方修正含みだ。

GDPに占める製造業の比率は、2007年実質ベースで23.2%のウェイトがある。GDPは付加価値ベースであるため、必ずしも生産動向とGDPを同じ土俵で考えるのは適切でないが、ここで試算として上記鉱工業生産の四半期の落ち込みを23.2%という製造業のウェイトで影響度を見てみると、10-12月期が前期比-2.8%1-3月期が-4.7%のGDPの押し下げ寄与となる!!。しかも、それは年率化前の数字でだ。

これは凄まじいほどの生産調整としか言いようが無い。在庫率の急上昇も目が当てられない状況で、在庫調整のための削減も続くであろう。そうなると、「年央底打ち」という楽観論に組したとしても、そこからの生産拡大は非常に困難にならざるを得ない。加えて円高だ。



グラフで生産の水準を見てみると、2005年を100と基準化して、10月が102.3、11月が93.6、12月が84.6と、強烈な生産低下となっている。予測指数で伸ばした2月の水準は73.3だ。これを輸送機械で見ると、10月の110.0から2月は52.4と半減以下に落ちる。

生産の73と言う数字は1984年年初の水準、輸送機械業の52.4と言う水準は1978年の統計開始以来最低の水準だ。それほどまでに酷い状況だ。マスコミも製造業の派遣切りなどということで突き上げるようなことよりも、もっと見る視点を変える必要がある。どれだけこの製造業の悪化が凄まじいものなのか。筆舌に尽くし難い。日本で無ければ、暴動や紛争に陥るほどの水準である。


失業率は11月の3.9%から12月は4.4%に一気に急上昇した。失業率の計算は、失業者数÷労働力人口で、例えば解雇されて無職になり、雇用を探すことをあきらめて家庭や学校に入る(求職しない)場合は非労働力人口にカウントされるので、こういう潜在失業者数は失業率に反映されない。逆に、家計の大黒柱が失職し、新たにパートナーが職を探し始めると非労働力人口から労働力人口にカウントしなおされて、失業率を押し上げる。なぜ、こういう面倒なことになっているかというと、多分社会厚生上の指標として、少なくとも職が無く求職している人(失業者)を減らすことを政策目標にしているということだからであろう。求職していない困っていない人をわざわざ引っ張り出してきて職に付けることが良いとは言えない。



このような技術的な部分を捨象してあえて言うなら、日本の労働力人口は6600万人強であるため、失業者が10万人増えるたびに、失業率は0.16%上昇する。1953年以来過去最悪の失業率は、2002年~03年にかけて何度か記録した5.5%である。あと70万人失業者が増えれば、この記録を抜く。

失業率は景気の遅行指数で、上記のような生産調整の状況を見ると、この程度(過去最悪の失業率)の日本の景気の悪化は、ただの通過点でしかないのかもしれない。

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