2009年2月15日日曜日

マネープリンティング

2月13~14日の日程で開かれたローマG7が閉幕。ステートメントについては特に何か新しいものが出てきたわけではなかった。

7か国財務大臣・中央銀行総裁会議声明のポイント[2009 年2 月14 日 於:イタリア・ローマ]
http://www.mof.go.jp/jouhou/kokkin/g7_210214.pdf

しかし、中川財務相のろれつの回らない記者会見が報道されており、また政権批判の火種になる可能性が高い。酒を飲んだのか、眠かったからなのか。

ウォールストリートジャーナルでは、GMが全米自動車労組(UAW)との交渉が決裂したことによって、チャプターイレブンによる破産法申請も再建計画オプションにという記事が掲載されている。2月17日の政府追加融資のための再建計画提出デッドラインを前に、日経新聞が米国景気対策法案の大統領署名を2月17日のデンバー遊説中に行うと報じている。一日も早く成立させなければならないものを、なぜ引き伸ばすのか。日程をぶつけてくる辺り、政治的なダメージコントロールを斟酌している様子が透けて見える。吉と出るか、凶と出るか。

日本では与党内に政府紙幣発行議論が高まっている。政府紙幣の代表例としては、明治政府が戊辰戦争の戦費調達のために発行した「太政官札」が例にある。中央銀行ができる前、江戸時代の藩札の流れを組んだ紙幣であった。今は当時と状況が俄然違う。

一般的に、マネープリンティングと言われる紙幣乱発には弊害が多い。通貨価値が損なわれること。通貨価値とは、それまでその通貨が流通する一国が時間をかけて蓄積してきた信頼という富を一気に崩壊させることとなる。マネープリンティングによって、「シニョリッジ(seigniorage:通貨発行益)」を政府が得られるという説明がなされることがある。1万円札の印刷代が100円であれば、100円を使って1万円札を印刷し、9900円の利益が出るという計算だ。ただし、政府紙幣については、たとえ政府紙幣に「10000円」と刻印されていたとしても、それを皆が10000円と見るかどうかは別問題である。

世の中に出回っている商品券の様に、金券ショップに行けば額面以下に割り引かれて売られている可能性がある。商店や自動販売機のシステム対応にもコストが掛かる。デノミと一緒で、機会費用が大きい。仮に金券ショップで政府紙幣1万円分が9500円で売られていたら、5%の下位信用が与えられていることになる。また、この様な無謀な政策が実施されれば格付けは下がるだろう。ただただ、混乱を引き起こすだけだ。

しかし、この様な政府紙幣の議論が円安を誘発するための口先介入の一環であるとするならば、かなりの高等戦術だといえる。日本は対外債務が非常に少ない国であり、通貨安誘導が国のデフォルトを引き起こす可能性は、現時点で極めて小さい。

更に否定語となるが、だけれどもこの様な政府紙幣議論(無利子相続国債も同様)については、所謂「歳入」の話であって、「歳出」を見直す議論が殆ど行われていない所は問題が大きい。非効率な公共事業への投資や、無駄な支出がこれによって続くのであれば、危機に乗じて官が焼け太りするだけである。困っているときほど、人はだまされやすいものだ。景気対策が必要だといって、学校の耐震化や道路整備などに巨額の資金が投じられるとするならば、無意味にドブに金を捨てるようなものだ。公共事業は建設業の事業であって、永続的な雇用維持を図るのであれば一時的な資金の支出ではなく、中期的に安定した資金が投じられるように計画性を持った歳出にすべきである。今困っているのは製造業だ。

歳出への検討にメスを入れることが無い限り、歳入だけの議論を進めると言う論理展開には大いに反対したい。

《ニュース備忘録》

【WSJ】
FEBRUARY 14, 2009
GM to Offer Two Choices: Bankruptcy or More Aid
http://online.wsj.com/article/SB123458663412987489.html?mod=testMod

【朝日新聞】
眠気こらえて? 中川財務相、かみ合わない記者会見
2009年2月15日20時6分
http://www.asahi.com/politics/update/0215/TKY200902150112.html

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