2011年8月16日火曜日

(5月10日-2)米中戦略経済対話

第3回米中戦略・経済対話が閉幕した。中国の貿易黒字拡大、米国の貿易赤字の拡大に伴い、両国間の摩擦は人権や経済等多岐にわたるが、両国間の溝は近接しようとする交渉とは裏腹に、溝が徐々に深まりつつあるような気がする。この米中戦略人権対話では人民元の弾力化が大きな題目のひとつとなった。おりしも、翌日中国で発表された4月の消費者物価が前年比+5.3%の上昇となり、今年の中国政府目標の+4%を大きく上回る水準が続いている。中国にとっては利上げは国内の資金フローだけでなく海外からの資金流入にも大きな影響を与えるため、決断が難しいところであるが、放置すればするほどより難しい袋小路にはまってしまう。
【U.S. Treasury】
U.S.-China Strategic and Economic Dialogue
Last Updated :5/10/2011 4:54 PM
http://www.treasury.gov/press-center/news/Pages/us-china-strategic-and-economic-dialogue-2011.aspx
【U.S. Treasury】
U.S. - China Strategic and Economic Dialogue
http://www.treasury.gov/initiatives/Pages/china.aspx

このファクトシートには、米国から表明された今回の内容が掲載されているが、まずトップバッターは米国企業や労働者の機会を増やすことと述べられており、知的財産権の保護がうたわれている。そして、最下段に人民元の柔軟化が記されており、この順位付けからしても中国に配慮している姿勢が見て取れる。
【U.S. Treasury】
Third Meeting of the U.S.-China Strategic & Economic Dialogue Joint U.S.-China Economic Track Fact Sheet
5/10/2011
http://www.treasury.gov/press-center/press-releases/Pages/tg1170.aspx

今回の米中戦略・経済対話は、ただの通過点でしかないだろう。特に大きなことが決定されたとは言えないようだ。一方で、中国からも米国財政赤字の拡大、量的緩和第2弾(QE2)によるドル安への批判も、いつもどおり行われていた。

【ロイター】
情報BOX:米中戦略・経済対話の主な合意事項
2011年 05月 11日 11:08 JST
http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPJAPAN-21025220110511
[10日 ロイター] 米中戦略・経済対話は10日、中国市場の開放推進や、安全保障問題での対話強化などで合意して、2日間の日程を終了した。米中戦略・経済対話で合意した主な内容は、以下のとおり。 
戦略:

<アジア太平洋地域の安全保障に関する対話>
アジア太平洋地域の安全保障に関する米中対話の枠組を作り、年内に会合を開く。同地域内の平和と安定、繁栄の維持について話し合う。 

<核問題>
イランや北朝鮮などがもたらす核拡散問題をめぐり引き続き協力する。特定の核問題については米中とも従来の立場を変える姿勢示さず。 

<人権>
米政府は、米中戦略・経済対話に先立ち、人権問題について中国に圧力をかけるとしていたが、中国は対話後も従来の立場を変えていない。

米中は来年、人権についてあらためて対話を行うことでは合意。また、今年6月に両国の法律専門家による会合を開くことでも合意した。 
経済:

<自主開発政策>
中国は、中国国内で開発された製品や技術を優遇する「自主開発政策」について、政府調達を対象外とするとの方針をあらためて示した。 

<知的財産権保護>
中国は知的財産権保護の強化を表明。政府が使用するソフトウエアが合法的なものであることを確認するため検査体制の厳格化も約束した。  

<政策の透明性>
中国は年内に、すべての貿易・経済関連規制案について国務院法制弁公室のウェブサイトで公開し、少なくとも30日間の公示期間を設けることを義務付ける方針を発表すると約束した。

<金融商品> 中国は、中国に進出した外資系銀行に対し、投資信託の販売、投信カストディ業務免許の取得、QFII(適格外国機関投資家制度)における先物取引の証拠金預託銀行としての業務を認めることを約束した。 

<通貨> 米政府は人民元が昨年から5%上昇していることに言及したものの、元は依然として大幅に過小評価されていると指摘。中国に対し、より速いペースでの元相場の調整を認めるよう重ねて求めた。これに対し中国は、必要とされる相場調整のペースと範囲については米国と意見が異なると表明。国内状況が許す場合にのみ人民元問題に取り組む方針を示した。

<米国のハイテク輸出規制> 中国は、米国が冷戦期に導入した、軍事利用可能なハイテク製品の輸出規制を緩和するよう求めた。米国は、新たな輸出規制制度の下で中国も公平に扱われるべきとする同国の長年の要求を十分に考慮することを約束した。米国はまた、米中ハイテク作業部会を通じて中国政府と協力する方針も示した。 

<投資> 米中両国は開かれた公正な投資環境を促し、双方の投資家にとっての透明性と予測可能性を向上させることで一致。また、金融サービス投資や国境を越えた証券投資における開かれた環境を支援することでも合意した。米国は、中国の銀行や証券会社、資産運用会社が米国で投資申請する際に、他の外国金融機関と同じプルーデンシャル基準および規制基準を適用することを約束した。 

<米国の金融改革> 米政府は、システミックリスクを減らし、プルーデンシャル基準を引き上げ、デリバティブ(金融派生商品)に対する全体的な規制枠組みを設定し、「大きすぎてつぶせない」金融機関の問題の収束に向け、包括的な金融改革を継続していく方針を表明した。

米中戦略経済対話で主役を務める右からガイトナー財務長官、クリントン国務長官、王岐山副首相、戴秉国国務委員(外交担当)

ガイトナー財務長官と握手する王岐山副首相。いちばん右の長身は周小川人民銀行総裁

クリントン国務長官とガイトナー財務長官

記念写真の中心は王岐山副首相とガイトナー財務長官。周小川人民銀行総裁は左から2番目なので、中国では中央銀行総裁の地位は、それほど高くないのだろう。